とんでもない基準の新MM2Hが発表され、各団体や個人、州の王様までも「見直しの要望」を出したけれど、どうも私達の期待通りの変更はなさそうな雰囲気。
内務大臣の発表の中に前から気になる言葉があります。それは「国家安全保障」という言葉。
MM2Herがどうして国家の安全保障に関係あるんですかね。私達日本人の感覚では想像もできない。
ただMM2Herは圧倒的に中国人が多いわけで、中国人MM2Herの中で私達が想像もできないことが起きているのだろうか。
今までのMM2Hの取得基準って何度も書いていますが、かなりいい加減だと私は考えてきました。
それは資産、収入に関しても「調べ方が適当」だし、一番大事な「マレーシアに来てからの収入」は一切関知しない。
資産とか収入を調べるのなら、少なくとも「過去3年」とかその証明が大事で、ま、政府系の年金に関しては優遇策があったけれど、そういう「確実な収入」ではなくて、「見せ金」でもどうにでもなったのね。
そもそも「サラリーマンが得ている所得」でもそれが十分なら申請は通ったなんてのも、私はMM2H基準の最大の問題点だと思っています。それで申請が通り、マレーシアに来た時には「その収入はない」わけですから。意味ないじゃ~ん。
つまり見せ金でも良かったのね。これは資産も同じ。
ちなみに私、姉、父、息子と我が家は4つのMM2Hビザで一族が滞在しているわけですが、それぞれバラバラの申請時に「定収を持っていた者はいない」んですよ。両親(母は2019年に他界)は年金をすでに受給していましたが、それは国民年金であって、金額的にはまるで足りない。
だから「他の収入がある」ということで申請したわけです。
金利生活というと大外れですが、我が一族は皆、小金を投資してどうにか利益を出してきた一族なので、定収もなければ、所得は安定していない。またその収入の証明も「納税証明」「給与証明」があればよいのでしょうが、私達はそのどれも提出していないんですよ。
「XXXの資産」があって、それを運用して「XXXの収入がある」のがわかる書類を提出しただけ。それも申請の時点のものだけです。これで申請が通るかどうかはわからないとエージェントに言われていましたが、4件とも同じで全く問題なく申請は通った。
普通、こんないい加減な資産や収入の調査ってないでしょう。それはサラリーマンの所得で申請を出したのも似たようなもので、一番大事なマレーシアに来てからどうなるかという将来のことは全く関係ないんですから。
私の知り合いでもこういう人がいました。彼は自営業で、収入そのものは年間800万円以上ある。資産(預貯金)はそこそこ。でも年齢も年齢で、仕事をやめようとしていたのね。でも仕事をやめても収入は国民年金だけですから、それでは「生活はかなり厳しい」と読んだわけです。
で、考えたのが「物価が日本の3分の1」と言われたマレーシアへの移住です。
店をやっている間に申請しましたので、問題なくMM2Hは取れた。そして資産は売却し、そこそこの預貯金と足してそれをマレーシアに持ち込み、3%の預金金利と年間100万円にも満たない年金で過ごす計画を立てた。
でも彼の月収は低いと言われていた旧MM2Hの条件の月収1万リンギを超えることはなかったのね。でもマレー人が多く住む地域で、ローカルのものを食べ、贅沢をしなければどうにかなるという計画。
マレーシアに渡ってから、申請時より収入は減るなんてことをマレーシアが全く想定していなかったとすれば、私はマヌケとしか言いようがないと思っています。でも現行のMM2Hの基準は単なる目安であって、「資産もそこそこ、収入もそこそこの人なら【誰でもオッケイ】と考えていた」のは間違いないと思います。だからその資産や収入が確かなものであるかきっちり調べることもしないし、将来の収入なんて全く無視した。でもそれが良からぬ人たちを呼び寄せることになる。
またダボ家の4つのMM2Hだって、確実な収入証明はなくて取れちゃったし、世の中が変動すればその収入は変化するし、当然、マイナスだってあるわけです。
過去にさかのぼって収入や資産を調べることはないし、ズルをしようと思えば簡単な基準なのね。いわゆる「見せ金」でMM2Hビザが取れてしまうってこと。
さて、ごっそりマレーシアに入っている中国人や他の国々の人たちはどうやっていたのか。
私達日本人は、そこそこ真面目な日本人を中心に考えてしまいがちですが、マレーシアのMM2Hビザのように「ザル」みたいな基準なら頭を使えばどうにでもパスできるのは「常にお金に関して頭を使っている人、他国に移住しようといろいろ調べている人たちはすぐに気がつく」のね。
中国人って大金持ちだらけのイメージがありますが、そもそもそういう人たちがマレーシアを移住先としてみるとは思えないし、もしかしたら「本国でもうだつの上がらない人たち」の良い逃げ道になっていた可能性もあるんじゃないかと。大金持ちなら海外に脱出する道はいくらでもありますが、そうではない人たちが海外に出るとした場合でも、マレーシアならどうにかなる(海外に活路を見出したい人はゴマンといる)。MM2Hの基準は「見せ金」でどうにでも出来ますから。(新MM2Hはどうなるかわからず)
実はですね、オーストラリアも1980年代に日本からの移住ブームが起きた頃、「5000万円のキャッシュがあれば永住権の取得も可能」という時代もあったのね。審査も適当で、「借りたお金を銀行口座に入れて、残高証明を取る」だけでパスしたと言う人に会ったこともある。で、その5000万円をたらい回しにして、親戚同士で何件かの永住権を手にしたと。(その後、どんどん厳しくなっていった)
MM2Hもそこまで簡単ではないにしろ、ちょっと頭を使えばいろいろな手が浮かんでくるのは同じ。
とりあえずMM2Hを手にして渡ってくる「来てほしくない部類の人たち」も多かったのかもしれない。マレーシアには中華の文化もあるし、それこそマレーシアに来てから収入がないような人でも、不法就労する道はいくらでもありそう。
内務大臣が言った「MM2Herが経済的な貢献をしていない」どころか、マレーシア政府が税金から莫大な金額を支出して維持している社会インフラがあるわけで、「マレーシアにタダ乗りしている」みたいな言い方をしたのはそれがあるからかもしれないと思ったり。
マレーシアには不法滞在者、不法就労者が多くいると聞きますが、MM2Hホルダーでもそれと同レベルの人たちが決して少なくないのを内務省は把握しているのかもしれない。
そうだとすれば、「国民の懸念がある」という意味深な言葉も理解できるし、「多すぎる中国人を止めたいのではないか」と言われていた理由も、実際にそれがあって、今回の改定の大きな要因かもしれない。
私達日本人は「マレーシア経済にも貢献している」という自覚を持つ人が多いはずですが、そうではないMM2Hが決して少なくない数、存在するとした場合、内務大臣が新条件を言いだした時の「なんだかピントが外れていると感じた改定の理由」も理解できるような気もしてきます。そして、マレーシアに滞在することもない(お金も落とさない)人も7000人いると言い出したのも、「現行のMM2Hプログラムには問題がある」ことの一つとして並べたのかもしれない。(でも参加者には何の問題もなくて、いい加減なやり方で始めて、それを20年も放置していたのはマレーシアの責任)
つまり「MM2Hプログラムは【対日本人】としては成功」でも、他の外国人の場合は成功とは言えない内容なのかもしれない。そしてその国々の人たちの数は多いとしたら、マレーシアはどうするべきか。
私が最初に新MM2Hの発表を聞いた時には、これらのことを想像することも出来なかったわけですが、あの時の内務大臣の発言、そして今の発言を聞くと、「やっぱり現行のMM2Hプログラムに問題があるのだろう」と思うようになりました。
だから、この際、リセットをしようと考えたとしても理解できるし、「真面目な日本人だけはオッケイ」ということも出来ないし、そもそも人数的に日本人はさほど多くはない。となれば「MM2H廃止」を言い出したっておかしくないはずで、でもそれよりは「マレーシアに真に貢献してくれる人たちを集めよう」と再出発するほうが理にかなっている。
でも困る人達は多くいるし、今まで間違いなくマレーシアに貢献したMM2Hもいるのだから、そういう人たちに対する救済策としては「ケースバイケースで配慮」ということになるんでしょう。でも私達が望んでいた現存のMM2Hプログラムはそのまま続行とした場合、「マレーシアとして受け入れたくないMM2Herもそのまま居座る」わけだから、それは出来ないと。
新しい条件では「更新できない人が大量に出る」のは彼らも当然わかっていて、それこそが【彼らの狙い】で「好ましくないMM2Hを追い出す為の方策としては良い」ことになる。でも大切にしたいMM2Hも中にはいるわけで、それはケースバイケースで調べさせてもらいますよってことなんだろうと。
つまりですね、私達が望んでいる「MM2Hの条件を変えるのではなくて、新たなビザを作り併用する」という方法だと、【問題解決にはならない】ってことじゃないんでしょうか。【追い出したいMM2Herが居るのは間違いない】のだろうと思います。
逆の見方をすれば、【マレーシアには帰って欲しい人達を追い出す手立てがない】ってことじゃないですかね。今までの更新は楽勝ですから。極論を言えば、たとえホームレスで低収入でもちょっと頭を使えば一生住めるシステムなのが現行のMM2H。これってまさに安全保障に関わりがあるんじゃない?
でもケースバイケースって何をどう調べるのですかね。
私としてはそれぞれが「マレーシアに貢献しているとアピールする」ことになるんじゃないかなと思ったり。マレーシアにどのくらい滞在して、不動産を持っているとか、どういう賃貸物件に住んで、どの程度の資産と収入があって、年間どのくらいの金額をマレーシアに落としているとか。
私が想像するに、上にも書いたような「現行MM2Hの基準」でさえもクリア出来ないMM2Herは決して少なくないと思っていて、それは特に「月1万リンギット以上の収入」のところ。もし国民年金で、3%の預金金利をあてにしていた人たちはアウトのはず。それでもローカルの収入と比べれば決して下流ではないのは間違いないにしても、マレーシアが望んでいる人たちではないんでしょう。
そしてマレーシアは「そういう人達には帰っていただきたい」と思っているってことかと。
でも日本人の年寄って「お金は持っている」ケースも多く、「人質の定期預金の上乗せには同意します」ということならオッケイになるのかもね。
でもそれでも我が家は真っ青です。4件分ですから。
条件である金融資産RM1,500,000を4件分となると600万リンギット、約1億5600万円。人質定期預金がRM1,000,000なら400万リンギット、約1億400万円。
月収証明も必要となれば月にRM40,000が4件で16万リンギット。年収で約5000万円以上。これってあまりにも馬鹿げていて笑ってしまうしかありません。
サラワクやサバのMM2Hはそのままで変更なしとのことだけれど、統一するべきという話は出ているし、これとていつどうなるかはわからず。
またあるエージェントは、「会社を設立する方策」も提供すると言っていますが、我が家は4件で、一人は94歳ですから簡単にはいかないでしょう。
内務大臣は「人道的なことも考慮」するようなことを言っていますが、意外に94歳のオヤジだけはすんなり更新できちゃったりしてね。どちらにしても父と同居して面倒を見ている姉の更新が簡単に行くとは思えず。
ヨメさんに「このままマレーシアに居るのは難しくなるかもだよ」と言ったら、な、な、なんとニッコリして「私は(オーストラリアの)パースに住んでみたいなぁ~。パースに行こうよ」なんて気楽なことを言っております。
でも私も内務大臣の発言を聞いて、「もしかしたらオーストラリアを脱出したのは大間違えだったのかもしれない」と考えるようになりました。
シドニーの次男坊と「釣り三昧」なんて生活も良いな、なんて思ったり。
この光景を毎日見ながら、マレーシアでの生活に夢を膨らませていた頃が懐かしい。
マレーシアに来て5年。やっぱりいろいろ見えすぎたところもあるし、そろそろ飽きてきたかな。でもマレーシアで死ぬ気でいる父を放って出て行くなんてことは絶対に不可能。
ただ少なくともマレーシアで住むことを重荷に感じることはない。と言いつつ、それをヨメさんや息子に聞く勇気はない。