日本では「贈与税・相続税」の実質的な増税が決まり、一部ではその対策をどうするかかなり盛り上がっている様子。
一番の大きな変更は「相続開始前の生前贈与は3年前まで相続財産に参入される」のが「3年から7年に変更」というところじゃないですかね。結果的に相続税の増税と同じことが起きる。
そもそも相続税ってどんな税率なのか。
一般的には「控除額が大きい」「配偶者は優遇される」ことから、あまり気にならない人も多いかもしれないけれど、不動産を持っていたり、会社経営をしている場合、相続税を払うために「不動産の売却」や「会社の売却」が必要になるケースが多い。これって「事業の継続ができなくなる」こともあって、相続税対策を考える人は多い。
古くから行われていたのは「生前贈与」で、毎年「非課税の額」を贈与し、それを続けること。(あるいはほんのちょっとだけ非課税額をオーバーさせ、贈与税を払って贈与の証拠とする)
これって相続人も多く、長年それを行うとかなりの資産を渡せるので多くの人がやっていた。また「被相続人が歳を取ったり、長生きできそうもない」場合にそれを始める家族も多い。
これに対処するために、当局は「3年以内の生前贈与は相続に参入する」ということにした。そして今回、その3年が7年となる。
これでは生前贈与で相続税を減らす作戦がほぼ封じ込められたのと同じじゃないですかね。だから世間では大騒ぎしている。
では「ある時期に、大きな贈与をしてしまおう」なんて考えても、贈与税って率がとんでもなく高いのでなかなかそれもできない。
贈与税の税率。
世の中では相続税対策を考える金持ちは多く、「タワーマンションが売れる」のもその一つだという専門家も少なくない。つまり、「時価と評価額の差を利用する」わけで、「X億円の時価でも評価額はその半値」だとしたら、相続税は「その半値が基準となる」ということでしょう。
私は日本の贈与・相続と一切関係なくなって30年以上経ちますから、その辺の現状はよくわからないものの、ふと思い出すのは「山林を使った相続税対策サービス」があると聞いたこと。山林の評価額は非常に低いのが一般的ですが、「山林を買い戻し契約付きで販売する(裏約束)」なんてのを40年近く前(笑)に聞いたことがあります。つまり、「相続が終わってから、その山林を買い戻してもらう」わけですね。
また「借金は資産から差し引かれる」わけですから、「大きな借金をして、ビルを建てる」なんてのも私が若い頃は横行していたのを思い出します。でも当人が長生きして、生きている間に「返済完了」して益々、資産が大きくなったなんていう「天ぷら屋」が私の知人にいましたっけ。繁華街にある立派な自社ビルの一階は老舗天ぷら屋。
ま、皆さんあの手この手を考えるわけで、今は今流の「これだ!」というのがあるんでしょうね。
そして海外在住者ならよく知っていることですが、「海外を使って贈与税・相続税対策をする」ケースも非常に多かったのね。
海外では「贈与・相続は非課税、あるいは低率」という国は多くあって、【日本を出てその国の居住者となれば(日本の非居住者となる)、その国の税制に従う】ことになりますから、かつては【ちょっと数年、そういう国に住む】だけで【贈与は無税で完了】なんてことがあった。この海外利用での節税で大きなニュースになったのが「武富士の贈与」じゃないですかね。香港在住の息子に2000億円という巨額の資産を贈与した。本来、これには何の問題もないはずなのに、国税局は「ダメ出し」をしたのね。「贈与税を払え」と。( ̄口 ̄∥)
当然、裁判になって、一審は武富士の勝ち。ところが二審では武富士の負け。このニュースは海外在住者の中で大ニュースになりました。香港に長年在住し、仕事もし、家族も住んでいるのに「日本の居住者とみなす」なんて冗談じゃないと。彼のケースがダメなら、多くの海外在住者もダメとなる可能性があるわけですから。
でも最高裁では武富士の勝ち。贈与税を支払うことはありませんでした。これに胸をなでおろした海外在住者は多かったのね。でも私は「二審で武富士は負けた」ことを重視していて、もし普通の一般人ならそれ以上、当局と争えるのかどうか。それどころか、実は巷で多いのは「裁判はせずに、妥協点を探す」ことで、これは一般的な税務調査が入ってややこしいことになったときも同じ。「私は正しい。間違えていないと確信があっても、裁判までする人は珍しい」んじゃないですかね。
なんで武富士は二審で負けたのかですが、これは日本の「非居住者の認定をどう考えるか」なのね。
非居住者とは「居住者以外の個人」であって、では居住者とは「国内に居所を持つ個人」であって、では居所とはという大事なところですが、「客観的事実によって判定する」という非常に曖昧なもので、長年、海外に住んでいても突っ込まれれば居住者と認定されてしまう危険性があることを「二審の結果」が示しているわけです。
当然、「住民票を抜いた」とか「外国に183日以上住んで、その国の居住者だ」としても、関係ないのね。ここで注意が必要なのは、「他国の居住者だから、日本の居住者ではない」という理屈は通用しないってこと。ここを勘違いする人は多くて、183日ルールを言う人もいるけれど、日本には183日ルールは存在しない。では両国の税務上の居住者なら、両国に納税することになるのか?ここで出てくるのは二国間の租税条約で「二重課税の防止」が生きてくる。でもこれもまた誤解が多く、「一方で納税すれば、他方での納税は必要ないのではない」のね。
これは一般的にも多く発生する「海外での所得」と同じで、「所得が生まれた源泉国で納税」するのが一般的だけれど、その所得を日本でも申告納税しますよね。でもその時に、「すでに支払った海外での税金分は【税額控除される】」だけのこと。これを「二重課税防止」という。一方に払えばそれでOK、終わりという意味ではない。
だから「自分は海外に住み、間違いのないその国の居住者である」と思っても、それはそれで、日本の当局は日本の理屈を持ち出してくるわけです。
これってややこしくて、一年中「豪華客船」で世界を回っていても日本の居住者。海外に(親の金で)5年留学しても日本の居住者。だからマレーシア在住でも日本に自宅があって、家族も日本在住、収入の源泉は日本の年金と不動産所得、日本とマレーシアを行ったり来たりして、日本での滞在も長いなんてケースは「日本の居住者と認定します」なんてことになるかもですね。だって武富士のケースでは「長男は誰が見ても香港を拠点として永住権を持ち、仕事をし、家族とともに生活をしている日本の非居者だった」のに、当局は「居住者と認定した」わけですから。
実際に、MM2Hでのマレーシア滞在って「長期旅行者と同じ」じゃないですかね。やっぱり永住権を持ち、そこで働き、生活している人とは違うじゃないですか。だから私は、もしかすると将来的にMM2Hでの滞在は非居住者として認めない、なんてことになるかもしれないと思っています。(その時は、会社を立ち上げてそこで働く形にして、就労ビザを取ればOKでしょう)
でも基本的には「日本の非居住者の場合は、日本源泉の収入ではない限り、日本への納税義務はない」のは確か。つまり、贈与・相続も関係ない。
でもその法律を逆手に取って、無税で済ます贈与を計画する人たちは多かった。
オーストラリアは「贈与税・相続税はない」ので、それを利用して贈与を計画する人は多くいたんじゃないですかね。私の友人でそこそこの建設会社の跡継ぎで、贈与を計画しているであろうと思ったことはありました。ま、誰も「実は・・」なんて言うわけがありませんが、見ていると何となく普通と違うのが見えることがあるのね。(また有名な政治家の秘書が【贈与・相続対策スキーム】を紹介斡旋していた)
オーストラリアに巨額の投資をしていた超大手の不動産会社もあって、どうしてそこまでオーストラリアに力を入れるのかに関しては「息子への贈与計画があるんじゃないか?」なんて巷では言われていましたっけ。まさに、上に書いた「武富士のケース」と同じ。でもその息子は事故死してしまったし、その不動産会社はバブルの崩壊とともに第一線から消えていった。
どちらにしても「海外を利用する」ことは可能で、「非居住者になれば日本とは無縁になる」のは間違いがないのね。これは日本の税制の根幹の「属地主義」があるからで、「日本に住めば納税義務がある。日本に住まなければ納税義務はない」という考え方。でも世界にはこれと違う「属人主義」の税制を持つ国があって、それがアメリカでありフィリピン。彼らの税制は「国民であるかぎり、どこに住んでも本国に納税義務がある」という税制。これってアフリカの奥地に数十年住もうが、日本で生まれ育って50年経とうが、アメリカ人はアメリカに納税義務がある。一切、税金がないタックスヘイブンに住んでもアメリカへの納税義務はなくならない。
そういう意味で、日本の「属地主義」って良いと思うのだけれど、海外を利用して「贈与計画」を練る人たちはあまりにも多く、それを法律的に止める方法は、かつてはなかったのね。だから資産を持って家族で海外に出て、「数年で無税の贈与が完了。そして帰国」なんてことが横行した。
で、国税局は新たなルールを作った。「日本を出て、日本の非居住者になっても【5年間は贈与・相続の日本への申告納税義務がある】と。
でもま、これとて「早く贈与を済まそう」という人たちでなければ、「5年待てば良いのね?」ということになった。(例えば大会社の跡取りには「株を譲れば良い」わけだけれど、跡取には株を買う大金はない。だから「贈与で金を作る」とか)
そして国税局はまた動いた。5年を10年にすると。
普通、その手の「贈与計画」を立てるのはその必要性があるからなはずで(相続が起きる前に実行するとか)、あるいは「かなりの高齢になった資産を持つ親とともに海外に出る」にしても、10年以内に死んだら計画はアウトなわけで、「海外を利用した贈与・相続の税対策」を考え、実行する人たちは減ったんじゃないですかね。
問題は、「税対策を考えていない人たちでも同じこと」なわけで、たとえばマレーシアに家族で移住して、「子供名義の定期預金」を作ったり「子供名義の不動産」なんて買ったら、【贈与が行われたのを日本に申告する義務がある】んですね。お金や不動産を「再婚した新妻の名義にする」なんてのも同じ。
贈与税って上に出したみたいに高税率だし、「知りませんでした」は通用しないし、「贈与はなかったことにして元に戻します」なんてことも出来ない。
あるいは残念なことに相方が亡くなってしまった場合も同じで、「マレーシアは相続税はないんだよね?」なんて言ってられないわけです。相続が発生したらそれを日本国内と同じ様に申告し、納税しないとならない。
でも、日本の非居住者となって10年以上経過していれば、贈与・相続の申告も納税もする必要はない。
ただし、日本に住民票も置いたまま、日本の居住者としてマレーシアと行ったり来たりしている人は、未来永劫、日本の贈与税、相続税から逃れられないってことでしょうね。
マレーシアに在住する日本人は減ってきているみたいですが、それでもそれなりの人数、家族がいる。でも10年以上、マレーシアに住んでいる日本人は決して多くはないんじゃないですかね。
つまり、ほとんどの日本人は「10年ルールに縛られている」はずで、簡単に贈与したり、相続があったのに日本に申告をしないと「脱税」となる。「マレーシアは贈与税も相続税も無いんだよ」なんてのは、日本の非居住者となって10年以上経たないと全く意味がない。このことを知らない日本人も多いようで、注意が必要。「うちは金持ちじゃないから関係ない」なんてのは誤解でしかなくて、改めて上の「贈与税の表」を見てください。ちょっとまとまった金額でもすぐに20%30%の税率になってしまう。
ちなみに我が家は日本を出てから30年以上経ちますし、日本には仕事も家も不動産もなく、収入もなく、日本に行くことも少なく、全く日本とは関係ない外国人と同じ。これじゃ「日本の居住者とみなされる」ことはまずないでしょう。これはマレーシアに住む私の父も姉も同じで、もう10年以上経ちましたし、贈与・相続はマレーシアでは無税だから問題なし。
ただ家庭内では問題が全く無いわけでもなくて、こんなことをブログに書くべきでもないのだけれど(このブログは情報発信が主目的ではなくて我が家の生き様の記録なので書きます)、私は父の遺産相続を放棄しています。というか、父はかなり昔から「お前にはやらない」と言う。孫にすべてやるとのこと。ま、遺書も皆で作りましたし、それはそれで良いと思っていますが、「お前にはやらない」とハッキリ言われると、息子としてはあてにはしていないもののかなりがっかりします。実際には、私には「遺留分」があるわけですが、「お前にはやらない」という意思を聞いている限り、私はその遺留分を自ら放棄しないとなりません。ま、それは私の意地でしかないのかもしれませんが、この親子関係って子供の頃から変わっていない、犬猿の仲。(笑)
どちらにしても我が家には贈与・相続税は「今現在は全く関係ない」のは嬉しいと思います。オーストラリアに住む次男も同じで、お金のやり取り、口座の名義の変更も全く何の問題無し。
海外では「相続税は縮小方向にあるらしい」ですが、そもそも「資産とは稼いで納税した残り」なわけで、相続税とは「二重課税である」という論法も間違えていないと思います。
日本では人生100年時代になって年寄りがごっそり。そして彼らが持つ資産トータルはとんでもなく莫大な額になる。歳を取れば取るほど考え方は保守的になるし、「握った金は放さない」という歳よりも多いんじゃないですかね。怖いから投資も積極的にしないし、下手に子供に譲ると自分は見殺しにされるなんて不安を持つ金持ち老人も多いと思う。
でも期間限定でも、上限を決めて贈与税の大幅減税でもしたら、日本中にとんでも無いお金が流通するようになって、景気刺激策としては良いと思うんですがね~。
そもそも、贈与税・相続税って「歳入の割合としてはかなり小さい」らしいじゃないですか。それさえも締め付けてお金を巻き上げようとする財務省って、私は異常なものを感じます。まずは企業も個人も「将来に希望を持って頑張れる環境を国が作る」のがやるべきことじゃないんですかね。でも国は皆が喜ぶ長期計画は出さず、景気が悪いのに締め付けることばかりやる。これじゃ企業も長期計画も立たないから投資は控えるし、個人もやる気がどんどん削られるばかりじゃないですかね。
私が「日本はもうダメだ」と思うのは、この日本の体質が何十年も変わらないから。常に「財政再建」が一丁目一番地にあって、出すべき金でも出し渋る。国の財政出動が必要なときでも、それは最小限で増税を優先する。大震災が起きても復興を名目に平気で増税する。国民から絞り上げるのは延々と続いていて、それを壊そうとしたあの一強と言われた安倍さんにもそれを変えることは出来なかった。そして今、安倍さんの意思を継いで、それを実行に移せる政治家はいない。
所詮、世の中はすべて自己責任だと私は思うけれど、国の援助を必要とする企業や個人は多い。でも「良い環境作り」はなぜか外国人、外国に対しては手厚くやっているという変な国。
さて、今回の改正で実際にどれだけの実質的な増税になるのか。また新たな節税法として何があるのか、その辺のことがこの動画でよく分かるはず。またそれ以上に興味がある方はこのユーチューバーの他の動画を見ればより理解が深まるはず。