糖質制限で大豆粉を使う人が増えているのがネットを見ているとわかりますが、大豆粉にもいろいろあるんですね。
私が大事だと思うポイントは「失活大豆粉」かどうかということ。何を失活しているかというと酵素。この酵素の働きで大豆特有の青臭さやエグミが出るわけで、この匂いがあるままだと大豆粉を小麦粉などの代替品には使えないはず。
匂いのする大豆粉(失活処理をしていない)を使って、こりゃダメだなんて書いている人も少なくないので、自分でその「酵素を失活させる方法」を書いておこうと思います。
失活方法は2つあるようで
◯ 加熱する
◯ 酸を使う
これは私の尊敬する(笑)大豆粉使いの大先生のサイトに書いてあります。
失活処理 : [キッチンは実験室]~Experiment in the kitchen
彼女の方法は
大豆粉を熱湯で溶き、更に酢を加え失活処理を行っています
・・・酵素は70℃の熱を数秒加える事で活力を失うのですが
(※加熱しすぎると「熱変性」を起こし大豆粉の性質が変わってしまいます)熱湯を加えるだけでは大豆粉全体を70℃にはキープできないので
更に念押しの酸(=酢)を加えています
酢ですが、彼女は「L-酒石酸」を使っています。クリームタータ-(ケーキ材料を売っているところには必ずある)と呼ばれるのがそれですね。彼女はこれを「ダメ押し」の為に使っているのだろうというのが下の特許を見るとわかります。でも温度を上げれば大丈夫そう。
温度とか加熱方法に関しては「日精オイリオ」の特許を見ると詳しく書いてあります。この特許は「大豆微粉末を含有する菓子」の発明。(こういう菓子を製造販売すると特許侵害になるってことなんですかね)
◯ 80度~140度の温度で加熱することによって酵素を失活させることが出来る。最も好ましいのは90~130度。140度を超えると風味を損なう場合がある。
◯ 加熱方法は特に限定しないが、直火による加熱よりも、2 k g / c m 2 以上の圧力での高圧水蒸気処理や熱水浸漬処理、熱風処理などの方法が望ましい。
要は加熱方法はどうでもよくて、90度程度の加熱をするってことでしょう。ですから上記の大先生の「熱湯を使う」のもありだし、他の方法でも良いんでしょう。ただ、彼女は70度を維持するのは難しいと(熱湯を入れるだけだからでしょう)。この特許で言うとこの70度という温度では低すぎて完全に酵素を失活させることはできない(だから彼女はL-酒石酸を使う)。でも彼女は「加熱し過ぎると」「熱変性」を起こして大豆粉の性質が変わってしまうと書いている(その温度は?)(チンすれば良さそうだけれど温度調節がうまくいかない?)。
この特許は「大豆粉を使ったお菓子」の製造特許ですから、これと似たようなものを製造販売するのは特許侵害となるのでしょうが、個人が作るぶんには問題がないはずで、特許には細かく書いてありますし、これを真似すればかなりのものが作れるってことじゃないでしょうか。またアイデアも浮かぶかも。
その特許 ← クリック
また「くまもと農業アカデミー」の研究報告としてこういう文書があります。
一般的な大豆にはリポキシゲナーゼ(酵素)が含まれ、大豆を水に浸漬したときの青臭さの原因物質が生成される。また、その酵素や生成物質の影響で、パンや蒸しまんじゅうの水分として豆乳を使うと小麦粉のグルテンの形成を阻害すると考えられ、食感や膨らみが低下する。きな粉は、大豆を焙煎した後、粉砕したもので、香ばしい香りが和菓子を中心されてはいるが、その香りと色、粉っぽさから主原料として利用できる食品は限られている。
大豆に含まれる栄養価や機能性成分を活かし、さらに大豆特有の青臭みを抑えるためには、生大豆を熱湯中で「茹でる」または、蒸気で「蒸す」ことにより、リポキシゲナーゼを失活させることができる。この方法は、直火加熱手段とは異なり、熱水分が大豆の内部まで良好に浸透するため、リポキシゲナーゼの失活が簡易に確実に行われる。また、リポ欠大豆として「エルスター」も開発されているが、上記の方法を用いると従来のどのような品種の大豆であっても、リポキシゲナーゼを失活させることができる。その後、水に浸漬して大豆ペーストにしたり、再乾燥後粉砕して大豆粉にすると幅広く加工食品や菓子等に利用範囲が広がる。このようにして製造した大豆ペーストや大豆粉は、生大豆の栄養成分とほとんど変わらない。