私は鶏の唐揚げは大好物。こんなに美味しい物はないと思うし、手羽は手羽、腿は腿、ドラムスティックはドラムスティックでそれぞれ違う趣があって本当に面白い料理だと思います。ただし、胸肉だけはパス。(笑)
でも私はなぜかケンタッキーフライドチキンが駄目なんですよ。美味しいと思ったことがありません。でもどこがどう美味しくないかという説明が出来ないんですが、私には合いません。
で、KFCですが、これが認知されだしたのは1960年代だとのことですが、では元々アメリカではどんなフライドチキンがあったのか、あのKFCの「(特許をとった)圧力釜で揚げる」という方法は昔からあったのか。そんなことが気になりました。
そもそも唐揚げと圧力鍋って、私の中では全く結びつかないんですが、生の鶏肉に衣をつけて揚げるのではなくて、茹でる、あるいは蒸してから揚げることがあるのは知っていました。見た目は同じでも食べてみると肉質がまるで違うからわかりますよね。中華でも茹でた鶏肉を素揚げする料理があるようで、気にはなっていたんです。
そんな時にレシピを発見。ユーチューブの中の動画ですが、私が尊敬している料理人のレシピです。
彼が子供の頃に食べたレシピで、隣に住むおばさんがフライドチキンを作るアメリカのチャンピョンだったこともあるようで、それの改良版です。まずは圧力鍋で蒸して柔らかくしてから揚げるという方法。
彼は「昔のフライドチキンは美味しかった」のにKFCの広がりによって脂ぎったのが増え、おかしくなったと言います。だからこの方法で作ればKFCより美味しいと。
そこまで言われたら同じように作るしかありませんよね。この動画で言っている方法とほぼ同じレシピで作りました。違うところは調味料、ハーブ類ぐらいかな。彼が言っている「絶対に入れないと駄目なポレンタ」も入れました。ポレンタとはとうもろこしで作ったイタリアのお粥みたいなもので、その材料を衣に使うわけです。
出来上がったのはこれ。衣はパリンパリンで歯ごたえはバッチリです。でも思ったほど美味しくない。(笑)
使ったのは最近気に入っている骨付き皮付きの腿肉。これで600円ぐらいかな。
これを圧力鍋で蒸します。お湯にはミレポアやニンニク、ハーブやスープストックの素などを入れる、かなり贅沢な蒸し方。(笑)
蒸す時間は圧力をかけて30分。そこまでやるか?柔らかくなりすぎるんじゃないかと思いましたが、レシピ通りにきっかり30分とし、その後鍋は流水で急冷して中身を取り出します。このまま水気を取り、乾燥させます。
レシピではこれを作って冷蔵庫に保存しておいて、食べたいときに揚がれば良いようなことも言っていましたが、私はそのまま放置ですぐに全部調理することにしました。
これを揚げるわけですが、卵は白身だけを使い牛乳と合わせる。それを付けてから小麦粉、プレンタ(とうもろこし)、その他ハーブ類を入れた衣をつけて揚げるんですが、この衣に「ベイキングパウダー」(ベーキングソーダ、重曹ではない)を入れる。
揚げ時間は約3分程度。温度は170-180度。
これをオーブンに入れて70度で10~20分保っておきます。これは揚げ時間が3分ぐらいと短いですし、蒸してあるから火はしっかり通っているものの内部の温度が低い、汁が全体に回っていないので、オーブンで寝かせるの必要があるのでしょう。
それを切ってみたのがこれ。ジューシーさもなければ身も柔らかくありません。でも衣は美味しい。(笑)
KFCみたいに油がギトギトってことはなくて、その部分は良いのですが、身がパサパサではないにしろ、柔らかくてジューシーというのとはかなり違います。まさに時間が経ったKFCのフライドチキン。これなら出来立てのKFCの方が間違いなく美味しいくらい。
残念でした~~~~~。
でもどうしてなんでしょうね。実は揚げ過ぎかなと思うところもありました。またオーブンも70度じゃなくて120度ぐらいにしてしまい、中で油がパチパチ音を出していましたから、どんどん水分が飛んだのでしょう。
でもですね、揚げる前の時点でも肉は冷えていますし、硬い感じがしたんですよ。
30分も蒸すってのに問題があると私は考えています。
そもそも中華で言う「蒸鶏」って茹でてるんですよね。それは蒸すと硬くなるから。つまり、温度が高すぎるわけで、ましてや圧力鍋ですと内部は120度を超えるはずで、タンパク質は凝固を始め、水分を出してしまう分水作用が起きる温度をはるかに超えています。その境界温度は私は68だと考えていて、120度じゃないにしても80-90度でも長時間調理したらパサパサになっちゃう。
そんなことはわかっていたのですが、肉ってタンパク質が硬くなって分水作用が起きてから、今度はまた柔らかくなるんですね。そして水分を取り込む。だから圧力鍋で煮込むとフニャフニャになるわけで、高温で30分蒸すとそういう風になるのかもしれないと想像していたんです。
でもそうはならなかった。水分が出てしまい、硬くなっている。そもそも水分を吸い込むようになっても蒸しているわけですから、良い味が水分とともに抜けてしまったあとに、蒸気のなかの旨味を取り込むってかなり難しいんじゃないかと思うんです。で、そういう結果になった。
やっぱり私としては高温で蒸すってのは私の頭のなかの理屈で考えても良さがわかりませんし、また、この調理方法ってアメリカでは100年の歴史があるそうですが、その当時には「低温調理」という概念がフライドチキンと結びついてはいないはずで、彼らは「低温調理をしてから揚げたほうが美味しい」ということに気がついていなかったんじゃないかと思うんです。
またそもそも、ステーキにしてもそうですが、焼き過ぎのパサパサなんてのがついこの間までアメリカでは普通でしたから、あの当時のものを再現しても意味がなさそうです。
ということで、どうせやるなら低温調理をしたものを揚げる方が良いと思います。でも本当はそんな面倒な事はせずに、普通に揚げれば良いのでしょう。
ところがですね。もも肉も骨が付いているとか、骨なしを切ったもの、あるいは手羽だとか、胸肉はもちろんのこと、火の入れ方って非常に難しいんですね。また、前の日記に書きましたが、骨付きの場合は「血」や「骨髄液」の問題があるんですね。肉の火の通し加減は完璧でも、中から赤い汁が出てきますから。また骨の周りは赤いまま。これって牛ならまだしも、鶏で「血がしたたる」のが美味しいという感覚はありませんから、どうしても火を入れすぎるんですね。
プロはこの辺をうまくやるんでしょう。血の赤い色は消して、ジューシーで柔らかい肉質を保つ。
でもそんな芸当は私にはできませんし、使う肉の大きさも、油の量や温度も正確に作っているわけじゃありませんから、たまに美味しく出来てもそれと同じものを常に作るのは不可能。
鶏の唐揚げも奥が深いですね~。みんな好きですから、それだけにこだわりもあるからややこしいんですね。
でも私が思うのは、「骨付きではない肉」を「低温調理」できっちり調理して、それを短時間で揚げるのが「多分」ベストだろうと思っています。そして何度作ってもブレが少ないと思います。
素人の私が料理を作っていて難しいと思うことは「同じレベルを常に保つ」ことです。その時その時、成功だ~~、失敗だ~~なんてのは料理じゃないですもんね。それは時間と経験が解決するはずですが、そんなチンタラしたことはやってられませんし、初めて作る料理だったらどうにもなりません。
そこをどうにかしてくれるのが「低温調理」の良さだと私は思うんです。
しかし、もう鶏を蒸して使うのはやめようと思います。ましてや圧力鍋でなんて・・・・・・。でもKFCは圧力鍋で揚げてしまうということで、時間の短縮と火入れの確かさを確保したのだと思います。
実はですねぇ、ウールワースの肉売り場で「ローストチキン」を売っていますよね。彼らはそれとは別に「手羽」の揚げたものも売っているんですね。私はそれに今まで全く気が付かず、先日はじめてそれを食べたのですが、その美味しさにぶったまげました。ちょっとだけ中華味なんですが、中がまさに茹でたように柔らかいんですよ。普通に揚げたりローストしてもあの肉質にはならないはず。
ということで、調理場を観察していたのですが、やっぱりそれはローストしているのがわかりました。揚げてはいない。つまり、一度火を入れて調理した手羽に衣をつけてローストしているんですね。
これはこれでその内、真似てみる予定。 (笑)