日本から海外に資産を移すのがブームになって何年経ちますかね。
私がオーストラリアに渡った1991年の時点ですでにそういう情報交換がネット(パソコン通信)で行われていましたし、もっと古い私が若い時代にも「キャッシュを香港へ持ち出す」なんて話を聞いていました。
でもやっぱりそれらは一部の人がやるレベルだったのが、いつの間にやら海外とは全く繋がりがないような人が香港などで「銀行口座を開設する」なんてこともするようになった。
資産を海外に移すだけではなくて、本人も海外に出てしまうのも増えてきましたね。香港やシンガポール、近年はドバイへ渡る大金持ちの話は結構聞きますね。私の従兄弟も結構な額の資産を作ったのですが香港の永住権を取って渡りましたし(10年ぐらい前)、国境が低くなった現代はどこに住んでいようが仕事も普通に出来るようになりましたね。日産のゴーン氏もまさにそれ。
世界を相手に仕事をする人、あるいは金融関係なら土地に縛られない場合も多く、「税金が安い国、地域」に行かないほうがおかしいのかもしれない。
そしてマレーシア。MM2Hというビザは「他国で長期に渡って住むビザを取得するケース」と比べると非常に取得が簡単。そもそも退職者の「ロングステイ向け」に出来たビザだからハードルは低い。なおかつ50歳以下でも取得が可能となれば、香港やシンガポールの長期居住ビザが取れない人がマレーシアに目を向けるのも自然の流れ。なおかつ物価も安く、香港やシンガポール、あるいはドバイよりは生活がしやすいとなれば、「税金が気になる人はマレーシアに行かないほうがおかしい」ぐらいに感じます。
アーティストのGACKT(ガクト)がマレーシアに移住したようで彼はマレーシアの良いところをメディアに出て並べていますが、本音としては「マレーシアの税制が気に入った」ってところだと思っています。逆を言えば、日本と同じ様な税制だったら来ないでしょう。日本の税務署とはいろいろあったみたいだし、彼の税制などに対する知識や思いは普通のアーティストとは違うはず。
MM2Hビザにはそれを維持するためのハードルもないに等しく、年間半年以上住まないとならないとか、毎年一度は帰ってこないとならないとか、オーストラリアの永住権みたいに「5年の内、2年住まないとならない」なんて条件もない。だから住むつもりがなくてもとりあえずMM2Hビザを取得して「放置する」ことも可能。こうやって考えてみると凄いビザですねぇ。(笑)
ま、昔から大金持ちはあの手この手を考えていろいろやるわけですが、我々一般でも気になる条約がありますよね。
それがまさに近年始まった「OECD参加国同士で【非居住者の金融口座情報を交換する】」という取り決め。
私としてはこれは関係ないなと思っていたんですよ。
そもそも私はマレーシアの居住者であって非居住者ではない。つまり「日本に住みながらお金だけマレーシアに置いてある」ような状態じゃない。なおかつこのデータ交換のCRSですが、「1億円以上の口座残高がある人」となっていたから。
ところが、先程、これもどんどん変化していることがわかりました。
「2016年12月末の口座残高が1億円以下のすべての個人口座」に関するデータが「2018年までに交換(2017年分から報告)。2回目の情報交換は(2019年9月)となっている」らしい。(要確認)
つまり「1億円以上」ってのはこの前までなんですね。
全ての個人口座って凄くないですか?残高が100万円でもデータ交換するってことですよね。
データ交換という言い方をしてきましたが、これはデータベース化されていて「国税庁はデータベースをいつでも閲覧可能」という意味の様子。
ま、それでも自分には関係ないと思うんですよ。マレーシアの居住者ですから。
でも前にも書きましたが、「自分はマレーシアの居住者である」と信じているだけで、マレーシアはそうは見ていないのではないかという心配があります。法律的に居住者か非居住者かという意味じゃなくて、このCRSのデータベースに乗せるか乗せないかを「どう決めているのかがわからない」んですね。
なぜそんなことを心配するかというと、マレーシアで銀行口座を開設する時に「日本の住所を書く欄」があるんですね(銀行によって違う様子)。私は日本に住所なんかありませんし、かつて住んでいた住所だとしても28年前の話ですよ。だから書きようがないんですが銀行のスタッフは「書いてくれ」と言い続けるだけだったんですよ。(マイナンバーや納税者番号を書く欄があったかどうかは覚えていません。ちなみに私はマイナンバーも持っていない)(適当で良いか?と聞いたらうなずくので、本籍の住所を書いておきました)
これっておかしくないですかね。「現住所はマレーシア」なのは間違いがないのに日本の住所が必要だと。
ただし、MM2HはMy Malasia Second Homeの略称。セカンドホームがマレーシアだとすれば、ファーストホームがあってしかるべきだし、それは日本人なら日本ということになるんでしょうか。
だから、もしかしたらマレーシアの銀行は「居住者、非居住者」ではなくて「何人か」を重視しているんじゃないですかね。
そもそも居住者か非居住者かという証明って出来ませんよね。MM2Hを持ち、マレーシアに住居を持つか借りるかしていたとしても「住んでいない可能性」だってあるわけですから。自宅も持ち、その住所に自分の名前で電気水道などの請求書も来るとしても、マレーシアに183日以内の滞在だったら「マレーシアの非居住者かもしれない」わけですよね。(マレーシアには183日ルールがある。ちなみに日本にはそれがない。)
でも銀行はそんな細かいことを調べて「居住者・非居住者判定」なんか不可能だし、本人の申告なんて信じるわけもなく、「日本人は日本人」ということでCRSのデータ交換のリストに名前を載せているんじゃないですかね。その方がマレーシアとしては簡単だし、「マレーシアの居住者だからリストには載せない」と決めるより、「マレーシアの非居住者かもしれないからリストに載せる」方を選ぶんじゃないですかね。もし他国から「ミスターXXXはマレーシアの非居住者で銀行口座を持っているのが当方の調査でわかっている。でもなぜその名前がマレーシアのリストには載っていないんだ?」なんてことになったらマレーシアのメンツもないじゃないですか。
逆に我々の方から「私は居住者なのにどうしてリストに載せているんだ?」というクレームは絶対に無い。そもそもそのリストは一般公開されていないんですから、我々には調べようがない。
あるいはですね、「マレーシアは居住者でなければ銀行口座を持てない」ことになっていますよね。つまり法律的には「(マレーシアの)非居住者口座は存在しない」ってことになる。となれば、マレーシアはOECDのCRSには参加しているけれど、「我が国には非居住者の持つ口座はありません」ということで「空のデータ」を渡しているのか?
ま、この辺は銀行のスタッフに聞いても全く彼らは知らないし、きっと私の名前もCRSのリストに載っている可能性は高いと思うんですよ。全ての日本人の名が載っている可能性はかなり高いんじゃないですかね。銀行は我々が居住者かどうかの判断はできないんですから。
それで何か困るの?と聞かれても私は全く困りません。悪いことを企んでいるわけでもないし、そもそも私は多くの資産をマレーシアに持ち込んでいませんし、銀行に入っているのはMM2Hビザの為の「人質定期」とそれと同額ぐらいのものが定期や普通口座に入っているだけですから。
では他の国に口座があるのか?ということですが、その通りです。でもそこでは「マレーシアの居住者という登録」がなされていて、もちろん国籍やパスポート番号は届けてありますが(マイナンバーはない)、日本の住所なんて一切登録されていません。
その国もCRSでのデータ交換に参加していますが、きっとその国から「我が国に住んでいる日本人のダボは我が国の【非居住者】で、マレーシアの【居住者】である」ということで、マレーシアに情報が渡っている可能性のほうが高いわけです。
ややこしいですねぇ。
でももし、CRSで何か困ることがある人がこのブログの読者にいるとすれば、これが一つのヒントになるかもしれませんね。
な~~んて脱税幇助みたいなことを書いちゃいましたが、今から慌てて資産を他国に移してももう遅いですね。だってすでに日本にデータが渡っているはずで、来年からその金額が極端に減ることがあれば、「税務署からお尋ねが来る」んじゃないですかね。また「第三国」に資産を移しても、その国で「非居住者」なのは間違いがなく、「日本人」であることもそのとおりで、日本の国税庁は全く関係がないわけですが、条件検索で名前が出る可能性は大きい。
本当に悪いことを考える人は、前にも書きましたように「どこをどう調べても名前さえ出てこない」ようにするのが普通で、我々素人がああじゃこうじゃ考えるのとはレベルが違う。でもかつてUBS銀行(スイスを拠点にして世界相手にプライベートバンクサービスをしている老舗)から顧客データが流出してヨーロッパで大騒ぎ。またパナマ文書とか出てきたじゃないですか。パナマ文書は資産を隠している銀行からのデータではなくて、様々なスキームを考え実行する「法律事務所」から機密データが流出したんですね。これじゃ悪い連中の作戦が全てバレちゃう。
私はこれらの機密データ流出事件は、データを盗まれたということになっているけれど、アメリカ等の「マネーロンダリング、脱税に関与するな」という激しいプレッシャーに負けて、「盗まれた」ということにした「リーク情報」だろうと思っています。アメリカの今のファーウェイやZTEへの圧力を見てもわかるように、言うことを聞かなければ潰されますし、世界は「もうそういう資産隠しは許さない」というコンセンサスが出来ていますから。もう昔のように「あそこに隠しておけば安心」という時代じゃないんですね。かつては脱税幇助をしていた銀行も、生き残りのために一生懸命で、顧客の本国の納税者番号を聞く銀行は増えてきたし、顧客の居住国によっては「口座さえ開かせない」ように変わってきているのは前にも書いた通り。
ま、脱税なんか考える人はこのブログの読者にはいないと思いますが、これだけは注意したほうが良いんじゃないですかね。
○ CRSのデータに自分の名前が載っている可能性がある
○ 資産は5000万円を超えているけれど、日本で「海外財産調書」を提出していない
この場合は、日本の国税庁は名寄せをすればすぐにそれを把握しますよね。法律違反がバレちゃう。罰則は「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」だそうです。
でもそれは「日本の居住者」の場合であって、日本の非居住者なら海外財産調書を出す必要はない。
だから「自分は絶対に間違いなく日本の非居住者だ」と自信のある方は良いにしろ、「実は行ったり来たりしていてマレーシアに住んでいるというのは無理がある」なんて人はうまくないんじゃないですかね。調書を出していない罪は横に置いといて、「今までの収入に関して【税務署からのお尋ね】」が来るんじゃないですかね。「申告・納税がなされていませんが」と。
いや、私は日本の非居住者ですからときっちりそれを証明できるような生活をしていれば良いですが「貴方は日本の居住者であると判断します」ということになったら最低でも5年は遡って課税されるし、下手をすれば7年、重加算税なんてついて大変なことになるかも。ましてや贈与(相続も)でもやっていたらそれも把握されるんじゃないですかね。
このブログの読者にグレーゾーンでいろいろ計画を練るような方はいらっしゃらないと思いますが、いつも書いている通り、「脱税は犯罪だけれど、節税は合法的にできる」わけですから、余計なことは考えない、やらないほうが良いですね~~~。
この辺を簡単に考えるとうまくないようで、こういう例もあったとのこと。
「近年、オーストラリアに金融資産を持つ日本人のもとに税務署から『お尋ね』が来たり税務調査が入ったりする例が増えています。これは、数千万円程度の資産に対しても同様です」
これらの情報はこちらから。「どんなに隠しても金持ちの海外資産が国税にバレる新制度の中身とは?」(クリック)
いつの日か「老後のロングステイ先として一番人気があるマレーシアに住所を移し、当地の有利な税制を利用して日本への納税を回避しようとした日本人を逮捕」みたいなニュースが流れないことを願っています。かつてペナン在住だった日本人が捕まったこともありますし、「海外に出れば安心」なんていうのは世の中を知らない人の幻想でしか無い。
またこのブログの読者で「10年縛り」の法律をご存じない方はいらっしゃらないと思いますが、「日本を出国してから10年以内は【贈与・相続ともに日本の税法が適用される】」ということ。かつては5年でしたが今は10年。マレーシアは贈与税も相続税もないからと言って、定期預金等の金融資産、不動産を相方や子供の名義にすると大変なことになる。「知りませんでした」とか「もとに戻します」なんてのは通用しない。