私達がオーストラリアはゴールドコーストからマレーシアにお国替えをするにあたり、長年住んだゴールドコーストの家を2016年に売却しました。そしてその家がなんと次の年、2017年には「ほぼ2倍」の価格で転売されていたのがわかったと数日前の日記(これ)に書きました。
一体何でそういうことが起きるのかですが、ここにはオーストラリア流「不動産錬金術」が存在するから。
この手の話しって、私は日本では聞いたことがないのですが、オーストラリアやアメリカではプロだけではなくて一般の素人の間でも広く行われていて、ある意味、「家を持つ人の常識」でもあるんですね。
私のロサンジェルス在住の叔母ですが、「友達とアルバイトをやっているのよ」と私が訪問したときに聞いて興味を持ったのがその錬金術を知った始まりでした。もう40年以上前の話し。(笑)
一体どんなことをしているのか、叔母が出かけるのについていったのですが、近所の一軒家に入っていきまして、
◯ 床の張替え(タイルや絨毯)
◯ 壁の塗替え
◯ カーテンの交換
◯ 庭の手入れ、その他
こんなことを素人の奥さん連中が手分けをしてやっているんですよ。私としてはそういうことは「プロに頼むこと」だと思っていましたから、「一体全体、何をしているの?」と聞きましたところ、「見た目の悪い家をオークションで安く買って、それの見た目を良くして時間を掛けて(ここがミソ)転売するのよ」とのこと。素人に出来ない部分はプロに頼むらしい。
へ~~~~~、そんなんで利益が出るんだ~~と驚きましたが、こういうことを友人とグループを作って何度かやっているとのこと。
この家って自宅では無いわけですが、自宅に関しても同じような考え方を持っているのね。
オーストラリア人の多くは常に自宅は綺麗にして「いつでも高く売れる状態を維持する」。そして小さな家なら増築したり、平屋なら2階建てにしたり。あるいは基本構造だけ残して建て直すみたいなことまでやる。これはそれぞれのオーナー次第で、前にもブログに書きましたが、ゴールドコーストの自宅の左隣の家はそこそこの規模の工事をしていました。全外壁の塗り直し、瓦の交換から庭にはガゼーボを増築したり、家の中はわかりませんが、全部で50万ドルぐらい掛けたと言っていたかな。
面白いのはそれをやるのはオーナー自身なんですよ。普通じゃそういうことは出来ませんが、隣の家のオーナーは「電気技師」で、自分の仕事がないときにコツコツ自分の家に手を加えるのね。当然、仕事仲間は左官屋から水道屋からいろいろいるわけで、彼らも暇な時に来てはそれを手伝う。そういう仲間同士の「アルバイトネットワーク」みたいなのが出来ているんですね。中にはツワモノもいて、平屋を二階家にするのに「屋根以外は自分でやる」ような人もいると。もともとオーストラリア人ってなんでも自分で修理する、作る人は多く、ガレージの中にはちょっとした工作機械がいくつもあるなんて家庭は多い。
当然、発注者がいる仕事じゃありませんから、皆で暇を見つけてちんたらやるんですが、最終的には見違えるような家になります。
この「住みながら改築・改装をする」ってのがオーストラリアの特色だと私は思っていて、「一年以上住んだ自宅を売却したときのキャピタルゲインには課税されない」のを利用するんですね。まして改築・改装はオーナー自身がやれば、それもその道のプロならとんでもなく安く上がる。坊主丸儲け。(笑)
こういう家を買うのはゴールドコーストの人間ではなくて、日本を含む海外、あるいはシドニーやメルボルンから「温かいゴールドコーストに移住」してくる退職者などなわけです。パッと見は良いですから、それなりの値段で買っちゃうのね。そしてここで重要なのは「ゴールドコーストいうリゾートに自分は住むんだ」という高揚感が客にはあるってこと。マレーシア在住の方はよく分かると思いますが、プールがある、テニスコートがある、広いってだけで舞い上がっちゃうでしょ。それと同じなんですね。「いつか住んでみたいと思ったプール付きのウォーターフロントで、見た目も綺麗な家」があったらその気になっちゃうわけです。
また我が家の右側の家も同様で、そこにある時、移り住んだ家族はどんな仕事をしているかもわからない小さな赤ん坊もいる若い家族だったのですが、壁も壊したり増築したり、平屋を2階建てにしたり半端じゃない手の掛け方。川に伸びる桟橋も、前には普通の木製の桟橋があっただけだったのですが、それを「電動で上下」して、クルーザーを桟橋の上に置けるような凄いのに取り替えていました。(ボートは陸揚げしておくと傷まない)
かなり時間を掛けて改築していまして1年以上、工事を続けていましたっけ。そして最終的には「家具や家電」も総入れ替えした様子。大きなトラックが何度も来ては搬入していましたから。
ま、日本人の感覚では「新築」と同じ。でも新築じゃないんですね。改築、改装でしかない。改築前の家はまぁ普通の大きな平屋の家って感じでしたし(それを二階建てに増築もした)、だから壁でも壊せば古い柱が出てきますし、地面を掘れば古い水道管も出てくるわけです。
凄く若い、謎の金持ちが隣に住んでいると思っていたのですが、この家がですね、ある時、転売されたことを知りました。それはまさに「ウソだろ?」のレベル。私がゴールドコーストでもほとんど聞いたことがないような価格レベル。彼らがその家に住んだのは2年ぐらいじゃなかったかぁ。でもその後、その家で生活する新しい家族とは会ったことがない。クソ大金持ちの別荘となったのかもしれません。中国人かな?
ま、このようなことを素人もプロも皆がやる。これがゴールドコーストなんですね。で、それを支えているのが我々みたいなよそ者。今の時代は半端じゃない金持ち中国人でしょう。彼らの買い方って異常とも言えて、まさにバブル時代の日本人と同じで、家の中も見ないで車で前を通っただけで「購入を決める」とか(ハワイでもそういうことが起きた)、代理人に任せて本人は一切見ずに買う、なんてことも普通にあると聞きました。
でも彼らが買うのは「まるで新築のような綺麗な家」なんですね。それは私達がゴールドコーストに渡った時も同じで、汚かったり改築改装が必要な家なんか見向きもしないわけですよ。ましてやゴールドコーストでは高い値段でも「日本に比べたらめちゃくちゃ安い」「日本にはウィーターフロント、プール付きなんて無い」んですから。これはシドニーやメルボルンから来た人も同じで、彼らにしたら絶対にシドニーやメルボルンでは手の届かないような家が、しかも安く買えちゃうんですから。(シドニーでは【海が見えるだけの一軒家】で3ミリオンの値が着くと前に聞いたことがあります)
こんなこともあったと聞きました。当時、不動産業者が「日本からの不動産視察ツアー」を頻繁に開催していて、あるグループが不動産オークションに行った。するとそのツアー参加者の日本人がオークションに参加して、日本人同士で値を吊り上げてオークション物件を買ったと。ちょっとした大きめの海にも近い、プールもテニスコートもあるようなワンベッドルームのコンドが1千万前後で買えた時代ですから(日本はまだバブルの頃)、それで舞い上がって即決して買っちゃう日本人もいたということ。
こういう外から入ってくる人たちがああいうリゾート地の「不動産錬金術」を支えている(カモになっている)んですね。地元の連中はそうやって儲けている。
でもこれって詐欺に似ているところもあって、「新築に見えても新築じゃない」わけですよ。
一度こんなことが我が家に起こったことがあります。
玄関の横の庭の水道管が破裂して、水が大量に吹き出したんです。慌てて元栓を締めて水道屋を呼びましたが、手掘りじゃ無理だとユンボ(小型のブルドーザー)を持ってきて庭を掘り起こしたんです。あんな深いところに水道管が入っているのかと思いましたが、無事、漏れは止まった。
その水道屋が言うんですよ。「この場所で良かった。もしもっと先だとしたら、このドライブウェイ(道路から車庫への道)、車庫も掘り返さないとならなかった」と。当然そこにはタイルが貼ってありますし、それを全部壊して掘り起こすことになる。
そこで「そもそも水道管はどのへんを走っているの?」と聞いたところ、ドライブウェイを横切って、変な場所から車庫の下に続いているんですよ。「なんでこんな変な経路なんだろう?」と聞いたら、「前の家のをそのままつかっているからですよ」ですと。
が~~~~~~~~~~~~~ん、前の家ってなんだ?全く意味がわからず。
そこでいろいろ調べだしたら所、我が家も「改築された家」だったのがわかった。それまで私は知らなかったんですから馬鹿丸出しです。
でも前の家がどんなだったかはわからず。ただ大きな家でなかったのは想像がつきます。
日本だと「更地にして建て直す」のが普通ですが、それをやると「コストがかかる」んですね。そして「古い家の基礎を残した改築、増築」の場合は、新築と違って「固定資産税が安くなる」というのが大きなポイントの様子。
でもねぇ、前にどんな家だったかもわからないし、問題があるような家だったかもしれない。それなのに基礎部分や主だった柱を残した「化粧」みたいな改築だったら怖いなんてもんじゃありません。でもそんな話を不動産屋と話をしたら、「問題があればそれを残すなんてことはするわけがないじゃないですか」という。でも私はそういう誠実さって日本人のそれとは全くレベルが違うと思うし、自分が長い間住み続ける家ならまだしも、ゴールドコーストに外から入ってくる「舞い上がってる人たち」に転売して儲けるビジネスモデルですから、「最小限の安全しか考えていない」「法律的に問題がなければそれで良し」だと私は思っています。しかし「見た目は最高の家」にするのね。
だからきっと私のかつての家をとんでもない価格で買った新オーナーも、まさか30年以上前の家の上に覆い被したように建てられている家だなんて全く思わないでしょう。きっと金持ち中国人が住所の良さ(一応高級住宅街)と見た目、大きさ広さに惚れて買っちゃったんじゃないですかね。
かつては似たような大きな家が並ぶ地域(土地の広さは皆同じで1200平米程度)だったのですが、時と共に我が家だけ取り残されて周りは豪華な家が連なる地域になったわけです。でも我が家を転売するのにどのくらい手を掛けたかつてをたどって調べたところ、さほど手はかけていない様子。でも見た目だけは綺麗にしたんでしょう。
家を売って引き渡しの期日前から新オーナーに「改装の許可」を出したのですが、改装中に「最後のお別れ」をしに行ったときのブログ、写真がありました。(この日記)
こんなウォーターフロントの家がごっそりある地域です。どの家も大なり小なりプールがあるのが普通。ウォーターフロントと言っても海に繋がっているネラング川本流、支流、閉鎖水域のウォーターフロントもあって価格は大きく変わる。
でも何か起きたときに、新オーナーは「なんかこの家、変だなぁ」というのに気がつくはず。
実はですねぇ、私が「現状で売るしか無い」と思ったのはいろいろ問題があったからなんですよ。その詳細はここには書きませんが、もしそれを完璧に直すとしたら家の横から穴を掘ってコンクリートを大量に注入しないとならないとか、放置すると突然プールに亀裂が入るとか(この修理はとんでもない金がかかる)、そんなことも考えられたんです(この地域は全ての家が【砂上の楼閣】と同じ)。かつて大騒ぎしたシロアリ対策も十分なのかもわからない。だから大きな家ですし手を掛けだしたら半端じゃないお金がかかるんですね。ではどの部分にどのくらいお金をかけて直せば良いのかなんて私には全くわかりませんでした。でもプロはどのくらい手を掛けたらどのくらいの価格で売れるというのがわかる。ましてや私から我が家を買ったのは地元の不動産屋ですから、市場の動きも買い手がどんなかもわかっている。またあとで問題が出てもどうやって責任回避するかのノウハウも持っている。
これに太刀打ちなんか絶対に無理で、ま、「現状」でたたき売りをしたわけです。
こういう不動産の錬金術が出来るのは一軒家だけじゃないですかね。コンドだとしたら内装を良くすることぐらいしか出来ませんから、ちょっと気が利くバイヤーなら言い値が妥当かどうかはかなり正確にわかるはず。
でもマレーシアみたいに「新しい開発地」で「新しく造成された土地」で「新しく建てられたコンド」みたいだと価格が妥当かどうかを調べるのは至難の業じゃないですかね。でもまブームが来ればマレーシアのジョホールバルみたいに買いが殺到するなんてことも起こるんでしょう。
こういうのを不動産屋の言うままに買う人達の心理って私にはよくわからないのですが、「投資だ」と口では言いながら、「買いたいから買った」だけじゃないかと思っています。わけのわからない外国で、わけのわからない場所の、わけのわからないビルダーが建てた、わけのわからない品質のコンドて、わけのわからない不動産屋から、わけのわからない価格で買うなんて普通では出来ないと思うのですが、「ブームだ」という点と、やっぱり一般的な日本人がそうであるように「海外に別荘。しかもプール、テニスコートもあるようなコンド」ってなところは大きなポイントで、「それを持つこと自体が目的で投資効率なんて二の次」なのが本音じゃないんじゃないですかね。
かつて日本でも別荘ブームがあって、山中湖じゃどこじゃと山を切り崩して簡単に造成しただけみたいな場所に皆が殺到して「投資になる」なんて言っていましたが、手放すときに何分の1が普通でしたよね。でも「俺は山中湖に別荘を買った」というのが大きな満足なんだろうと思っています。ま、ある意味、車と同じで、ベンツとトヨタとどう違うのかってのは別にして「そりゃベンツでしょ」みたいな。(笑)
でもそれが悪いわけではなくて、私達は「満足感を得る」のを目的に行動を決めるわけで、その満足が金銭的なものであろうが、自分の劣等感を克服するためだろうが、見栄のためだろうが、その人が満足すればそれで全く問題がない。また金は十分にあるのに使わないことに満足感を得る人もいて、それはそれで同じことだと思うんですよ。
でも気をつけないとならないのは、なぜか「これは投資の側面もあって、まんざら悪くない」と自分に言い聞かせてしまうことじゃないですかね。「投資対象になる」というセールスマンの甘い言葉に背中を押されてしまうんじゃないかと。
といいつつ、私もその罠に引っかかった一人の日本人なのは間違いがないんですよ。あの家を初めてみたときには眩しくて光っていて、こんな家に自分が住めるなんて想像もしたことさえなかったんですから、舞い上がったなんてもんじゃない。
でもああいう家に住んで、そこで子どもたちを育てることが出来たのはやっぱり運が良かったと思うし、オーストラリア、それもあの時代じゃなければそれは不可能だったのは間違いがありません。価格はあえて書きませんが、もし日本だったらプールもない、ウォーターフロントでもないにしても10倍以上の値段がつく家だと思うような価格でした。
だからこそ、あの時代、多くの日本人がごっそりオーストラリアへ渡ったんだろうと思います。物価もめちゃくちゃ安かったし、後にマレーシアに来て驚いた物価の安さ以上に、あの頃のオーストラリアの物価の安さの方が驚きがありました。永住権を取るのも今みたいに難しくありませんでしたし良い時代でした。マレーシアの将来はどうなりますかね。でも舞い上がって調子に乗っているとどうなるかってのはこのブログに何度も書いている通り。私も結局はオーストラリアから出ることを選択しなくてはならなくなったわけです。
面白いのはヨメさんで「あんな大きな家を、誰が掃除するかも考えずに買ったバカな亭主」と今でも私に言います。
だからマレーシアに来たら「住むところはヨメさんが決める」と約束をしたわけです。でも最終的に決めたのは私と長男で、ヨメさんは広すぎるとブツブツ言い続けていました。(笑)
世界は広くていろいろあって面白いですね。人生も面白い。まさかの連続。(笑)
マレーシアではどんな「まさか」が私達を待っているんですかね。楽しみ、楽しみ。
マレーシアで不動産を買うか?
う~~む、それは無いだろうなぁ。でももし買うようなことがあれば、今のコンドは本当に気に入ってて、ここの最上階に近い部屋がいいなぁ。
しかしコンドって怖いですね。今の部屋は中層階なんですが(その前はもっと上だった)、かなり眺めが良かったのが目の前で建設中のコンドの背がどんどん高くなって視界が遮られる高さまで伸びた。またその隣でも建設中。これが同じ様に背が高くなったら多分ツインタワーも見えなくなるかもしれない。これじゃ眺望の魅力がなくなると思います。借りているコンドだから関係ないですが、自分のコンドだったら腹立つだろうと思いますわ。
このユニットから見えるこの眺望ですが、建設中の背の高い何本かのコンドが完成したらかなり変わっちゃうはず。でも最上階に近い部屋なら大丈夫のはず。
Airbnbで泊まった結構好きなコンドであるブキビンタンの「St. Mary Residences」(寿司屋の日向があるコンド)ですが、その中層階の部屋のベランダから外を見ると左右に背の高いビルが迫っていた昼でも薄暗い部屋だったのね。そしてその隙間の真ん中はビルが建設中だったんですわ。あれが完成したら「すぐ目の前のビルしか見えないコンド」となる。多分、今はもうそうなっているはずですが、これって買った時にはわからないんじゃないですかね。そりゃ空き地があれば、そこに建つであろうことは想像できますが、あの部屋を見たときには「コンドを買う時には必ず近隣の土地を見て将来建つかもしれない可能性を考える」べきだとつくづく思いましたっけ。あるいは再開発で大きいのが眼の前に建つ可能性がある場合も考えないと悲惨なことになりますね。
KLCCの「Binjai on the Park(The Binjai)」は目の前の公園になにか建つことはないだろうし、未来永劫あの眺望を自分のものに出来るって凄いコンドだと思う。あのコンドに行ったことはないですが、部屋から見える眺望はこんならしい。
今調べてみたら、今のコンドと同じぐらいの広さ、部屋数でレントは25%アップぐらいですわ。倍以上するんだろうと思っていた。あのコンドは忘れようと思ってもなぜか気になるコンド。もし日本だったら家賃は月に250万円(都心で300平米の4BR)とかそういうレベルじゃなかろうか。(笑)
折角、家賃も安いマレーシアだから、思い出としてあんなコンドに一度は住んでみるのも良いのかもですね。日本人も多く住んでいるらしい。