私は前立腺肥大で二度手術をするという経験をしたのはこのブログに書いたとおりですが、今、PSA値も高く前立腺肥大、あるい癌の可能性もある方がいらっしゃって、私の経験を聞きたいということですので、その件に関して。
若者のには関係がありませんが、男性も歳を取ってくるとおしっこの出が悪くなるのは普通。勢いが無くなるのはおしっこを出す筋肉が弱くなるからかな、なんて思うものの多くは前立腺の肥大によるものなんですね。
この図でわかるように前立腺が肥大してきて尿道を圧迫して出が悪くなる。この図では前立腺は左右にあるような感じがしますが、これは断面図だからそう見えるのであって、前立腺は尿道を囲むような状態で存在するクルミ大の器官。
前立腺が肥大してもおしっこの出が悪くならない人もいるようですが、前立腺が肥大するのは誰にでも起きる普通の事の様です。これを検査する方法ですが、定期検査の血液検査でPSAというのを調べればすぐにわかる。また触診(肛門から指を入れる)でもすぐにわかる。あるいはエコー。下腹部にエコーを当てます。
で、肥大しても何も問題がなければ放置でも良いのでしょうが、おしっこの出が悪くなるのはかなり問題があるようです。単に時間が掛かる程度なら良いですが、私の場合は、かなりりきまないと出ない状態にまで近づきました。またそんな状態ですから筋肉による細かな調整もできなくなります。つまり、おしっこの切れが悪いとか、おしっこをした後にチョロチョロ漏れるような状態になる。これは非常に気分が悪いです。
そしてこれを放置すると、おしっこが出来ない、出ない状態にまでなる。実はかなり昔ですが、私の祖父がこの状態になり、救急車で病院に行ったことがあるのを思い出します。また出が悪い程度でも腎臓に大きな負担が掛かるようで、放置はやっぱりうまくない。
血液検査ですぐわかるわけですが、ここで注意しないとならないのはPSA値は前立腺肥大だけじゃなくて、前立腺がんでも数値が大きくなるということ。そもそもこれは前立腺がんを調べるもののはずです。
でもPSA値だけでは肥大なのかガンなのかはわからず、その後の精密検査でそれを調べます。
その方法は上にも書いた様に触診であったり、エコーであったり。これですぐにわかるのですが、でも肥大だから安心ということでもなくてガンと併発している可能性もあるわけです。ですから素人考えは絶対にうまくないのはこれも同じで、専門医に掛かる必要がある。
ではガンかどうかどうやってしらべるのか。
私の場合は生体検査を受けました。前立腺がんの多くは前立腺の外壁に出来ることが多いそうなのですが、そこに狙いを定めて針を刺し、組織サンプルをいくつか取り出し、それを検査する方法を取ります。これも肛門から器具を入れる方法です。
私はGP(掛かり付けのホームドクター)からの紹介でブリスベンの泌尿器専門医に掛かりました。かなり有名な先生らしいのですが、
Dr Peter Swindle
彼のクリニック ← クリック
ブリスベンにはMaterという大きな病院がありますが、そこのプライベートクリニックに彼のオフィスがありました。
まずは検査から始まるわけですが、正直なところオーストラリアの医療に関して私は絶大なる信頼を持っているわけではなく、非常に心配でした。で、この先生のクリニックも非常に混んでおりまして、予約を取ったらすぐに診察、検査、あるいは手術というわけでもなく、かなり時間が掛かるのです。
というわけで、私はインターネットで信頼できそうな日本の専門医を探し、すぐに連絡を取りました。本来、日本の医者も自分のところで最初から血液検査なり触診、エコーなりと決まった順序で診察、診断、治療となるわけで、オーストラリアではこうでしたという話だけで、本来やるべきことを飛ばすことはできないんですね。
となると検査、検査の結果待ち、次の検査、治療の予約なんてことをしていたらどれだけの時間が掛かるかわかりません。
ですので、あえてそこを強調してすぐに検査をしてもらえる専門医を探したのです。そこで見つけたのが横浜の専門医で、今はそれがどこだかちょっとわからなくなっていますが、生体を取ってすぐに組織を検査に回してもらえるところに行きました。
本来これも大きな病院ですと入院となるようですが、そこでは行って触診して次の日には組織を取り出すバイオプシー(生体組織診断)手術をしたように覚えています。そして数日後にはガンの兆候は見られないという診断を電話で確認しました。
このバイオプシーですが、肛門から器具を入れて、直腸の壁を通り越してすぐ隣にある前立腺を狙ってブスっと針を刺し組織を取り出す方法です。怖いでしょ~? (笑)
その先生に聞いたところ、6箇所から組織をとったそうです。
ここで私はまた心配になってきました。本来、前立腺はクルミ大だそうですが、私の場合、かなり大きくなっておりまして100グラムを超えていた。つまり小さなミカンぐらいの大きさにはなっていたわけです。このミカンでいえば皮の部分にガンが出来るそうなのですが、たった6箇所から小さな小さな組織を取り出しただけで、もしガンがあったとしてもその組織が取れる可能性ってかなり低いんじゃないかと思ったのです。
誰だってそう思いますよねぇ。
その辺も正直に医者に言ったのですが、そこのところはやっぱり経験なのでしょう。PSA値、触診、エコー、その他の症状や状況判断から、彼はガンの心配はないと言い切るわけです。これは前立腺肥大であると。
まぁ、その辺は信じるしかないのですが、その後、オーストラリアのDr Swindleにもその結果は報告しました。で、彼としてはその日本の検査結果から何を判断するわけでもなく、彼は彼の方法でバイオプシー、生体検査をしました。
これも日帰り入院だったのですが、全身麻酔でした。そして日本の場合は出血も何もほとんどなく簡単だったのですが、麻酔が覚めたあと、結構「前」から出血していたのでびっくりしました。で、お尻の方にもなんとなく痛みが残っている感じ。でも痛みがひどいことは全く無いのは日本と同じでした。
で、この時に取った生体の数は24かな。26だったかな。
日本では6箇所だったので、随分取るんですねぇとDr Swindleに話したところ、それぐらい取らないと確率的にガンに当たるかどうかわからないでしょ?と聞き返され、まさにその通り。オーストラリアの方が理にかなっていると関心しました。(笑)
で、結果は同じく、ガンは見られないという診断。
これで前立腺肥大であって、前立腺がんではないということになって、それに合わせた治療をするわけですが、当然手術です。
ガンですと全摘とかになるらしいのですが、肥大の場合はかなり歴史のある手法であるTURPという手術(経尿道的前立腺切除術)をやるとのこと。これは日本でもオーストラリアでも全世界で一番歴史が長く、そして多くやられてる前立腺の切除方法。
簡単に言いますと、バナナの先っぽから尿道にそって器具を入れて、ちょうど前立腺の圧迫によって狭くなっている部分に到達したら、そこから周りを掻き削り取るという感じ。
なんだかかなり野蛮な手術に思えますが、前立腺の手術というとこれが昔から行われていた手法。で、結果的にはこうなります。
この手術はブリスベンのMaterという大きな病院で行われました。入院期間が短いのが当たり前のオーストラリアですがさすが日帰りというのは無理で、2泊3日の予定で入院、手術。手術は朝早く病院に入り、すぐに全身麻酔。手術室でマスクを付けられ、数を数えているうちに意識がなくなりました。で、目が覚めるとまだ数を数えたまま意識が繋がっているのが不思議でしたが、その間、何時間でしょうか。時間ははっきり覚えていないのですが、私の場合はかなり大きいので時間が掛かったようです。
この手術も前立腺肥大と言っても肥大の様子が個人によって違うこと。またそれの尿道の圧迫度も違うのでしょう。手術内容にもかなり個人差があるようです。そして私が心配だったのは、この世界中どこででも行われている手術法、また歴史的にも古くから行われていて、安全で効果があると言われている手法、TURPと言いますが、調べてみるとこれも職人芸の一つみたいなんですね。また時間を掛けて少しずつ内部を削り取る方法ですから、時間もかかり出血も多く、場合によっては輸血も必要だそうです。
そして私が一番心配していたのは、大きな肥大の場合、この手術方法では対応できないということ。私の場合、手術時には100グラムを大きく超えていましたので、ネットで調べるとその大きさの場合は開腹手術だと書いてあるので実はかなり悩んでいたのです。
でも開腹手術はせずに、普通のTURPで済みました。
実はですねぇ。これ、かなり痛いんですよ。術後の話。病室に戻ってから痛み止めが切れてきますとジンジン痛みが襲ってきます。もちろんバナナには管が通されていて非常に気持ちが悪いですし、身体を自由に動かせませんし、頭の中はこの痛みから解放してくれ~~という思いのまま何時間も過ごすことになります。
病室ですが個室を頼んでいたのにどういうわけか6人部屋で4人いました。そして全員、同じように前立腺肥大の手術。病室というより回復室みたいな感じなのでしょうね。皆さん、痛みでウンウンうなっていましたから、他の患者と一緒ってわけにもいかないのかもですね。
面白かったのは4人の内の一人、オヤジさんが痛みに耐えかねてしょっちゅう看護師を呼ぶんですよ。でも規定以上の痛み止めをくれるわけでもなく、またその看護師が見習いで患者に対する応対も慣れて居なかったのでしょう。しまいに二人で大声で怒鳴りあうまでになって、その様子を見ているだけでも気が散って私の痛みは和らいだかも。(笑)
この痛みが数日続いたら気が狂うと思っていたのですが、一晩明けてみると痛みはどこかへ消えてしまったようでした。ただ尿道に通した管が気持ち悪い。ただそれも立って歩ける様になったらすぐにはずしてくれました。
さて、帰ろうと思えば帰れる状態ですが、どうなるんでしょう。予定ではもう一泊となっていますが泊まる必要がないように感じました。で、先生の回診の時に、退院の話をしますと、いつでもOKということなので、すぐに退院しました。
ただ、注意事項として、出血が酷かった場合、すぐに救急車を呼んで近くの病院に行くようにとのこと。
怖いことを言いますよねぇ。そういう状態の患者を退院させてしまうんですから。でもそれが日本とオーストラリアの違いだと思いました。
ブリスベンのその病院は我が家から1時間ちょっとの場所ですが、当然運転は駄目と言われていますし、病院のすぐ横にあるホテルに一泊しました。このホテルはまさにその用途に使われているようで、地方から来る患者がよく利用しているようです。
自宅に戻り、3,4日も経つと何事も無かったように回復しました。嬉しかったのはおしっこの出。若者に戻ったような気がしました。
ところがですねぇ。ある日、出血したんですよ。その量が半端じゃない。で、その血を見てびっくりしたのでしょう。お手洗いで座り込んで動けなくなりました。気が遠くなって貧血状態です。大声でヨメさんを呼んだところ、ヨメさんと次男坊がすっ飛んできて、救急車を呼ぼうという話になったのですが、出血が続いている感じはなく、貧血状態も治まる感じがしたので、とりあえず抱えられるようにして近くの応接間のソファで横になりました。
救急車、救急車とヨメさんと次男坊は騒ぐのですが、ちょっと待ってくれ、また気を失って倒れたら呼んでくれと頼んで様子見。
そのまま15分ぐらいでしょうか。何事も無かったように収まりました。
出血ですが、その後何度かありました。鮮血です。で、その時には血が混ざったおしっこが出る前に真っ赤なゼリー状のものがツルンと出てきます。いわゆるカサブタなんでしょうね。これがはがれると出血するってことなのかも。
でも2週間もすると本当に何事も無かったようになりました。そしておしっこの出は絶好調!この2週間という期間は誰もが言っていましたがまさにその通りのようで、これが無事に過ぎれば大丈夫そう。
その後、何年か経った頃に、なんかおかしいなぁと感じるようになったのです。またおしっこの出が悪くなった。あの手術は一体なんだったんだと思いつつ、またブリスベンのDr Swindleを訪ねますと、また肥大しているとのこと。なんとまぁ、私の前立腺の育ちが良いこと。
じゃぁ、あのときの手術ではほんのちょっとしか削り取らなかったのか、その時になってそれが気になって聞いてみますと、先生いわく、30数パーセント削っただけとのことでした。
えーーーと思いましたよ。あんな何時間も掛けて、あんな痛い思いをして、結局削ったのは3分の1程度。ネットで調べたり、先生に話を聞いたいた限りでは一度手術すればもうそれで一生大丈夫だと思っていた私はびっくりでした。
ところが再手術ということで調べてみると、やっぱり出てきました。このTURPという手法は、肥大した前立腺で受けている圧迫を取る手術だと思えば良いってことなんですね。まぁ、肥大そのものは問題ないわけで、おしっこの出がよくなればそれで良いわけですから、圧迫している部分だけ削り取ればOKってことなのかもしれない。
でもあの時に、せめて半分まで削り取ってくれれば再発はなかったのかもしれません。でもここがやっぱり、一定以上の大きさの場合は開腹手術が必要だとか、出血が多い手術であるというところなのでしょう。私の削り取ったたった30数パーセントの前立腺ですが、私ほど大きくなっていない人なら十分な量なのかもしれないってことなのかもですね。
しかし再発してまた同じようにおしっこがチョロチョロなんてのは絶対にいやですし、また手術をするしかないのですが、再発そのものが面白くなかったし、あの痛みを思い出すとゾッとするわけですよ。
で、毎度の通り、ネットで調べまくったわけですが、ちょうどその頃、世界的に広まりつつ新しい手術方法がありました。HoLepというレーザーを使った手術法。これはTURPとまるで違う方法で、TURPは前立腺の一部を掻き削り取る方法。HoLepは前立腺がミカンだとすれば、皮を残して内部をきれいさっぱり取ってしまう方法。なおかつ、大きな前立腺でも対応できて、出血も少ないとのこと。良いことづくめじゃないですか~~。
図を見てください。こういう違いがあります。
じゃぁ、これにしようと思ってまた調べ続けたのですが、なんとオーストラリアではそれをやる医師がいない。嘘だろ~~~。でも日本でもどこでもやっているというわけでもない。
で、それをやっている病院を調べて、またメールでやり取りしました。私がピックアップした病院は
明理会中央総合病院 ← クリック
北区の東十条にある病院なのですが、まぁ調べた限りこのHoLepの実績はありそうだし、問題があるようには思えない。そしてこの病院のびっくりしたところは、まず最初メールを送ったら総合案内みたいなところへ着くわけですが、それがすぐに担当部署に転送され、なんと泌尿器科の部長自ら丁寧な返事をくれたということ。
それに喜んで、私の事情や都合、質問など書くわけですが、ちゃんとその部長が返事をくれるんですよ。これには本当に驚きました。
そして私の望むように全てが動くようにこの部長が全てアレンジしてくれました。つまり、面倒な検査じゃ何じゃは一切無しで、でもそれって本当はそれでいいのかわかりませんが、私にしてみますと前立腺肥大、そしてその検査や手術に関してはもうトーシロじゃないわけですから(笑)、できるだけ短期間の入院で、検査の結果待ちで何日も過ごさないで済むようにこの部長にスケジュールを立ててもらいました。
私としてはこの手術のためだけに日本に行くわけですから、検査をしました、その結果は来週ですとか、手術はその結果を見てから決めましょうなんて手順じゃ困るわけです。また逆に、退院が出来てもすぐ飛行機に乗るのも怖いわけで(気圧の変化)、退院後ホテルに少なくとも1-2泊はしたいじゃないですか。また大出血なんてことがあったら怖いし。
そうしたら、本来なら退院しても良い状態プラス2泊というスケジュールを部長が組んでくれたんです。病院をホテル代わりに使うわけです。(笑)
まぁ、本当に至れり尽くせりなので、この部長に任せることにしたわけです。で、日本にいってびっくりしたのは、私が覚えている日本の病院とはガラリと雰囲気が違うってこと。医療とはサービス業なのかと思わせるようなサービス精神が徹底されていて、まぁ、気分が良いこと、申し分有りませんでした。
検査も手術も順調で、出血も無ければ痛みも全くないし、術後はしつこいくらい親切な看護師さんに見守られて、またお願いすればお風呂も入れてくれて背中もながしてくれそうな親切なスタッフに囲まれて、快適な入院でした。
ただ文句があるのは一つ。ご飯。まずかった~~~~~~~~。
でも動けないのは手術日だけで、あとは病院を一歩出れば下町の商店街でしたので、好きなものを食べていました。
この病院、この部長との出会いは偶然でしたが、心から感謝していますし、もし前立腺の手術をする予定のある方にはこの病院をお奨めしたいし、そして絶対にやってもらいたいのはこのHoLepという手術。今でも昔からのTURPをやる病院は多くあります。HoLepが広がりつつあると言ってもどこでもというほどでもないかもしれません。でもこの手術法で手術するというのをプライオリティとしては一番上にしたほうが良いと思います。
その後の経過ですが、バッチグーです。全く問題なし。
参考になれば幸いです。
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おまけですが、前立腺肥大には食生活も大いに関係があるのが自分の身体を実験台にして発見しました。まず肉食が増えるとどんどん大きくなります。おしっこの出が極端に悪くなるのですぐにわかります。
またどういうわけかブロッコリーを食べるとおしっこの出がよくなります。この理由はネットで調べてもまるでわからず。大変不思議ですが肥大が気になる方は是非試してみてください。