和牛ではない「国産牛」を和牛として売っている超有名店があるのは前に書きました。
そして「本物の和牛」を売っている店もある。Wmart。(この件に関してはここに詳しく書きました。クリック)
先日、パブリカのB.I.G.で本物の和牛を売るプロモーションをやっていたのも書きました。そしてその本物の和牛が激安だったと。(ここをクリック)
その本物の和牛ですが、プロモーションだったから安いけれど通常販売では多少高くなるという話でしたが、本日、パブリカに行った所、肉売り場にその和牛がないんですよ。でもいつものWagyuはある。
おかしいなぁと思って聞いてみたら、「あれはコンサイメントであの時だけのもの」との答え。いわゆるデパートなどの「催事」と同じってことね。
なんだぁ・・と思いつつ牛肉を見ていると、あのLO10伊勢丹の田丸屋に並んでいるのと同じ会社の牛肉がありました。
ゼンカイミートという日本の会社の牛肉ね。
シールの部分を拡大してみましょう。
これを見てわかるように、この肉は和牛ではなくて「国産牛」。そして交雑種でもないんですね。ということは和牛の血筋は全く引いていないってこと?ランクはKyushu BeefとあるだけでA5とかF1 Wagyuとは書いていない。
この辺は私は良くわからないのですが、田丸屋で売っていた肉は「国産牛」であり「交雑種」と書いてありました。そしてランクの場所には「F1 Wagyu」と。
この伊勢丹・田丸屋の牛肉は「F1 Wagyu」とありますから、これは普通の人が見れば「和牛なんだろう」って思いますが、これは和牛ではないのね。交雑種でハイブリッド(F1)と呼ばれる牛。和牛は日本では4種の和牛である「黒毛和牛」「褐毛和牛」「無角和牛」「日本短角種」、あるいはこの中で交わったものを「和牛」と呼ぶ。交雑種とはハーフのことで、日本では純血種の和牛とはっきり区別されていてこれを和牛とは呼ばない。もし和牛として売ったら「不当表示」で法律違反となる。でもマレーシアには和牛もWagyuも何の取り決めもないからやりたい放題。
私が前の日記に、「間違えやすい表記をしているので客は和牛だと思って買ってしまう」と書きましたが、店のスタッフに聞いてもそれを「Wagyu」と呼んでいますから、私は確信犯だと思っています。
これはB.I.G.でも同じで、「Wagyuはないの?」と聞いたら、これが和牛だというんです。でもこのB.I.G.の肉は「交雑種」とも「和牛」とも書いていない「国産牛」。血筋的には全く和牛と関係ない牛なのかもしれませんが、肉そのものはしっかりサシが入っていて和牛に見えます。
日本をバカにされたような気がしましたので(笑)、「この前のプロモーションで売っていた肉が本物の「Wagyu」で、これはWagyuではないし、マレーシアだから良いようなものの、この肉を日本でWagyuとして売ると、あなた達、捕まるんですよ」と言ったら、目を白黒させていました。
でも「これはWagyuだ」というので、私は「Purebred?(純血種)」と聞いたらポカンとしているので、「Hybrid?」と聞いたら「イエスイエス」ですと。だから彼らはハイブリッドのことは知っているんですね。でもハイブリッドは和牛ではないのを知らないのかも。ところがちゃんとこれを読んでいる読者は気がついたでしょ?この肉はハイブリッド(交雑種)でもない、もちろん和牛でもない、宮崎県産の「国産牛」でしかないんですから。シールに書いてある通り「Japanese Beef」か「Kyushu Beef」以外のことを言ったら嘘になる。
問題は価格なんですよ。この和牛でもハイブリッドでもない宮崎牛ですが、サーロインが1キロ990リンギですよ。これってチャイナタウンで偽物を高く売るのと同じ商法。
伊勢丹田丸屋のハイブリッド(交雑種)は1キロ1250リンギぐらい。これだって高すぎるんじゃないの?和牛じゃないのに。
そしてWmartで売っている「本物の和牛のA5のサーロイン」はどこよりも安い880リンギでした。なんで本物の和牛A5が一番安い?
この3種類はどれも同じ日本の会社「ゼンカイミート」の肉です。
前回、B.I.G.でやっていたプロモーションの(本物の)和牛は違う会社の肉で「にし阿波ビーフ」という会社のもの。この「にし阿波ビーフ」と「ゼンカイミート」の二社だけが日本でハラル認証を受けた会社。日本の「Muslim Professional Japan=MPJA」という一般社団法人が認証を出しています。
にし阿波ビーフの方が後発で、市場に食い込もうと頑張っているんでしょうね。B.I.G.のプロモーションの時にはにし阿波ビーフの人が来ていましたし、マレーシア側の輸入商である「J社」のマネージャーも来ていましたから。そして価格がめちゃ安。(催事だから店に渡すマージンも小さいんでしょう)
だからこの本物の和牛をB.I.G.のプロパーとして売るなら面白いことになると思ったんですよ。本物の和牛のA5なのに、わけのわからない牛肉より全然安いんですから。
でもB.I.G.では扱っていない。
なぜなんでしょうかね~~~。
って、私はデパートやスーパーの流通業界に長くいましたからわかりますが、既存の業者がしっかりB.I.G.と手を握っていて、後発組を入れさせないんでしょう。
でもB.I.G.にしてみれば「本物を安く売れる」ならメリットはあると思うのですが、ところがB.I.G.ではオージーWagyu、オージービーフいろいろを売っているわけですよ。それも凄い値段で。
つまり、安い和牛を販売するってことはそれに合わせて他の肉、オージービーフも値下げしないとならないってこと。
さてこの牛肉販売の「影の実力者」が誰なのかはわかるわけもありませんが、今の状態を続けたほうが「ごっそり儲かる」ので余計なことはしたくないのでしょう。そもそも今現在扱っている輸出業者の「ゼンカイミート」だって本物の和牛を輸出しているのに、B.I.G.、伊勢丹田丸屋、あるいは卸商が「それに似たような偽物」を仕入れてごっそり儲けているとしか思えません。
こういうことって日本でもあるわけですが、その商品を独占的に扱っている卸商が力を持っているのか、それともB.I.G.のような販売店が「肉は儲かる」のを知っていて「高い利益率」を維持しようとしているのか。それとも「業者と担当者」が手を握ってうまいことやっているのか。
少なくとも同じ会社の本物の和牛を安く売っている会社(Wmart)があるわけですから、田丸屋やB.I.G.みたいに本物ではない、つまり和牛でもなければなんでもない「日本の牛肉」はかなり仕入額も安いはずなんですね。
しかし残念だなぁ。新規参入の「にし阿波ビーフ+輸入商J社」がタッグを組んで、高い和牛市場に殴り込みをかけてくるのではないかと楽しみにしていたんですが・・。
本当に残念です。
この「にし阿波ビーフ」の本物の和牛ですが、これはWmarでも扱っていますので彼らがどんな価格をつけているのか知りたいです。私が行った時には「ゼンカイミート」の和牛A5しかありませんでしたから。
ま、とにかく日本からの和牛は「ゼンカイミート」と「にし阿波ビーフ」しか正規のハラル認証を持っていないのは間違いない。
じゃぁ、マレーシアに入っている和牛はその二社だけか?というとそうじゃないようで、シンガポール経由で入ってくるものとかいろいろある様子ですし、ハラル認証が取れていない和牛も出回っているんでしょう。
どちらにしても私達が気をつけないといけないのは「販売店も和牛、Wagyu、交雑種、ハイブリッド、ただの国産牛」に関する知識がないということ。またWagyuのグレードですが、6/8の様にオーストラリアWagyuと同じランクを付けているところもある(B.I.G.)がそれ。
販売店でこれですから、レストランの和牛、Wagyuはどうしようもないんじゃないですかね。
全てがWagyuもどきと言っても良いかもしれない。でも松阪牛が入っているのは間違いがないし(輸入商から買ったことがある)、ある和食店(BSCの厨)の和牛A5がダントツに美味しかったなんて話も耳に入ってきまして、この業界の実態がどうなっているのかはさっぱりわからず。
私としてはグルメでもないし、高価で美味しい牛肉を追いかけたいわけでもなく、本音としては和牛でもない交雑種でもない、ただの「(日本の)国産牛」で良いから、そしてサーロインだリブロースだテンダーロインだじゃなくて、何度も書いていますが、牛肉には美味しい部位、使える部位がいくらでも他にありますから、それらのマイナーな部位をリーズナブルな価格で手に入れたいと思っています。
あるいは和牛の脂身だけでも手に入れば、私は幸せ。(笑)
ではなんでマレーシアの和牛事情を調べるかと言うと、「詐欺」あるいはそれに似た行為は絶対に受け入れたくないから。こういうインチキ、あるいは誤解を誘導するような連中は断じて許せないのだ!!なーんてね。^^;
私は日本人としてやっぱり「日本の和牛」を守りたいと思うんですよ。そうじゃないとおかしなものが出回って本家本物の評判を落とすだけですから。ましてやあの会社みたいに、日本企業がそれをやるなんて最悪。儲かればなんでもOKみたいな・・・。
でもねぇ、「(世界の)寿司」のことを考えると「和牛」も同じことになるのかな・・・みたいな気がしないでもありません。
ですからB.I.G.でも無駄な抵抗をしてきました。
「こういう偽物をWagyuとして高い値段で売ると日本人にはすぐにわかるから、Wagyu表示は止めるか、本物のWagyuを売るようにしないとこの店の評判は悪くなると思うよ~~~。マネージャーに言っといてね」
なんて一言いらんことを言ってきました。(笑)
私としては、和牛ではない肉がこういう風に売られていることを多くの日本人に知ってもらいたいと思うし、また本物の和牛は「純血種」だけを言うのであって、それは「Pure bred」という呼び方をする。交雑種は「Cross bred」ということ程度は覚えて欲しい。そして交雑種は「Hybrid」とも呼ばれていてその呼び名を知っているマレーシア人は多くいること。店のスタッフも同じく。ただ彼らはそれが和牛ではないことを知らない様子。