私に新しいあだ名がつきました。それは
「温度男」 (笑)
ヨメサンが命名したのですが、この数年、私が低温調理やあるべき温度に拘っているからでしょう。
しかしまぁ、温度男なんて・・・・
でもま、私の料理は料理じゃなくて科学の実験をして遊んでいるのと同じですから、そのあだ名もその通りなのかも。ただ最近はその方面の知識もかなり増えてきて、今では「へぇ~~」とか「なるほどぉ~~」なんて感激することも減ってきて、温度管理が調理の肝であって、どういう時にどうするべきかは私の中では「常識」になりつつあります。
ただ私は調理人でもないし、料理がうまいわけでもなく、プロがやっているように温度を上げたり下げたり、そして休めたりを繰り返しながら火入れをする方向で温度管理を考えているわけでもなく、あくまで素人として、簡単に、失敗をなくす方法としての温度管理でしかありません。でも料理とは科学であるというのは間違いがなくて、化学反応そのものなんですね。その理屈を理解すると、なぜそうしなければならないのか、どうしてプロはああいうやり方をするのかがわかってきて本当に面白い。そして素人でも理屈がわかれば今までとは全く違う凄いものが出来るようになる。
と同時に、いかに一般的には「迷信」「非科学的な」「嘘」「間違い」が多いのかもわかってきました。特にネットの中は酷いもんでメチャクチャだと思います。これは素人の書き込みだけではなく、プロでも根拠の無いことを平気で書いており、我々の置かれている立場の酷さにも気が付きました。
でも料理のうまい個人っていくらでもいて、彼らは理屈はわかっていなくても経験則の中から最良、あるいはそれに近いものを発見して自分のものにしているんですね。これはこれで凄いと思いますが、舌が出来ていないとそれもままならない。ところが科学的根拠がわかると、自分の舌を超えるものが作れるってことなんですね。自分では良さがわからなくても食べる人の中には違いが分かる人もいるわけですから。(笑)
ただ私が不思議に思うことは、「食べる」という行動は世界中の人が毎日していることなのに、どうして科学的な裏付けもないメチャクチャなやり方が横行しているのかということ。こういうことってビジネスの社会ではあり得ないですよね。男の視点で見ると不思議な世界にも思えます。多分、家庭料理という世界では競争原理が働かない(論理的思考の欠如だとは言いたくありませんが 笑)からだろうと思いますが、もったいない話だと思います。
ま、温度管理なんて調理方法の一つの要素でしかないわけで、それがわかったところで美味しい料理ができるってことでもないのですが、さて、私は次にどの方向へ行くべきか。それを今考えているところです。温度男という名前をもらった今の私としては、次の段階、あるいは次のテーマに移ろうとしている最中。
そのテーマを探すためにも「料理教室」に行ってみたいと思うようになりました。
以前は料理教室を馬鹿にしていたのですが、「迷信」を教えるようなところばかりじゃなくて、「理にかなった」調理法を教えるところもあるみたいですね。そして有名シェフがこの人、料理人?それとも化学者?みたいな論理展開で、調理の原理を明らかにし、それを土台に新しい世界を開こうとしている人達がいるのも見つけて、是非、そんな世界を垣間見てみたいと思うようになりました。
関西食文化研究会という組織があるのを知りました。これは料理人による料理人のための情報発信・交流サイトということですが、本当に面白い内容で、料理人じゃない私もこういうのに参加して勉強してみたいと思います。
関西食文化研究会 ← クリック
素人が読んでもなるほどと思うことが多く、特に「メイラード反応」に関しては素人の私でも目から鱗が落ちる思いがしました。これは例えば肉を(魚でも)火で焼くと茶色に変色しますが、メイラード反応とはこの反応のことで、なぜ肉に焼き色を付けるのか、あの茶色の焼けたものはなんなのか、それがどんな味、匂い、香りがあるのか、それをどう料理に応用するのか等。化学でその正体を知り、それをどう利用するべきか真剣にプロたちが研究しているのが面白いと思いました。特に、醤油もミソも茶色ですが、これも原理は同じだというのにはびっくり。
時代は変わって、職人の世界もどんどん変化するのでしょうが、「迷信」を科学的に解明し、その作用を利用して次のレベルにつなげる意気込みには関心しました。
メイラード反応に関するページ ← クリック
このページは基調講演のページですが、下の方のリンクで、日本料理、イタリア料理、フランス料理でそれがどのように扱われているかの詳しい話に入っていきます。
例えばビーフシチューを作るときに、まず肉をフライパンで焼き目を付けて・・・なんてことを良くやるわけですが、なぜそれをやるのかという確かな理由を知っている人は少ないと思います。多くは「肉汁を外に出さないために」にわかったようなことを言いますが、焼いた肉を煮たら肉汁が出るのが当たり前で、閉じ込められるはずがないのは誰でも気がついているはず。でも巷ではそう言うからそうなんだと言う。プロでさえそういう人がいる。
でも焼く場合には肉汁を閉じ込めることが出来るんですね。でも煮る場合には無理。でもどうして焼くのか?これはメイラード反応とは何かの理解が進めば簡単にわかること。
と同時に、最近世界的に広まっている真空調理の場合は、下手に焼くと駄目だというのもわかってくる。真空(あるいはそれに近い)状態になると、味付けが短時間に出来るのは常識ですよね。調味液が一気に回る。だから鶏の唐揚げを作るのに醤油ベースの溶液に漬け込んだりしますが、真空パックすると5分、10分で味が浸透する。
これの実験の面白い動画を見つけました。玉ねぎを使った実験ですが、真空パックするだけで調味液が一瞬に全体に回る。
つまり、肉を真空調理する場合、しっかり焼き目を最初につけたらどうなるかもわかってくる。香ばしさという素晴らしいものが、今度はそれが全体に回ってしまって、焦げ臭い、あるいは苦い肉の塊になるということ。だから焼き目をつけるとしたら弱めに、そして真空調理の後にはしっかり焼き目をつけるのが正解になる。でもネットを見ると真空調理や低温調理を薦めているサイトでさえもそんな事を説明しているところは無くて、「まず焼き目を付けましょう」という信仰に囚われているケースが多いのがわかります。これは理屈を中途半端にしか理解していないのと、そして「自分の舌」を信用していないってことだと思うんですよ。自分の舌を信用していれば、このやり方だと何か変だというのがわかるはずですから。
でもま、科学的根拠を知るだけで、どうあるべきかがわかるし、それの応用が簡単にできるということ。面白いですよね。あと、私が上のサイトを読んでいて感激したのは、「全ての行動には理由があるのでそれを知らなければならない。またそうする理由がないことはしてはいけない」みたいな教え。これは素人料理も同じだと思うわけで、どうしてそこで塩を振るのか、今じゃなくて後じゃないのか、どうしてその量なのかとかそういう疑問を持つことも大事だと思いました。
って、こんなことに興味がある人って少数派なんでしょうかね。
やっぱり私は変人の部類なのか・・・・・ (笑)