来年の1月1日から施行される「海外所得をマレーシアに送金したら課税」という話ですが、その後、具体的な話が出てこないので【国税庁に聞いてみる】ことにしました。
どの部署に聞くべきかもわからないので、以前、CRS(海外の資産を報告するシステム)絡みで連絡があった担当に電話をしてみました。(LHDNM: LEMBAGA HASIL DALAM NEGERI MALAYSIA = Inland Revenue Board of Malaysia)です。
結論から言うと、「詳しいことはわからない」という返事。
彼らにも具体的な話が降りてきていないようで、私達が報道で知っている以上のことを彼らも知らない。いや、知っていたとしても正式な細部の決定がなされて法制化していない限り、口外できないのかもしれない。
しかしマレーシアって本当に変わっている国ですよね。新MM2Hのときもそうでしたが。
海外所得を送金したら課税って、海外所得かどうかをどうやって特定するんですかね。自己申告?真偽の程はどうやって調べる?
特定の会社や他人からの送金なら「これは所得ではないのですか?」と疑われるのはどの国も同じだけれど、「本人⇛本人」の場合はどうするんですかね。
毎月定期的に、あるいは不定期でも所得があった場合、それを【海外で溜め込む】ことをすれば、ある日ある時マレーシアに送金しても、一体どういう素性のお金なのかは本人にしかわからない。
MM2Hでマレーシアに滞在していて、資金が足りなくなったから日本(あるいは他国)から自分の資産を送金したら課税されるんですかね。実際にその金額には【最近の所得が含まれている】ことがあるにしろ、その比率は誰にもわからない。
それどころか、「マレーシアの生活費を日本の息子に援助してもらった」なんて場合は?
「借金して、それを送金してもらった」場合は?
【海外所得をマレーシアに送金した場合は課税】なんて言葉ではわかるけれど、現実問題として所得かどうかの特定なんかできないじゃないですか。
自己申告ベースでやりますってのならわかりますが。
それとですね、そもそも発端はEUの【グレーリストにマレーシアの名前が載せられた】なんてことを言っていますが、私はこれも理解できないんですよ。
マレーシア国内で課税しようがしまいが、それはマレーシアの勝手で、税率がゼロじゃ駄目で、累進課税にすれば文句が出ないとか、それに外国が言及するって「内政干渉そのもの」じゃないですか。
そして「海外所得」と言いますが、一般的に【海外での所得はその源泉国で課税される】のが普通。その税引き後の所得をマレーシアに送金した場合、【それに課税しろ】と外国が口を出しますかね?
海外と言ってもいろいろで、非課税だったり税率が極端に低かったりいろいろありますが、一般的には【租税条約を結んでいる】わけで、二重課税は起きないようになっている。だから海外で普通に課税されていれば、マレーシアでそれに課税しようとしても(簡単に言えば)【差額の納税だけ】となる。
もしもですね、「海外(例えばA国)での所得は非課税で、それをマレーシアに持ち込んだ場合、マレーシアも課税しないのはけしからん」ってなんかおかしくないですかね?
文句を言うべきなのは、マレーシアに対してではなくて「課税しない国(A国)」に対してでしょう。
「お前がちゃんと所得に課税しないから、世界からお前の国で利益を出そうと多くの企業や個人が仕事の拠点を移している」というのがそもそもの問題の出発点でしょう。昔からタックスヘイブンがやりだまに上がって、そういう優遇税制はやめにしようという動きがあったのもそれ。また、例えばアメリカは「そういう国ではアメリカの納税義務者は銀行口座も開かせない」ことをやってきた。
非居住者の利益には課税しないケースって多々あるわけで、私達がアメリカの株式や先物でのキャピタルゲイン、あるいは定期預金や債券で利益を得ても課税されない。イギリスやドイツ市場も同じ。でも居住国では課税されるのが普通ですが、たまたまマレーシアでは課税されないのが現状。
つまりマレーシアが文句を言われる筋合いって全く無くて、「税率がゼロ、あるいは低率の国に文句を言うべき」ですよね。
また、多くのマレーシア在住の方が日本が源泉の所得を持っている。それは年金であったり、不動産所得であったり、息子に譲った会社から給料をもらっていたりいろいろでしょう。
そういう所得をマレーシアに送った場合、今までは無税だったわけですが、そもそも日本で税金を払っているじゃないですか(非課税特典もあるにしても)。
もし日本が一切課税しない、マレーシアも課税しないとしても、文句を言うべき相手は所得に対して課税しない源泉国である日本でしょう。
意味がわかりますよね?
だから私としては、「グレーリストに載せられたからどうのこうの」っていうのは言い訳でしか無くて、【マレーシアの税収が少なくて慌てている】のが原因だと思っています。新MM2Hにしてもそうじゃないですか。今まで何もせずに放置していて、今頃突然、儲からないだの、もっと金持ちを対象にするなんて言い出したのも、私は「同じ根っこ」じゃないかと勘ぐっています。
きっと「歳入をアップさせろ」という大号令が掛かって、それぞれの部署であの手この手を考えて、「こんなに頑張ってます」というのを見せる必要があるんじゃないですかね。でも「頑張っているのを見せる」のが目的であって、「その案を実行したらどのくらいの歳入アップになるか」なんてのは誰も気にしていない。
新MM2Hもそうで、あれは「絵に描いた餅」でしかないのは誰にでもわかるじゃないですか。今までみたいなゆるゆるな基準でも儲からないのに、基準を大幅に上げれば利益も増えるなんてありえない。「我社の利益が少ないから、大幅値上げをしよう」というのと同じで、それでどうにかなるなら苦労する人はこの世界からいなくなる。
で、この「海外所得に課税する」なんてのも、発想は褒められるのかもしれないけれど、「どうやるか」なんてことまで考えていないのがミエミエでしょう。
それも来年の1月1日に施行だなんて、マレーシアはお尻に火がついちゃったのかなとしか思えません。
どちらにしても、「海外からの送金」に関しては、【お金にその素性が書いてあるわけじゃない】ですから、「所得の場合は課税する」と言っても【不可能】だと思います。
そもそも「資産とて過去の所得の積み重ねだろう」という理屈もありますが、10年前の利益だったら?20年前に相続した資産だったら?
借金だったらどうします?
あるいは「5年前に貸した金を返してもらった」のだとしたら?
それでも課税しますかね?いやいや、所得を送金した場合だけだと言うのでしょうが、所得かどうかを誰がどう判断するんです?
「借金ならOKです。課税しません」というのなら、【これは借金だ】という体裁を作るのは簡単で、何でもかんでも借金ということにしてしまえば良い。例えば、日本在住の息子でも友人でも借用証書をちゃんと渡して、送金してもらってその証拠をマレーシア当局に示せば、「これは借金じゃないだろう?」なんてマレーシア当局がいちいち調べるとは思えない。
企業だって同じで、海外で利益が出るのなら、その利益が出る部分を海外の別会社にして「海外で利益を溜め込む」のが良いんじゃないですかね。マレーシア国内の企業に資金が必要なら、増資すればオッケイ。
でもま、そんな事ができるのは適当なことが許される「個人会社」レベルで、大手の世界的にも信用がある会社ならガラス張りで「海外での所得」、そしてその中から「マレーシアの送金した額」もはっきりわかるんでしょう。
で、金額的に言えば、そちらのほうがとんでもなく大きな金額になるはずで、そもそも私達が心配するのは考えすぎで、個人のことなんか想定していないのかもですね。
でも新MM2Hでは「貧乏人はお断り」で、「真にマレーシアに貢献できる人に来てもらう」ってことですが、そういう人たちが海外で得た所得をマレーシアに持ち込んだら課税されると知ったらどうしますかね。
時期が悪いですよね。
タイの新しい長期滞在ビザでは「海外所得は非課税とする」というインセンティブをつけようとしているのに。
どちらにしても、私としては12月中にある程度の資金をマレーシアに移そうとは思っています。
そしてマレーシアで資産運用するのも考えないとなりませんが、ここにもまた疑問が出てきます。
例えば私がお付き合いで買ったCIMBのファンドがあるんですが、これは中国株ファンドなんですよ。そしてそのファンドを運用している母体の所在地は多分、シンガポールか、あるいは中国本土かもしれない。つまり、ファンドの経営母体も外国、投資先も外国。ここから出た利益をマレーシアで受け取ると何が起きるんですかね。
またマレーシアの証券会社に口座を作って、アメリカ株に投資したとしましょう。そこで利益が出た場合、マレーシアに送金したら課税ということになってしまう?そもそもマレーシア国内では非課税の利益なのに、投資対象が海外だったら課税となるんでしょうか。自分が直接、【海外で】売買したわけじゃないにしても、証券会社は【海外の証券会社とやり取り】しているわけで、海外所得に変わりはないはず。
あるいは、HSBCを通してアメリカ企業の社債を買ったとしましょう。そこから生まれる収入は「海外所得」に間違いがないじゃないですか。
あるいは定期預金にしても、銀行はその金を投資に回すはずで、投資先が海外だったら利益に課税されることになる。納税するのは運用者であって私達ではないですが、同じことですよね?当然、その分、定期預金利率も下げないとならない。(でも、そもそも銀行は海外所得は免税というのの対象外だったような・・)
本当にわけのわからない話だと思います。
でもそのうち、詳しい話も徐々に出てくると思いますので、税理士に聞くことも含めてアンテナだけは張っておくつもり。
読者の方々も何か新しい情報があったら、是非、教えて下さい。m(_ _)m