ヤクルトを嫌いな人って聞いたことがないし、我が家はみんな大好き。
でも買ってきません。高いから。
先日は密造大作戦用に5本買っておいたのが、冷蔵庫を見たら2本しか無い。誰が飲んだのか聞いたらヨメさんが1日に3本飲んだとのこと。ったくよ~~と思うけれど、私だってあれば一日に3本ぐらいは飲んじゃうし、足りないぐらい。ってことは家族皆で飲んだら、ヤクルトだけで月に300ドルぐらいは行っちゃいますね。
買ってきたのはこのタイプ。Liteで糖質がちょっと低いもの。これで5ドル以上します。
ということで密造計画開始!!
ヤクルトはどんな乳酸菌が使われているかですが、パックにも書いてあるように Lactobacillus casei Shirota とのこと。シロタ菌と言われるラクトバチルス属カゼイ株の一種ですね。この菌は
◯ 耐酸性 =胃液や胆汁でもほとんど死滅せず、胃腸を通って最終的には便の中にも存在する
◯ 通気嫌気性菌 =酸素があってもなくても増殖する
◯ アルカリにも強いと言われている
ヤクルトの生みの親である「代田 稔 博士」が1930年、酸性度の強い培地で育つ菌を探し、特に耐酸性が強かったのがこの菌で、博士の名前をとって「ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株」と名が付けられた。
さて、これは乳酸菌ですが、乳酸菌って乳がないと駄目ってことじゃないんですよね。日本古来の漬物も韓国のキムチも乳酸発酵で、乳がないところでも増殖する種類はいくらでもある。ソーセージのサラミも同じ。まぁ、餌は「糖質」ってことなんですが、このヤクルト菌と呼ばれる菌はどうなんでしょうか。
ヤクルトやカルピスにしても乳製品のような気がしますが、ヤクルトは乳製品じゃないんですね。乳酸飲料とされている。これは乳製品としての無脂乳固形分が3.0%未満であるから。ここのところはあとでかなり重要になってきますので、忘れないでください。
ヤクルトってそもそもどうやって作るの?ですが、ヤクルトオーストラリアにかなり細かく製造工程が書いてあります。
これを見ますと結構細かく書いてあります。重要な部分だけ抜粋しますが
◯ スキムミルク、砂糖、ブドウ糖を水に溶かす。
◯ 37度で培養する。(時間は書いていない)一定の菌密度に達するまで培養する。
◯ 柑橘系のフレイバーを付ける。
◯ 水で1対1で薄める。
ちょっとこれを見ていきますと、ヤクルトって乳由来の製品じゃないって感じますね。ネットを調べますと乳成分はかなり低いと書いてあるところがあります。でも乳酸菌ですから一般的には乳由来だと勘違いするし、キムチの汁みたいだったらこんな高い金を出して誰も買わない。だからどうしたって乳製品の様な、いかにも栄養タップリの乳を連想するような商品にする必要がある。でも原価も高く管理が大変な乳はつかわず、スキムミルクをちょっと入れるだけで十分なんでしょう。この菌は砂糖とブドウ糖を主な餌として増殖する。
ヤクルトを培養するにあたり、10年以上前にやった時にはスキムミルク(粉ミルク)を買ってきて砂糖を入れて作りましたが、今回色々勉強しまして、別にスキムミルクである必要もなく、でも乳が入っていた方が良いかもしれないので牛乳を使い、そして砂糖も足してみました。
使った牛乳はこれ。
これを83度で15分ぐらい(適当)殺菌しました。このボトルに入ったままです。それを流水で冷やし、人肌の温度になったところでヤクルトを2本投入し、振って混ぜて、37度で培養しています。
ありゃ、この写真は83度で消毒している時の写真ですわ。今は37度にしています。低温調理中。(笑)
多分これで12-18時間ぐらい培養すれば出来上がると思うのですが、作りながらいろいろヤクルトのことを考えていたんです。で、もしかしたら我々って「ヤクルト信仰」にうまく乗せられているんじゃないかということ。
そもそも乳酸発酵なんてのは難しい化学実験室や最新鋭の化学工場の中じゃないとできないわけじゃなくて、それこそ紀元前から世界各地で行われていたわけですよね。普通のジーちゃんバーちゃん、トーちゃんカーちゃんが普通に作ってきた。それも衛生的とは言えない環境で。
ヨーグルトや乳酸発酵食品は世界のありとあらゆるところで作られていて、その方法も難しいわけでもなく、種菌はいくらでもあって家庭で培養したものが友人知人に渡り広く作られてきた。もちろん途中で雑菌が混ざり、元のものとは全く違うものが培養されていることもあるのだろうし、菌そのものも変化していくので、家庭で培養する場合にも出来上がりが変わってくるようになるとのこと。
ただこの乳酸発酵食品は酸っぱいですよね。ここがミソなんだろうと思います。多くの雑菌は酸に弱く、この酸っぱくなるということで他の菌を弱めて乳酸菌が優勢になるという特徴があるみたいですね。ナマモノを酢で〆るのと同じ効果がある。つまり酸っぱくならないタイプの乳酸菌もあるわけで、それは雑菌に弱いとされていて、酸性度を上げるためにクエン酸を入れたりするとのこと。
一般的にヨーグルトを作るときに何が起きているかというと、最初は乳酸菌も他の雑菌も勢い良く増殖するんだそうです。ただ乳酸菌が増えてくると酸性度も高くなり雑菌が弱まり乳酸菌が優勢になり、最終的には乳酸菌も増殖が止まると。これがヨーグルトで言われる殺菌能力でもあると私は解釈しています。
例えば、前に紹介したオーストラリアの専門店で売っているヨーグルト用の菌種(ブルガリアヨーグルトかも)ですが、それを使うとこういうふうに酸性度が変化するというグラフが乗っています。この酸性度が高くなるというのは乳酸菌が増殖するからで、そしてそれよって、雑菌はどんどん減っていくということが起きている。
また自らの増殖も遅くなり、止まるのでしょう。だからヨーグルトの完成は時間とか硬さではなくて、「酸性度」を計るのが普通みたいですね。ある一定のレベルになったらそれ以上は進まないわけですから。
最近流行りだしたケフィアなるものが日本国内と海外とでは随分イメージが違うのがわかりました。Kefir=ケフィアはコーカサス地方発祥で乳酸菌は数種類、その他ビフィズス菌じゃなんじゃと色々入っているから凄いと評判。そして日本では種菌から培養する方法のみが薦められていて、作ったものの一部を使って再び培養するような方法は推奨されていない。
ところが海外を見ると、昔の紅茶キノコと同じで、自分で培養している内にその元になる「カリフラワー状の物質」がどんどん育ち、それを友人知人に分けるという形でどんどん広まっている様子。さて、この手のケフィアは日本のものとは違うのか、菌の種類、比率が変わっているのか。これはわからず、闇の中。
つまりですね、漬物もそうだしヨーグルトにしてもそうだし、そもそも作るのは難しいものではないわけで、それはヤクルトだって同じだと思うんですよ。そりゃ効率的にとか、他の菌を完全に排除するとか、そういうノウハウはあるにしても、ヤクルト菌を増殖することは不可能なんてことはあるはずがないと思っています。だれにでも作れるものじゃないでしょうか。
そして非常に大事なことですが、例えば毎日キムチを食べている、ヨーグルトを食べている、ヤクルトを飲んでいる、そういう人たちが「健康になった」って話を聞いたことがあるか?ってこと。
でもま、科学的には乳酸菌が腸内で増えていれば悪玉菌もやっつけて健康になるのは間違いがないでしょう。これは我々が胃腸の調子が悪くなると飲む「ミヤリサン」とか「ビオフェルミン」も同じなわけですが、ミヤリサンは宮入菌という酪酸菌。ビオフェルミンは乳酸菌。これらは実際に効くわけだけれど、ではヤクルトを飲んだらミヤリサンとかビオフェルミンのような効能があるのかどうか。
ここは非常に疑問だと思うわけで、「ヤクルトって身体に良いんだよね」という「噂」「信仰」「洗脳」が先行しているだけで、本当にどれほどの効果があるのかはわからず。調べても「調子がよくなった」とはっきり自覚している人は少ない様子。
ま、そもそも乳酸菌ってそういうものなのかもしれないけれど、それにしては「ヤクルト信仰」って凄くない?
ヤクルト菌、つまり「ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株」を発見しヤクルトを作り販売を始めた代田博士って、科学者としての才能より商売人の才能のほうがはるかに凄いのではないかと思ったり。
ヨメさんいわく、あの大きさが良いのよね、と。あれってただの「健康飲料」とは違う「効きそうな薬」をイメージしてしまうし、子供に飲ますとしたらちょうどよい大きさなのだそうだ。
そしてヤクルトの販売方法。ヤクルトおばさんを使って世界中で販売しているけれど、あれってマルチレベルシステムとかなり似ているんじゃなかろうか。ヤクルトおばさんの「人対人」「人の輪」でどんどん売っていく。実際に知り合いにヤクルトおばさんはいないけれど、もし知り合いにいて薦められたら買いますもの。買わざるを得ないし、新製品を薦められれば試してみるし、毎週持ってきてくれたら有難うってなりますよね。
でヤクルトおばさんって最初の3ヶ月は給料制で、その後は売上によって利益(販売手数料は20%らしい)が変わる自営業と同じ形態。また販社によって違うけれど、自己仕入れ分があるようで予定の数量を売り切ることが出来ないと、あるいは在庫の賞味期限が迫ってくると、仲間同士で(賞味期限の違うものを)交換したり、自分で買い取りになるという。
でも小さな子供がいても仕事ができるように託児所を持ち、自転車やスクータの貸し出しもやっていて、それらの経費は差し引かれるけれど大体月々6-9万ぐらいの収入になるとのこと。仕事は9時から14時ぐらいまで。
こういうヤクルトおばさんにとってはマジで稼ぎたい人向けではないけれど、配偶者控除の中で楽にアルバイトをしたいとか、そういう人にはばっちりらしい。
つまり、消費者には「とんでもなく凄い乳酸飲料」という刷り込みを徹底的にして、販売者には楽に働ける環境を作り、そしてそれを定期的に客のところに届けるという「どんなに良いものでも買うのが面倒になって買わなくなる」という多くの客がそうなることを排除し、売り続けることが出来るシステム。
そしてヤクルトそのものは「乳由来の乳酸菌」をイメージする商品にし、柑橘系で美味しい味付けをし、甘くて子供にも喜ぶようにし、そしてもっと飲みたくなるようなあの小ささで「価値観の創出」に成功している。
凄いと思いません?
この商品とシステムを考えて構築した人って天才じゃ無かろうかと思いますわ。
ヤクルトが優良企業なのは決してヤクルトという乳酸飲料が良い訳じゃなくて、こういう戦略にあるんでしょう。
ではヤクルトそのものはどうなのよ?ってことになるわけですが、自分で培養するほどのものじゃないってのが真実かもしれませんね。
ま、元はといえばどこにでもある健康飲料と大差ないってことかもですね。このヤクルトの菌と同族である「ラクトバチルス・カゼイ」はチェダーチーズやシシリアングリーンオリーブにも入っているとのこと。このシロタ菌って、一番上に書いたような特徴がある菌だけれど、これは代田博士が作ったわけでもなく、最先端バイオ技術で生み出したわけでもなく、数多い乳酸菌の1つでしか無いのでしょう。
もちろん培養も難しいってわけでもなくて、乳酸飲料って良いものだからそれを広めたい。でも広めるには「良さ」だけでは広まない。だからこういうヤクルトという商品を作り、素晴らしい販売システムも作ったんでしょう。その辺の発想はマルチレベルシステムと全く同じですね。
でも作ってみる。(笑)
最後に、ヤクルトはちゃんと効果があります!!というレポートを紹介します。株式会社ヤクルト本社 中央研究所が出したもの。
「がん」や「感染症」の予防とプロバイオティクス ← クリック
こういうテストデータがいろいろ書いてあります。
でも私が思うに、これはヤクルトだから・・ってわけじゃないだろうということ。でも我々は「ヤクルトは特別で凄い」って思ってる。
カモがネギを背負って鍋まで持っている状態。(笑)
参考資料。乳酸菌の種類と効果。
おまけ。マレーシア(修正:インドネシアだそうです)の中学校でしょうか。水、クリーム(修正:フルクリーム牛乳だそうです)、(多分)ブドウ糖を使ってヤクルトの密造(笑)を授業でやっている動画がありました。