なぜ「低温調理」が我々素人にとって良いのか

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なぜか最近、低温調理絡みの読者が増えています(アクセスログでわかる)。

嬉しいですねぇ。低温調理の良さが多くの人にわかってきたんでしょうね。

でもまだまだ一般的にはオタクの世界でしかなく、今日は簡単に良さを書いておこうと思います。

まず低温調理だの、器具を使って一定の温度を保つだのと聞くと、なんだかプロがやることって感じがしますよね。

確かに低温調理(元は真空調理)は火入れが難しいフォアグラの調理法として世に出てきたそうです。フォアグラって脂の塊で火を入れ続けると溶けてなくなってしまうような食材ですから適温で調理しないと駄目なんだそうです。同じ店なのにシェフによって違うとか、その日によって違うなんてことは許されませんので、誰にでも正確にできる「温度と時間」を探ったんでしょうね。

また大きなホテルやレストランで大量に調理する場合、ステーキにしても「同じ焼け具合で大量に作る」のって難しいんですね。でも低温調理ができる機器があればいつでも必ず同じものが作れる。スチームコンベクションオーブンを導入する店が多いのはそれが理由でしょう。また煮込みのような料理でも温度と時間を設定しておけば、夜にセットすれば次の日の朝には出来ていたり、今ではプロには欠かせない調理方法だと思います。

でもだからといってプロがやる調理方法だと思っちゃ駄目なんじゃないですかね。

我々素人だからこそ、低温調理って意味があると思うんですよ。

例としてステーキを考えてみてください。焼くのってかなり難しいですよね。フライパンで焼くにしてもどのくらいフライパンを温めてどのくらいの時間焼けば良いのか素人にはわからない。また厚みによっても違う、肉が室温になっていないとまた焼けぐあいが違う。

巷には「肉を触って焼け具合を確かめる方法」が言われていますよね。親指と人差指でOKのような形にして親指の根元を触ると柔らかいですよね。これはステーキの「レア」の硬さと同じだと。親指と中指ならミディアムレア、親指と薬指ならミディアム、親指と小指ならウェルダンだと。

これって世界中で同じことが言われていますが、本当にこれでわかります?私はこんなやり方では全く駄目です。親指と中指で輪っかを作ってミディアム・レアの焼け具合を見たいと思っても、親指の根元の柔らかさは牛肉の生肉より全然柔らかいですし。(笑)

またステーキって火を入れるスピードによっても焼け具合が違いますから、そんな親指と人差指で輪っかを作って・・なんて方法じゃだめだと思います。良く、練り物で「耳たぶの硬さ」とか言いますが、あれも同じで本当にいい加減。料理の世界って科学のはずなのに、非論理的なことが古今東西言われ続けている不思議な世界だと思います。

実際にはステーキですが、温度で言うと54-55度がレア、56-58度辺りがミディアムレア、59-60度辺りがミディアムですが、たった1-2度で出来上がりが変わってしまうわけです。

これって我々素人にはとんでもなく難しいわけで、例えば4枚のステーキを同じ様に焼くのさえほとんど無理なのね。ましてや厚さがバラバラ、いつもと違うだけでもうわからなくなって「偶然まかせ」の焼き方になっちゃうはず。

ところが低温調理だと、狙った焼き方が「誰にでも」「いつでも」「何度やっても」「厚さが違っても」「形がいびつでも」同じ様に作れるんですね。

低温調理って素材を密封してお湯に沈める「湯煎」でしかありませんから、設定した温度以上には絶対にならないわけです。細かい設定ができますので、私の好きな「レアよりのミディアムレア」でってのも可能になる。

写真で説明しましょう。

これが普通に我々素人が焼いたときに良く起こること。

これってなんていう焼き方なんでしょうか。でもま、ステーキってこんなもんだと思ってしまうんじゃないですかね。

でもこういう焼き方って私みたいなレアに近い焼き方が好きな人には問題がありませんが、うちのヨメさんみたいに赤いと「生だ~~~~」と必ず騒ぐ人には絶対に合わないんですね。他人の家や店では文句も言わずに食べるにしても、家で焼いたら「違う~~~~」って言いたくなるはず。(笑)

でも低温調理だと問題は簡単に解決します。好きな焼き方の温度で「湯煎」すれば良いだけなんですから。そしてその後、周りをしっかり焼くわけです。(この焼き方も突き詰めると難しいです。しっかりした歯ごたえのあるクラストを作ろうとすると中まで火が通っちゃいますし)

たとえばミディアムレアならこんな感じ。

これってたとえ肉の厚みが2センチだろうと5センチだろうと関係ないんですね。またローストビーフだと「肉の形がいびつ」だったらどうします?オーブンに入れて焼いても厚いところと薄いところと焼け具合は「絶対に違う」ことになりますよね。温度計で芯温を測っても無駄。ところが低温調理ですと、肉の塊が大きかろうと小さかろうといびつだろうと全く同じ様にできるわけです。

それも「いつでも同じものが作れる」のが凄くて、「この前は上手く行ったのに・・・」なんてことは起こらないのね。

また蒸し鶏も同じで、特に胸肉は温度が高いとすぐ硬くなるじゃないですか。だから60-62度で仕上げないと駄目で、またもも肉は65-67度。骨付きだともう少し温度が高くないと駄目。

こんな微妙な火入れを素人の我々ができるわけがないじゃないですか。

巷では「沸騰したお湯に入れて、再度沸騰したら火を消して20分放置」なんて言われますが、これもいい加減なんてもんじゃなくて、お湯の量、素材の量によって出来上がりはまるで変わっちゃうのね。プロがうまいのは毎日同じようなものを作り続けているからできるのであって、それを我々が真似できるはずがない。

でも低温調理をすると、胸肉、もも肉、骨付き肉それぞれ「完璧な火入れが可能」になる。ある意味、プロを超えることさえ起こり得るのね。プロは部位ごとに別々に火入れなんかしないのが普通ですから。

それと温泉卵も簡単にできます。

これも巷では「沸騰したお湯に水を足して、それに入れて10分放置」とか言われますが、お湯の量、卵の量、冷蔵庫から出したばかりの卵だったらどうします?もし一度に20個つくらないとならないとしたらどうします?

でも低温調理なら簡単で、「いつでも必ず同じもの」が作れるのね。

そして温泉卵って何よりも温度の違いで出来上がりが違うんですよ。我が家はヨメさんが好きな硬さにするので「68度で30分」なんですが、これじゃ私にはちょっと黄身が硬いのね。では一度低い67度で30分なら良いかというと、それだと黄身がちょっと柔らかいかなという感じなんですよ。たった一度の違いでこれだけ違うわけですから、低温調理器も使わない、温度計も使わなかったらどんなのができるのかわからない。

でも一般的には「温泉卵みたいなもの」なら何でも良いと思う人が多いのだろうと思うんです。

本当は自分としてはもう少し硬いほうが良いなぁとか思っても、そんなのは「作れるわけがない」と思っているんじゃないですかね。

でも低温調理をすれば誰にでも、いつでも、狙った通りに「同じものが作れる」。

低温調理って我々素人のためにあると言っても過言じゃないんじゃないですかね。

また科学的に考える人には最高に面白いのね。

何度で何分かってのは要は「化学反応」なわけですね。ステーキはなぜミディアムレアが良いかと言うと、それはタンパク質が固まり出すほんのちょっと下の温度だってことなのね。でもたった2-3度温度が高いと硬いステーキになってしまう。

タンパク質もいろいろあるわけで、それらが何度で硬くなるのか、何度でゼラチン質が溶け出るのか、脂質は?とか、そういうのを理解すると「何度で調理するべきか」ってのがわかるわけですよ。つまり自分の頭で考えた「こんな感じの出来上がり」ってのを化学的に考えるとどうするべきかの答えが出てくるのね。

逆を言えば、そういう知識がないと何度で調理するべきかがわからないから狙ったものはできないのかもしれない。

低温調理器がないと駄目なのかってことですが、私が低温調理に目覚めた頃は低温調理器を手に入れるのが難しくて、「大きな鍋と温度計」を使っていました。これでも正確さを追い求めることは出来ないにしても80点ぐらいのものは出来る。蒸し鶏も同じ。

また温度が大事だというのがわかってくると、それは野菜や魚介類も同じなのもわかってくるのね。コトコトと煮ないと駄目なものとか、圧力鍋を使うと思った通りのものが出来ないとかそういう理由もわかってくるし、なぜ角煮は蒸すべきなのか、土瓶蒸しはどういう温度で作るべきかなんてのもわかってくるのね。ああ、やっぱり料理って科学、化学なんだって思う。(笑)

美味しいものを作るにはありとあらゆる知識や経験、ノウハウが必要ですが、少なくとも「温度のことぐらいは理解する」ことが出来たら面白いと思うんですよ。それだけで家庭の料理は大化けするはず。

低温調理に関しては最低限知っておかないとならないこととか、考えるべきことがありますが、そのへんをまとめた日記があります(4年前のものですが)。興味がある方は是非読んでみてください。(ここをクリック)

Let’s enjoy Sous Vide Life !!

 
 
 

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