今回も(いつもの通り)話が長いですが、これを読むと「蒸し鶏を作るポイント」「低温調理する場合の注意点」が全てわかります。それに興味がない人にはただの苦痛のはず。(笑)
中華の定番で「蒸し鶏」がありますよね。いろいろな種類があって「白切鶏」、「海南チキン」、「紹興酔雞」、「よだれ鶏」もそう。蒸し鶏は場所が変わればまた味付けも変わってとんでもない数のバリエーションが有る。私の中華のメニューで一番好きなのがこの「蒸し鶏」です。
ただそれらの多くに共通する点は「茹でる」ということ。本当に蒸すのは一部でしか無くて、多くは「茹でる」のね。
なんだ、茹でるだけでよいのかと思って茹でてみるとこれがまた全然美味しくなくて、全くの別物なんですね。硬いし、胸肉なんてパサパサでどうにもならない。
なんで?と思って調べだすと、まず「温度」が大事だというのがわかる。では何度でどのくらいの時間茹でるのか?を調べると、これまたいろいろなのね。そして普通のガスコンロに鍋を置いて、そこで温度調節をするなんてとんでもなく面倒なわけです。なおかついろいろ実験をしたくても、細かい温度の調節ができないのね。
多くのレシピにある「沸騰したお湯に投入し、再沸騰したら火を消して20分放置」なんて、そんな簡単に美味しいのは出来ない。そもそもお湯と鶏の量のバランスによってもまるで違うじゃないですか。プロって毎日同じ様に作るからそれでも大丈夫なように自然に調整して調理法は固まるけれど、我々はその時その時、量も違えば状況がバラバラですよね。それを考慮しないで「こうやればOK」なんて、そんな簡単な料理じゃないと思う。
中はまだピンク、あるいはパサパサなんてことが簡単に起きてしまう。
ということで、温度計を使ったり、炊飯器の「保温モード」を使ったり、温度調節が可能な多機能鍋を使ってやってみたけれど、実験をしつつデータを集めるとなるとやっぱり誤差が大きすぎて駄目。温度管理はアバウトですから、たまたまうまく行ったとしても次に作るときになかなか「再現できない」ことが起きる。
それじゃ全く意味がなくて、「慣れだよ」なんて言われても、「量が変化したらもうそれでわからなくなる」し、どうにもならず。
で、「低温調理器を使った低温調理に行き着いた」わけです。これなら微調整も可能で、「何回でも同じものが作れる再現性がある」「量が多い少ないも関係なく同じものが作れる」というとんでもない利点がある。低温調理器は「素人だからこそ必要」だと思っています。だからこれにハマったのですが、それはもう8年ぐらい前のことですかね。
それからは細かい設定の違いで実験を続けてきましたが、本当に蒸し鶏って奥が深くて、これぞという答えがなかなか見つからないのね。
まず、胸肉ともも肉、そして皮の「それぞれの部位の【適温が違う】」のね。これだけでもうどうにもならないと思うじゃないですか。でもプロは鍋で茹でるときにも「温度」「投入の方法」「鍋の中の鶏の向き、位置」でそれを克服しているのもわかった(それをしないプロも多い)。ただ単に、「沸騰しているお湯に入れて・・・」なんて簡単じゃない。
胸肉がちょうどよい時、もも肉はナマだし、もも肉に合わせたら胸肉はパサパサになる。そしてどちらに合わせても皮は半生みたいな。
私の結論としては「皮、腿、胸肉」はそれぞれ【違う温度で別々に茹でて】から、【最後に合わせる】なんてことまでやりました。でもそんなのは面倒で後が続かない。ちなみに私が使う温度は「胸肉は62度」「もも肉は68度」「皮は100度で3-5分」が最低限。これは素材の芯温なのをお忘れにならないように。これ以下だと「ピンク色」だったり「生っぽくね?」と感じる人が多いはず。どちらにしても温度と時間は自分でトライしながら自分にあう温度を【安全を考えつつ】探すべきだと思います。他人の例は信用しないこと。(温度計のキャリブレーションもしたほうが良い。2度程度の誤差があるケースもある)
でも諦めずにやっていると、「こうやれば良い」というのが見えてくるのね。でもそれは万人向けではなくて、私の場合は「胸肉は嫌い」「皮は大好き」ですから、【皮付きのもも肉】という条件が付く。でもこれもまた、骨付きと骨なしでは「適温が違う」なんてまた新たな壁にぶち当たるのね。骨なしの適温で骨付きを調理すると、骨の周りに「赤い血(髄)が残ったまま」だったり。私は全く平気で「そのぐらいが美味しい」と思うのだけれど、「生だ~~~~~~~~」と騒ぐ家族が我が家にはいるわけです。(笑)
ま、それは実験を繰り返せば乗り越えられることなんだけれど(温度は同じままで時間を伸ばす)、「茹で加減はほぼ完璧」に出来るようになっても、「なんだかイマイチ美味しくない」という谷底に突き落とされるようなことが次に待っていた。
これの解決方法がわからなくて2年ぐらい経ちましたかね。
でもある時、気がついた。まず手順としては「茹でたものを冷水で締める」、その後、「スープに漬け込む」わけですが、この漬け込むスープの味と【漬け込む時間が大切】なのに気がついたわけです。
お店で頼むと美味しいですが、「注文が来てから茹でるはずはない」し、すでに漬け込んであるものを出しているわけですよね。それとていつ注文が来るかわからないから、「そこそこ長い時間漬け込んである」と思ったわけです。注文がなければ、2日、3日と漬け込んだままのこともあるだろうと。
で、2日漬け込んでみたんですよ。これが大正解だった。\(^o^)/
歯ごたえはもちろんしっかりあるけれど、ちょっとフニャとした柔らかさも大事。これは漬け込むことでそうなる。ま、「水分を吸ってぶよぶよになった」と言えばわかりやすいけれど(笑)、あえてその状態を作るから「柔らかくて美味しい」蒸し鶏となる。
味付けや食べる時の調味料は好みに合わせていろいろ変えるだけで、料理名も違う蒸し鶏の出来上がり。鶏ハムも同じ。
ところが~~~~~~~~~~~
うちのヨメさんは、その柔らかさが嫌いだという。(┰_┰)
これを言われると振り出しに戻ってしまうわけで、私としては「自分が美味しいと思うもの」を突き詰めるしか無い。
今回、久しぶりに蒸し鶏(茹でる)を作りましたが、低温調理器は使わずに普通に鍋で茹でることにしました。
骨付き、皮付きのもも肉ですが、骨付きのもも肉の適温は70度(胸肉なら62-63度)。時間は40分。ただ、これでは皮が生っぽくて駄目なのね。だから「沸騰したお湯」に3-4分は浸けた後に、適温に持っていくわけです。でも70度ちょうどではなくて、芯温で70度にするにはそれなりに高い温度が必要ですから、73-75度を維持する。これもアバウトだけれど、70度以下にはならないように注意。(この温度でオッケイなら、面倒なことはせずに炊飯器の保温機能を使えばOK。当然、保温機能は何度を維持しているのかチェックしないと駄目ですが、大体70度が普通)
鶏もも肉の適温って牛肉みたいに「2度変わったら別物」みたいにはならないので、その辺は本当にアバウトでもオッケイ。だからあえて低温調理器を使って細かく調節する必要もない。というのが最近やっとわかってきたこと。
茹で汁は後で使うことも考えて、一番最初に「鶏肉は下茹で」します。これでアクなりヌルなり臭み、血をきれいに洗う。そして新しいお湯に「チキンストックで味付けをしたもの」で茹で始める。このお湯に味をつけるのも大事で、お店の蒸し鶏が美味しいのは、「多くの鶏を茹でるからスープが美味しくなっている」のね。この状態を再現するために、お湯にチキンストックで味付けをするわけです。
大事なポイントは「しっかり皮に火を通すことが重要」で、上にも書いたように「(下茹でも沸騰したお湯で下茹でするものの)最初は沸騰したお湯に入れる」ことをします。これをしないと皮がブヨンとして「火が通っていない感じ」がするはず。皮が薄い鶏なら大丈夫ですが。
こうした場合、アクも出ない臭みもないきれいなスープのままですから、そのスープも問題なく後で使えるのね。ご飯を炊いたり、卵スープを作ったり、ラーメンのスープにもオッケイ。捨てたらもったいない。
そして「浸け汁」はこのスープを適量とって、アルコールを飛ばした紹興酒と、今回はお醤油を少々足しただけ。薄味です。それに浸け込んで冷蔵庫で2日放置。
完成。
このぐらいの鶏の骨なら簡単に叩き切ることが出来る大きくて恐ろしい中華包丁もあるので、ぶつ切りにするか、身をほぐすか考えたのですが、今回はそのままで食べてみることに。
なんとも言えない「歯ごたえと柔らかさが同居したような鶏」で、味も良くてほぼ完璧の出来上がりでした。というか「私好みの出来上がり」という意味。これを8年間、探し続けてきたわけです。長い道のりでした。バカみたいですよね。
ご飯は鶏を茹でたスープに生姜をいれて炊きました。タレは中華風ではなくて、ゆずポンで和風にしたのですが、これが思ったよりマッチして美味しかった。
美味しい蒸し鶏を食べたいと試行錯誤して、低温調理器(この場合は素材を真空パックして湯に沈める)を買ってのめりこんで、そして結局は「お湯で茹でる」ところに返ってきた。
面白いもんだと思います。これにたどり着くまで8年。 (笑)
ちゃんと教えてくれる人がいれば、その日に作れるのにねぇ。これって本当に面白くて、多くの本職のレシピをユーチューブで見てもどこがポイントなのかわからないんですよね。ま、それだけに試行錯誤をしていていろいろわかったことがあったから良かったけれど、私の本音としては「その日に作れるように教えてもうらう方が嬉しい」のだ。(笑)
皮に沸騰したお湯で火を通すのも同じで、これをしないと【皮だけ火が通っていない感じがする】ことが起きやすい。
皮が好きな人は、皮だけ別に茹でて、あとで低温調理した胸肉なりもも肉に添えるのが一番簡単で間違いがないかもですね。
Let’s enjoy Sous Vide life !!!