私は単純に「唐辛子は辛いもの」という感覚しかもっていませんでした。ですから最近、自分が唐辛子にハマって恐ろしいほどの量(一味とくらべて)を使うようになって、どうかしちゃったのかと我ながら心配でした。また世界には狂ってるとしか思えないほど辛いものを好きな人、国が存在するわけで、なぜそんなことが起きるのかそれも不思議でした。
でも調べてみると段々わかってきました。
そもそも「辛いもの」という固定観念が理解の邪魔をしていて、唐辛子から「辛さ」を引いて見た場合、なんと糖度も高く、旨味成分も多いのがわかりました。へ~~~なんてもんじゃなくて、まさかトマトより甘い唐辛子があるなんてウソみたいです。
以下の引用の出典はすべて「月刊現代農業」
じつは赤いトウガラシには旨み、甘み、酸味と香りがたっぷり含まれていて美味しいのだ。
例えば、我々が長野県北信地方のトウガラシ在来品種「ぼたんこしょう」の成熟果実を使って計測したところ、旨み成分であるグルタミン酸の含量が163.3mg/100g、糖度(ブリックス)が8.2となっており、旨味と甘味を兼ね備えていることがわかった。ちなみに、グルタミン酸を多く含んでいるトマトが同じ方法での計測で232mg/100g、糖度は一般に5~7とされているので、旨味はトマトより劣るものの甘味は同等かそれ以上ということがわかる。
旨味に関しては、
トウガラシ果実を乾燥させることによって新たな美味しさが生まれることも知られている。メキシコ料理では日本の第一人者である渡辺庸生シェフに以前お聞きしたところによると、メキシコの乾燥させたトウガラシから、とてもよい出汁がでるので、メキシコ料理にとってトウガラシは辛味付けだけではなく、日本のカツオ節やコンブと同様の意味合いを持つのだそうだ。
私は唐辛子は辛いだけじゃなくて、出汁がでているみたいだと何度か書きましたが、やっぱりそうだったのだと確認できました。確かに美味しさという点ではシシトウも美味しいしピーマンも同じ。
そして唐辛子はなぜ辛いのかの考察も面白いと思いました。生き物は進化の過程で様々な能力を得、形態や色を変えてきたわけですが、唐辛子としては子孫繁栄の為に種子を広い範囲に飛び散らさなくてはならない。普通それには昆虫や鳥類、小動物が関与するわけですが、
科学雑誌の中ではもっとも権威のある『ネイチャー』に掲載された論文によると、それは鳥とトウガラシの関係によるとされている。トウガラシの種子は薄くて、いかにも弱々しい。この種子を、例えばネズミが食べると、歯で囓られる上に、哺乳類の複雑な消化器官を通過することで、糞と一緒に排出された種子の発芽能力はなくなってしまうことが多い。
一方で、鳥は果実ごと丸呑みしても、哺乳類より簡単な消化器官なので種子は傷つかず、糞と一緒に排出された後に芽を出すことができる。その上、鳥はその翼により、ネズミより遥かに行動範囲が広いので、野生トウガラシにとっては生きた種子を広範囲に運んでくれるベストパートナーといえるのだ。
そこで、野生トウガラシはネズミには食べられないで、鳥だけに食べてもらうように進化する道を選ぶことになる。その手段が「辛味」の獲得だったのだ。じつは鳥はネズミと違ってあまり辛味を感じない。野生トウガラシはそこに着目し、ネズミなどの哺乳類が強く感じる「辛味」という特殊な味をその果実に持つことで、鳥だけに食べてもらえるように進化してきたのだ。
人間にとっての唐辛子ですが、辛味成分のカプサイシンが理由の辛味とは「痛み」であると。これは旨味を含めた我々が感じる「5つの味」とは全くの別物で、それがキッカケでアドレナリンが大量に放出され、いわゆる「戦闘状態」になる。これはスポーツで我々が良く体験する「緊張感」「ドキドキ」で非常に気持ちの良いもの。ってやっぱり「麻薬」「覚せい剤」みたいなところがあるんじゃないかと思いますが(笑)、血液の循環も良くなりますし、あの運動後の爽快感みたいなものも出てくるんでしょう。
またカプサイシンは「食欲を抑える」働きがあると。まぁ戦闘状態ですからそんなもんだろうと思いますが、ますます覚せい剤に似てきますね。(笑)
そして痛みを感じてアドレナリンが大量に出て興奮状態になると、それを抑える脳内物質である「エンドルフィン」も分泌され、これはモルヒネと同等と言われるホルモンですから、底しれない「幸福感」が出てくるのかもしれませんね。もしかするとこれが「唐辛子中毒化」の一番の原因かも。
良いことずくめみたいな感じがする唐辛子ですが、唐辛子の危険な部分は専門家が指摘していますから注意が必要なんでしょう。でも信じられないぐらい大量の唐辛子を使ったり、またとんでもなく辛い唐辛子が存在しそれを常食する国や人々が長い歴史の中で存在し続けけているわけですから、大した問題はないのかと思ったり。
でもま、どちらにしても「唐辛子」=「麻薬」という考え方は当たらずとも遠からず。(笑)