皆が注目していた米朝会談ですが、合意もなく物別れになったみたいですね。
そしてトランプ氏は「北朝鮮側が「全ての」制裁を解除してくれと言ってきた」と言いますが、北朝鮮側は「それは違う」と。彼らが要求したのは「一部の制裁解除」であったと。
この辺のトランプ氏のずるさも流石だなぁと私は思いました。またそれはトランプ氏が嘘を着いているってことではなくて、北が言う「部分的解除(11件のうちの5件)」をしたら「ほぼ制裁の意味がなくなる」という意味じゃないんですかね。どちらが嘘を言っているかというより、狸と狐のやりとりなんじゃないかなぁ。
そもそも会談の前にトランプ氏は「核廃棄は急がない」と言っていたじゃないですか。あれってとても変なことでおかしいなぁと思ったのですが、これは「このまま制裁を続けて締め上げるよ」という意味だと私は解釈したのは間違いではないと思いました。
またトランプ氏って変に相手を立てるじゃないですか。友人だとか、恋に落ちたとか言ってみたり。今回の会談に大きな期待があるようなことを言ったり。
あんなのは嘘八百だと思うけれど、藁をも掴みたい方はなんらかの期待を持つこともあると思うんですよ。それは北朝鮮以上に今回の合意無し、制裁緩和も無しで「落胆している韓国」を見るとそう思います。
北朝鮮も甘いと思いましたよ。アメリカが制裁解除をすれば「(核施設のある)寧辺地区のプルトニウム、ウラニウムを含むすべての核物質施設を、米国の専門家たちの立ち会いのもと、両国の共同作業で永久に廃棄する」なんて程度でアメリカがそれを飲むと思ったんですかね。
確かに寧辺地区には重要施設があって、それらが無くなるとするなら北朝鮮の「核攻撃能力」は大幅に下がるのだろうけれど、北朝鮮はいくつもの開発拠点があるのは間違いが無いようで、「核廃棄」にはほど遠い内容。ま、北朝鮮もこれである程度、制裁が緩和すれば儲けものと思った程度なんでしょうが、今回は完全にトランプ氏にしてやられた感があります。
本来なら会談なんかする必要はなかったはずですが、ここがまたトランプ氏のうまいところだとも思うんですよ。口では甘いことを言い、大きな進展があるだろうみたいなことを言えば、そりゃ誰だってトランプ氏が譲歩案を持っていると思うし、それを心配した日米の要人や専門家の発言もいろいろありました。「アメリカはアメリカに届かない核なら容認するんじゃないか」「日本もいよいよ核装備の議論をすべきだ」とか。
でもそれもまたトランプ氏の作戦の内で、「大きな期待をもたせておいて、きっちり叩く」方が効き目がありますし、北朝鮮内部では「これで制裁も緩和される」という期待が多かったようですし、今回の「合意なし」は北朝鮮内部では報道されていないとのこと。
それだけお坊ちゃまも進展があると思ったのだろうし、国内向けにも良さげな話を流していたってことじゃないですかね。でもそれが簡単にトランプ氏にあしらわれちゃったんですから、お坊ちゃまのメンツ丸つぶれ。帰りの道中ではムスっとしていたらしいじゃないですか。
お坊ちゃまと言うか彼に着いている参謀って半端じゃなく頭がよい策略家だと思っていましたが、今回は完全にトランプ氏に一本取られたんじゃないですかね。
で、トランプ氏は次の会談には言及せずに「正恩氏との関係を継続したい」とだけいう。
これって、わざわざ列車に乗って何千キロも走ってきたお坊ちゃまにしてみれば「ま、頑張って【核放棄】を真剣に考えろや。それまでしっかりじっくり制裁を続けてやるからな」という脅しを聞くためだけにベトナムに行ったのと同じ。
お坊ちゃまの落胆以上に、これだけの大きなイベントなだけに北朝鮮国内の期待も大きかったはずで、それをぶち壊された国民は一体何を考えるのか。これってお坊ちゃまもヒヤヒヤしているんじゃなかろうか。
これもトランプ氏の作戦通りだと思いますわ。
そして韓国の落胆の仕方をきっちり観察していれば、韓国が一体何を考えているのかもよく分かるわけで、日本の「安易な妥協がなくてよかった」という態度とは正反対なのが浮き彫りになる。
今はお坊ちゃまのお尻に火がついちゃった状態じゃないですかね。ムン大統領もどう動くのか。
これからの動きこそが今回の米朝会談の見どころじゃないんですかね。ベトナムでの会談は「大掛かりなやらせ」でしかなくてトランプ氏の圧勝だと私は思う。
でも時を同じくしてアメリカでは腹心だったコーエン氏がトランプ氏の秘密暴露で大騒ぎ。
これも関係していると考えるべきで、トランプ氏は下手に北朝鮮と妥協したら余計立場が無くなると読んだ可能性がありますね。ということはもしコーエン氏の証言が無ければ、会談の成果を出したかったのは間違いがないトランプ氏が全く違う結論をベトナムで出していた可能性もあるのかもね。