FIRE(Financial Independence, Retire Early)するのににどんな条件をクリアする必要がありますか?というメールを初めての読者から頂きました。
う~~む、なんでそれを私に聞くのだろうと思いました。そのことはブログに何度も書いているし、また巷にはいくらでも情報が溢れているし、なんで今頃?それも年寄りの私に?
もしかしたら「FIREしようとする自分を止めて欲しい」と思っているのかなと思ったり。
だってもし私のこのブログの過去記事を読んでいれば、「多くの若い人たちが考える程度の金額の資産、収入があっても無理」とか、「FIREとは全て自己責任の個人事業主になるだけのこと」と私が答えるのはわかっているはずだから。
それとも過去記事を読んでいないのか。
だったとしたら、どうして私が30年以上前にFIREモドキをしたのを知っているのか?
私がもう70過ぎのジジーなのがわかっているにしても、過去にFIREしたのか、いわゆる定年退職して投資、トレードをしているのかまではわからないはず。
悠々自適に生活していると思ったのかなぁ。
一般論を書くのは簡単ですが、一般論って結局は「誰にも当てはまらない」と私は思っていて、そもそもFIREとは何かも皆、考え方が違うはずなのね。
ましてや年令によっても違うし、「稼ぐスキルがある」のかないのか、「遊んで暮らしたい」のか、それも人それぞれで、正直なところどう答えたら良いのかもわからない。
また「株式投資」「債券投資」「不動産投資」「トレード」「アフェリエイト」で稼ぐのを【遊びと同じ】ように考えているのかどうか。
単に「サラリーマンを辞める」ことをFIREだと思っているのか。
一人者と家族持ち、住む国、どんな生活をしたいのかでかなり変わりますよねぇ。
私の記憶の中で、間違いなくFIREを達成した人は一人だけです。私の中学生時代からの親友のお父さんなんですが、かなりのやり手経営者だったのが40歳を過ぎたころに、彼の会社、自社ビル、自宅を全て売り払って家族全員でフランスはパリに移住。完全な「引退」で趣味で小さなホテルを建てたり日本にフランス家具を送り込んだりしながら【遊んで】暮らしていた。その他のケースって、「独立しただけ」で、若くして優雅に引退生活をした人は会ったこともない。
ただこうやって書きながらフト思い出したのは、もう何年も前ですが、「ご主人を亡くした女性にお子様が二人」いて、「オーストラリアに移住したい」と私にいろいろ相談してきた方がいらっしゃったこと。
その時点では私はもうマレーシアに来ていたはずで(直前だったかも)、小さいお子さんがいる家庭がオーストラリアで生きていくにはどのくらいのお金が必要なのかも良くわからない状態だったので、このブログの読者で「オプショントレード」で財をなして、小さなお子さん含む家族4人でシドニーに移住した友人に聞いてみたんですよ。
私に聞いてきた女性は「自分で稼げる人ではない」様で、ご主人の遺産でどうにかオーストラリアで暮らせるのではないかと思っていた様子。つまり、遺産を「定期預金」「債券投資」あるいは不動産投資や株式投資に回して、それで生活をしようと考えていたのね。どちらかと言えば、ご主人もお医者様だったし、裕福な部類のはず。でもまだ若い。
で、そのシドニーの友人には「自分でリスクを取って稼げる人ではない」という前提で、どのくらいの資産があれば母子3人で暮らせるのか聞いてみたんですよ。
その彼の答えは「最低5億円は必要だろう」「それでも優雅に暮らすのは難しい」とのことでした。
オーストラリアって「定期預金でも利回りが高い」と知られていた頃の話ですから、その女性も「年間8%以上」で回せると思っていたはずなのね。
だとすれば、5億で年収4000万円だから、普通は十分だと思うはずですが、所得税で半分は持っていかれるので2000万円の手取り収入。これで「家を借りて」「子供二人を私立に入れて」生活をするとしたら、その当時でもギリギリというか、子供が中高生になったら教育費が跳ね上がるし、【インフレ】を必ず計算に入れないと駄目なのね。
オーストラリアってかつては「金利が高い」けれど、それは「インフレ率も高い」ことを意味していて、金利収入をすべて使ってしまうと「毎年すごいスピードで資産の価値が目減りする」ことになる。このインフレ率を何%で考えるかで試算は大きく変わるわけですが、少なく見積もって3%だとしましょう。つまり、5億円あったとしてもその3%の1500万円は確保して手を付けてはならない。そして同じ様に複利で毎年増やし続ける必要があって、それでも【プラマイゼロ】なのね。インフレ分を稼げない、あるいは使ってしまったら、あるいは元金に手を付けたら10年、20年のうちにどうなるかは中学生の算数でもわかるはず
5億を8%で回して4000万円。税金を50%払って、手取り2000万円。その中から「インフレ引当金」を捻出するわけで、それが1500万だとしたら、500万円しか残らない。
だからその500万円で家も借り、二人の子供も育て、母子3人で食べていかなくてはならない。
それじゃ良い家を借りることは難しく、二人の子供を私立に入れるのも無理で、毎日の生活も贅沢は出来ない計算となる。でもどうにか生きていくのは可能かもしれない。
だから私の友人は「最低5億円は必要だろう」と言ったのね。
その友人の説明をそのまま相談してきた御婦人に伝えたところ、【絶句】していました。(多くの人はなぜか「税金」と「インフレ」を無視して考える)
ただし、この場合でも1億円は別勘定にして、その1億は子供が成人するまでに使い切っても構わないと計算すればどうにかなるかもしれない。1億稼ぐのは大変だけれど、「使いでがある」のは間違いがないですから。
その御婦人はそれだけの資産をお持ちじゃなかったのですが、今思えば、「それで助かった」と言えると思うんですよ。
なぜなら、「金利が高いはずのオーストラリアの金利も下がってきた」し、それでも「未曾有のインフレが起きた」わけで、その近年の動きは皆さんも御存知の通り。(私達家族がマレーシアに拠点を移したのもそれが理由)
ですから、もしあの時点で、その母子3人がオーストラリへ渡ったとしても(ビザの問題もある)、この近年の金利低下と恐ろしいほどのインフレで、【彼らの生活はジリ貧になった】はず。あるいは、元金の5億円は「その額を維持できた」としても、毎年毎年、凄いスピードで価値は目減りして行くわけです。
そして私が思うに、多くの人って意外にこの「インフレの怖さ」を考えずに、「元金が減っていなければOK」と考えるのね。それは「日本はずーっとデフレだったからインフレの怖さを知らない」ってこと。インフレ率が高い場合でも、短い年月では何も感じないかもしれませんが、10年20年という年月で考えると「価値が半分以下になる」なんてことが簡単に起きるのね。
だからあの母子3人は、あの時、オーストラリアへ渡ることを断念して大正解だと思うんですよ。
でもその後、その御婦人とは連絡を取っていませんので、その後、どうして暮らしたのかはわからない。
でもま、日本で数億円のキャッシュがあれば、どうにか生き抜いたに違いないと思っています。あるいはマレーシアに来てたりして。
結局ですね、「資産が多くても遊んで暮らすのは難しい」ってことなのね。これはどの国に住んでも同じだろうと思います。でも金利所得に所得税が掛からなければどうにかなるかもしれない。マレーシアみたいに。
やっぱり「大事なのは収入」で、しっかりした収入があれば「資産なんか無くて良い」というのが私の考え方です。そもそも「使えない資産」が多くても意味がない。利用価値がほとんどない「山林」をごっそり持っているのと同じこと。
でも若い人は億単位のお金なんか持ったこともないし、見たこともなく、でももし1億2億でもあればFIRE出来るだろうなんて簡単に考えてしまうのね。だから「親の遺産」とか「不動産が高く売れた」とかで億のお金を手に入れるとFIREしようかなんて考える人が出てくる。
年金をもらっている老人ですが、例えば「年間200万円」だとしても、それを「資産運用で稼ぐとしたら元金はいくら必要」ですかね。
今まで日本はずーっと低金利でしたし、最近、あるいはこれから金利が上がるにしても「1%の金利を受け取るのは難しい」ですよね。つまり、今、2億円の現金があっても「200万円以下の収入」となる。
これで夫婦、あるいは家族3人4人が暮らせるわけがない。
「たった200万円かぁ」なんて思っても、その200万さえも資産運用で稼ぐのは簡単じゃなくて、では1千万は欲しいとなったら【10億円以上の資産が必要】となるじゃないですか。
つまり、200万円の年金をもらっている老人は「数億円の資産があるのと同じ」なわけですが、まだ若い人が遊んで暮らすFIREを考えるなら、1億、2億程度の資産があってもどうにもならないのはわかるはず。それはマレーシアみたいな国に移り住んでも同じじゃないですかね。そして「インフレの分も稼がなくてはならない」のを忘れてはならない。年寄りは長く生きることはないし、「死ぬまでには資産を使い切ってゼロでも構わない」と考えればどうにかなるのかもしれませんが。
だから「自らの手でそこそこ稼ぐことが出来ない限りFIREは無理」ってことですよね。それは「外貨投資」や「節税」も含めてそれなりの「スキル」が必要で、簡単には行かない。「海外移住」して、その地のお金に替えて高金利を享受するなんてのも私にはマレーシア以外では対象国が見当たらないし、それでも「定期預金」程度の資産運用しかしないのであれば、インフレには勝てないし、為替差損が生まれることもあって、良いことばかり考えてもそうはうまく行かない。
でも稼げているなら、資産なんかなくても良いことになる。
ところが世の中って簡単に稼げるようになっていないわけで、FIREのつもりで独立したら「今まで経験したことのない厳しい環境の中で【何十年も】勝ち続けなければならないことに気がついた」なんてことになるのが普通だと思います。
それじゃFIRE(Financial Independence, Retire Early)にならないどころか、「Retire Never」になるんじゃない?私みたいに。(笑)
「自己責任で稼ぐ個人事業主」となれば、どんな方法で稼ぐかわかりませんが、投資にしてもアフェリエイトにしても「安定して何十年も稼ぎ続けるのは簡単ではない」と思うべきで、事故や病気にあったり、歳を取れば必ず稼げなくなることも考慮しないとならない。
特にこの十年以上の「株の値上がり」で利益を積み上げて資産を大きくしてきた人は注意が必要で、【それが今後も続く】【自分には十分に稼ぐスキルが有る】と信じてしまいがちだから。もし日本の、世界の株式市場に「大きな下げ」が来て、それが続いても大丈夫かどうか。高値から下げてから元に戻るのに日経平均では34年、S&P500でも17年の月日が掛かった過去があるのも忘れてはならない。つまり、下げ相場で損切りは出来ても「利益を出す手法がない」としたらうまくない。
長い人生では「恐慌が起きたり」「大災害、大事件」もあるわけで、そんな時でも「利益を叩き出すスキルがあるか」「資産防衛、ヘッジのスキルはあるか」などの自己チェックも重要だと思います。
ましてや家族がいて、子供も小さかったら、大きくなった時の教育費が恐ろしいことになることも考慮して、それなりに稼いでやっぱり「9桁」の資産を持たなければ危なくてしょうがない。
FIREの情報を集める時に忘れてはならないことは、「FIREしてよかった」という人は【今の時点で問題が顕在化していないだけ】かもしれなくて、「失敗した人はごっそりいて」、彼らは口を閉ざして何も言わないということ。投資やトレード、アフェリエイト、そして【海外移住】【独立】【起業】も同じで、「今はオッケイ」という人達の話だけを聞いてどうするんだ?と思う。
今、大企業に勤めて収入も多く、退職金も年金もしっかり貰える人でさえ、「9桁の資産がないと危ない」と考える時代じゃないんですかね。
となれば、頼れる企業もない、国も助けてくれない「自営業者」はどうすればよいのか。
ましてや「海外住まい」をしていて、永住権もなく、就労の自由もなく、厚い社会保障やセーフティーネットを利用できないとしたら、万が一の時には日本に帰って「振り出しから再スタート」となる。でも「海外で遊んでいただけ」だとすれば、日本に帰ってからの再出発も簡単にはいかないはず。かといって、「どんな国でも構わないから永住権を手に入れる」なんてのは愚行だと思う。
世の中には稼げなくて将来に不安を持つ中小企業、個人事業主もごっそりいるわけですが、FIREとはその人達と同じ世界で頑張らなくてはならないことを意味する。また良い勤め先を探す人、正社員になれない人も多いし、これから海外から入ってくるそういう人達と戦わなければならない時代になるのに、さっさと仕事もやめてFIREするなんて、それなりの半端じゃない覚悟がない限りやるべきじゃないのは常識だと私は思います。
でも「その覚悟」があるのなら、トライするのは良いと思う。
そしてですね、FIREして数年、あるいは10年以上経って、「やっぱりサラリーマンに戻ろう」なんて思っても、その時には「帰るところはない」と考えた方が良いんじゃないですかね。でも「良い経験が出来た」と喜べるタイプなら話は別。海外移住も同じ。
私の場合は「サラリーマンになる」という選択肢をそもそも切り捨てて生きてきましたし、常に【帰る場所もない】背水の陣でした。良いときは良かったけれど、サラリーマンで安定して生活している友人知人を見て羨ましいと思ったことなんか数え切れない。
「年末に支払うべき金額が用意できない」「来年からどう稼いでいくか全く見通しが立たない」なんてことは【普通に起きること】でした。当然、「サラ金」のお世話になったこともありました。独りものならまだしも、ヨメさんや子どもたちのことを考えると夜も眠れないなんてのは毎度のこと。
【FIREしたら子どもたちとの時間も多く取れる】なんてのは「ただの幻想」かもしれない。当初は良いにしてもそれが続くのか。世の中には安定した収入もなく、「アルバイトを2箇所以上でして、死にものぐるいで働いている人」が多いのを【他人事】と考えるべきじゃないし、そしてそういう人達も「良いときはあった」はずなのね。でも「諸行無常」で良いことは続かないからそういうことになる。でも悪いことも続かない、かもしれない。
【自由】は素晴らしいし、【来年の今日はどこで何をしているのか自分で決められる人生】も良いし、何と言っても【目に見える景色が変わってくる】のね。でもその【代償】と【リスク】もしっかり考えないとですね。FIREとは「野良犬になること」と考えるのも良いかもしれない。
ただし、【人はやってしまったことではなくて、やらなかったことに悔いる生き物】なのも間違いがない。
やるならやるで、覚悟を決めて是非、頑張ってください。
私は中学生時代からFIRE(Financial Independence, Retire Early)しようと考えて計画を練っていましたが(親友のお父さんの影響)、今、【後悔は一切ない】です。それどころかそれにチャレンジしなかったとしたら、こんな面白い人生を送れなかっただろうと思う。
いやいや、私はFIREなんてそもそもしていないのね。FIREのREである「Retire Early(早期退職)」は全く出来ていないし、ただ単に「若い頃から全て自己責任で稼いで生きていく個人事業主になった」だけのこと。そういう目線で世の中を見てみると、【失敗して消えていった人】の方が遥かに多いのね。「海外移住」も同じ。生き残れたのは「自分の力」とも思えなくて、今までの長い人生を振り返ってみると「ラッキーだった」としか言いようがない。
でも私には次なる夢があって「Retire Early」は諦めざるを得なくて、死ぬまで輪っかの中で走り続けるネズミみたいなもの。「優雅な悠々自適の老後」なんて私にはない。でもとりあえずの「Financial Independence」は早い時期にどうにか達成できましたから、ラッキーだったし結果オーライ。
野良犬生活も覚悟を決めればそれなりに楽しくて、我が家の長男も、そしてシドニー在住の世界4大監査法人の一つで公認会計士をしている(高収入の)次男坊も、近い将来【野良犬として自由に生きる】ことを決めた。その理由は「家族との生活をもっと大事にしたいから」とのこと。自分は野良犬として絶対に生き抜けるという半端じゃない自信と覚悟がある男。
我が家は全員揃って「野良犬」家族となる。やっぱりゴールドコーストに住んで育った思い出が強いからかもしれない。野良犬の生き方は大変だけれど、あの「美しい空と雲、優しい風、綺麗な海」の環境下で自分の命よりも大事に思う子供達を含めて【深呼吸をしながら自由に生きていたい】と思うのでしょう。私がそうであったように。
ヨメさんも「ゴールドコーストが世界で一番好き」という。それを無理やりマレーシアにつれてきてしまいましたが、ダボ家の全員のためにそれが必要だと説得しました。今、年老いた私達は、これからの息子たちや孫たちのために全てを捧げることも厭わない。そうすることが私達の喜び。
頼りない小舟に乗って小さな息子二人を含む家族4人で大海に漕ぎ出しましたが、本当に楽しくて素晴らしい人生が送れたと、今、目には見えない「何か」に心から御礼を言いたいぐらいです。
「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」
しっかりした覚悟を持って、絶対に諦めなければ人生ってどうにかなるもんだと思ってます。そしてうまくいくようにするには「何が起きても絶対に諦めないこと」しかない。
この曲は私にどれだけの力を与えてくれたか。もし「迷い」があったら是非、聞いてみてください。
「このままでは終われない。まだ夢の途中、諦めない・・・」
気がついたら70過ぎのジジーになっていましたが、私個人としての心境はこんな感じです。
男児立志出郷関
学若無成不復還
埋骨何期墳墓地
人間到処有青山
男児志を立てて郷関を出づ
学もし成る無くんば死すとも還らず
骨を埋むる豈に惟だに墳墓の地のみならんや
人間到る処に青山(墓)有り
いつでも死ねる覚悟があれば、この世に怖いものなんて何も無い。ただし、愛する人達を不幸にすることはできない。問題はそこのみ。