久しぶりに「クズ肉(笑)」を買ってきた。それで作る激ウマ「和牛シチュー」

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私の大のお気に入りはビレッジグローサーで売っている「クズ肉」なのは何度もこのブログに書いています。

クズ肉なんていい方は良くないとは思うけれど、でもまさにクズ肉であって、メインの食材にはなりえない肉。これは「切り落とし」でもなくて肉屋によっては捨ててしまうこともあるんじゃないですかね。いわゆる「スジ肉」の類。

これがメチャ安くて「スープ用の肉」として売られているのはビレッジグローサーだけでなくて他のスーパーでも同じ。1キロ20リンギ以下なのが普通。

これって本当に便利で、ゴールドコーストにはこういう肉は売っていませんでした。ってことはスーパーでは廃棄処分していたんですかね。あの部分は牛肉の枝肉、大きな塊を整形するときには必ず出てきますから。

これってスープを取るには最適で、ただの半端な肉じゃなくて「スジ」がついているのがポイントだと思うんです。これこそが「コラーゲン」の宝庫ですから。ゴールドコーストでは「マローボーン(大腿骨)」や「首の骨」、そして安い肉の塊をスープ用に買っていましたが、マレーシアでは逆にそれを見つけるほうが難しくて、私はクズ肉専門になりました。そしてこの方が安い。(笑)

1.2キロぐらい買ってきました。3パック。

見るからにクズ肉ですよね。(笑)

これをまず熱湯に入れて、再沸騰してから5-10分茹でます。簡単に茹でこぼしするだけでも良いとは思いますが、我が家にはこういうことに五月蝿いヨメさんがいますので、従うことにしています。

あるいは洋風であるならば「しっかり焼き目をつける」のも良いと思いますが、やっぱり日本人的発想が捨てきれないのか、下茹でが良いような気がします。

これだけあった肉も茹でるとこんな量になる。

大きめのぶつ切りにして「スープ専用」でも良いのですが、我々日本人って「スジ肉慣れ」しているんですかね。関西では当たり前のスジ肉ですが、私は東京でこういう肉の存在さえ知りませんでした。今では関東人でもスジ肉って美味しいと思う時代になったんでしょうが。焼肉の骨付きカルビの骨についた分厚い「スジや腱」をかじるのが好きだったり。(笑)

でも今回はこの肉はスープ用にするつもりでした。あくまで脇役に徹してもらい、これで作った出汁をベースに(食べようがなくて困っている)和牛のシチューにしようと。

いつものようにミレポア(ニンジン、セロリ、多めのタマネギ)を大量に焦げ目がしっかりつくぐらい炒め、それとこの肉を煮込みました。この時点でいろいろスパイスを入れても圧力鍋で長時間調理すると香りも飛んじゃいますので、とりあえずお酒だけ。

圧力鍋で30分。本当はこれも沸騰させずにコトコト数時間煮込むべきなんでしょうが、あくまで出汁取りで手を掛けても掛けなくても私にはその違いがわかるベロがありませんので^^;、圧力鍋を使いました。

そして野菜も肉も全て捨てて・・・と思ったのですが、毎度の貧乏性が出てくるんですね。ちょっとスープを別にとって塩を加えて味見をしてみるとこれで十分美味しいじゃないか~~~と思ってしまう。中にある野菜も肉も「出し殻」と同じで、どうしてこれを思い切って捨てられないのか自分の「卑しさ」に腹が立つのですが、「この出し殻も貴重な植物繊維」だと野菜を殆ど食べない私は思うし、このまま活かすことに。(^o^)v

とまぁ、このへんまではいつものクズ肉シチューと同じなんですが、ここからがいつもと違う。

いつもメチャ安いクズ肉を絶賛していますと「ダボはあんな肉しか食べないのか」なんて思われても悔しいですし(笑)、清水の舞台から飛び降りて買った(嘘。卸価格で安かった)「A3の(日本の)和牛」が山のように残っているんですよ。これって一般的な日本人には「美味しい肉」かもしれませんが、どうも私たちには「半端じゃないメタボの肉」でしかないんです。いや、確かに「和牛香」があって美味しいのですが、脂が多すぎ~。

ということで今までなら絶対にシチューには使わない(高価な)日本の和牛をシチューにすることにしました。

そしてその方法がまたいつもと違う。

今まではこのクズ肉で取った出汁を使い、頬肉、オックステイル、その他のメインの肉を入れて調理をしましたが、その時、私は味付けをしないでそれらを追加していたんです。そしてそれらが狙った感じなってから「味付け」をしていました。

これって駄目なんですよね。それに気が付いたのが最近。これじゃメインの肉も「出汁取り用」と同じになっちゃうのね。

ではどうするのか。ここで私はフランス料理で言う「ブレゼ」という手法を知りました。

これは「味付け」の手法でもあるんですね。つまり薄い溶液で煮込めば、素材の味は外に出る。当たり前ですよね。それが「出汁を取る」という行為。でも濃い溶液の中で煮込むと、その溶液の味が素材に「入る」んですね。そして素材の味は外に全部出てしまうということはない。

これに気が付きませんでした。つまり私は出し殻にメインの肉を足して、また出汁を作っていたのと同じなんですね。それはそれで美味しいんですが、本来それじゃメインの肉の活きる場がなくなる。

なぜそういうことが起きるかというと、浸透圧なんですね。そのメカニズムがわかれば、素材から味を取り出すことも、味を入れることもできるってこと。面白いですね~~~。

ですから今回は、和牛を入れる前に完成に近い味付けをしました。私は小麦粉が焦げた香りが好きなので、小麦粉をしっかり炒って入れたり(こうした小麦粉ではトロミは出ない)、ここで初めてスパイス類を入れます。って我が家は洋食らしいスパイスいろいろが好きではないのでコショウとベイリーフ、塩程度。そして赤ワインやトマトペーストとか。(これらは最初から入れると、高温で長時間調理した場合、出来上がり時には香りがほとんど飛んでいるのね)

そこに和牛を入れて、圧力鍋ではなくて、先月買った新兵器「ココット」を使います。分厚い「鋳物ホーロー鍋」で蓋に穴が無く、重いので、密封調理に近いことが出来る優れもの。これはブログ友であるみぬぅさんの日記を見て私も買うことにしました。(これがその日記)クリック

そしてこれを「オーブン」に入れて調理します。カッコいいでしょ~。(笑)

今までこういうことをしたことがありませんでしたから、なんだか嬉しい。

ただし、私は「低温調理オタク」ですから温度にこだわります。

さてオーブンに入れたそのシチューは何度で調理すべきか、そして時間は?

ブレゼに関してネットで検索してもなかなかこれぞという説明が見つかりません。まさにプロの感覚、常識の世界なのかもしれませんが、私のように理屈っぽい性格だと「なぜ?」というのがわからないと真似しようとは思わないんですよ。やっぱり「科学的根拠」を知りたい。そもそも私の料理は「調理実験」ですし。

ですので、自分の知識を総動員して決めるしかありません。たとえそれが料理会では「トンチンカン」だとしても自分が納得できる方法をやるしかありませんよね。

この時考えたのは、本来なら出し殻の野菜やクズ肉は捨てて、新たに肉と野菜を入れるってことなんです。そしてその野菜は「柔過ぎない様に、しかし味はしっかり入れる」のが目標。肉も同様で、クズ肉と同じように「出汁を取る」様な使い方はしたくない。

でもクズ肉もミレポアもそのまま使うことにしましたので、肉は和牛を入れ、野菜は「生椎茸をそのまま」と余っていたその他の椎茸をバターで炒めてからいれることにしました。

そして温度は80度です。低いでしょ?それで良いんです。その温度じゃないと私が狙ったものは出来ないはずだから。

またオーブンの温度が80度なら、鍋の中は何度になるのか。これも難しいんですよね。オーブンでこれだから困る。これがお湯を使った「低温調理なら1度単位でも調節出来る」のに。

でもオーブンが何度なら鍋の中は何度かというのは前回の実験でだいたいわかりました。1割減って感じかな。100度設定だと88-93度ぐらいになる。今回は80度設定で狙いは73度ぐらい。

なんでこの温度かというと、まさにこれが(私が想像する)「土瓶蒸し」や「中華の壺料理」の温度なんです。

この温度で調理すると「味や香りが飛ばない」「素材の味がしっかり残る」「素材が煮崩れしない」という摩訶不思議なことが起きる。例えば普通なら簡単に香りが飛んでしまう「ニンニク一欠片」がきっちり仕事をするんですね。土瓶蒸しや壺料理が美味しいのはまさにここがポイントだろうと想像していますので、今回はそれを同じ状態で調理しようと思ったわけです。

時間は3時間。

普通この時間煮込みますと、椎茸なんか元の味は飛んで、スープの味に近くなる。野菜も柔らかすぎる状態になるはず。今回は新たに野菜を入れていませんが、ニンジンの「コリ」っとする感触もこの温度なら残せるんですね。不思議です。でもま、これは野菜が軟化する(ペクチンの変化する)温度がどのくらいかわかればどうにでもコントロール出来るんですね。肉で言うタンパク質、脂肪、コラーゲンが変質、変性、溶ける温度がわかれば色々出来るのと同じ理屈。

出来たのがこれですが、この温度だと椎茸が「俺は椎茸だ~~」と言っているのがわかる。(笑)

でも肉はちゃんとうまい具合に柔らかく煮込まれていて、和牛の香りも飛んでない。しかし、スープには和牛の旨さも出ている。

見た目はなんてことないですが、我が人生で一番美味しい「和牛シチュー」が出来ました。

でもこれも中途半端で、やっぱり最初の出汁用のミレポアとクズ肉は廃棄処分し、新たに肉と野菜をいれるべきでした。

でもそれはまた次回のお楽しみということで、私のいい加減な科学的根拠によって調理したものが美味しかったので私は嬉しいです。

この実験も実は今までの「低温調理」の延長線上にあるものですが、今年は今までの低温調理の知識、つまり「温度を重視する」ことプラス、「浸透圧を理解する」ことに注目してみようと思います。それと時間ですね。

私の調理実験もこれからが面白くなるのかもしれません。

温度、時間、そして溶液の濃さで「素材の味の出、入り」、そして「素材の硬さ」までをコントロールできることがわかったのは今後の楽しみが広がります。

最近、思うのは、料理って「建築」に似ているかもしれないってこと。つまり、味、硬さも「設計図通り」に作ることが(多分)可能だってこと。料理の世界ではそれを習ったり、経験で覚えるのが普通だと思うのですが、科学的なアプローチからその方法を見つけるという実験はなんとも言えず面白いと思います。

プロやハイアマが見れば「バカやっている」と思うんでしょうが、科学的根拠から考え出す調理法っていくらでも応用が効くから私としてはやりがいがあります。

 
 
 

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