私に収集癖があって、なおかつ「包丁」に思い入れがあるのは何度か書いていますが、やっと最近、「包丁、切り方」で【肉でも味が変わる】のがわかってきました。刺し身は下手に切ると美味しくないのは結構すぐにわかりますが、肉も同じだとは考えてもいませんでした。
不思議ですよね。このへんに拘るプロは結構多くて、野菜も同じだというプロは多いのね。確かに切れない包丁で切れば「断面の組織が崩れる」のは何でも同じで、「タマネギでそれを検証するのは簡単」なんですってね。切れる包丁で綺麗に切ると「涙が出ない」らしい。それどころか「味も変わる」と。それは人参も同様とのこと。残念ながら私にはそこまでの違いを体験したことはありません。
私は特に「肉を切るのが難しい」とずーっと思っていたんですよ。
刺し身って「形も厚さもだいたい決まっている」じゃないですか。で、切り方としては「平造り、削ぎ造り、薄造り」が主な切り方で、これって練習を重ねるとそこそこわかってくるのね。簡単に出来るという意味じゃなくて、「自分の切り方のどこがダメなのか」「どこを直すべきか」は素人でもわかる。
また「角が立つ」切り方も包丁の角度の付け方で、どう切るのかは割合簡単にわかる。それが完ぺきにできるという意味ではないのは当たり前ですが。
ところがですね、肉の場合って、部位の違いも大きいし、大きさも厚さもそれぞれですよね。そして「火の入り具合」もバラバラで、そもそも「どう切ったら美味しいのか」がわからないのね。「どう切ったら美しいのか」もわからない。
これって我が家で食べる機会が多い「ローストビーフ」のことなわけですが、常温あるいは冷やして食べる分には【薄いほうが美味しい】と感じるんですよ。でもアメリカ的な「プライムリブのロースト」みたいなローストビーフの場合は【それなりの厚さがないと美味しくない】と思う。
常温、冷たい状態で食べる場合の切り方。薄い方が間違いなく美味しいと思う。
でも熱い状態で食べる時には厚さがないと違和感があるのね。ステーキを薄切りにして食べないのと同じ。
ではそれぞれ「どのくらいの厚さが良いのか」ってのもはっきりわからずに、いつも悩みながら切るわけですが、ここで【そもそも望むように切れるのか】という問題があるのね。これは技術的にもそうだし、【どういう包丁を使うか】も大きな問題になる。
刺し身の場合は、切れない三徳包丁で切って美味しい訳がないのは、素人でも「口に入れた時の切断面の滑らかさが違う」のはわかりやすいから理解できる。だからやっぱり「片刃の柳刃包丁」を手に入れて、そして切り方も見た目が良いように「角が立つ」切り方をすると、そこそこ「それらしくなってくる」と思っています。これも簡単ではないけれど、どうするべきかってのは理解できる。
でも肉の場合は何が何だかさっぱりわからない。
刺し身の場合は「どうあるべきか」「どうやってやるのか」の情報、ノウハウはとんでもないぐらいの量がネットの中に存在するのね。動画も多いから非常にわかりやすい。ところが、牛肉となると「どうあるべきか」「どうやるのか」の情報が殆どないのに等しいのね。だから「自分で実験するしか無い」わけで、半端じゃない遠回りの時間がかかる。
我が家は肉の塊を買うことが多いわけですが、では「しゃぶしゃぶにしよう」なんて思っても、2ミリ以下の厚さで肉を切る技術がないのね。小さな塊ならまだしも「リブロース」みたいに大きな塊を薄く切るなんて「神業」としか思えない。
だからそこそこ良さげな「細くて長い包丁」をいろいろ試しました。
まずは家にあるヨメさんの「短めの柳刃」を使ったのですが、全然ダメ。長さも足りないし、片刃で薄く切るにはとんでもない技術が必要なのがわかった。だから、ノコギリ歯がついている方が良いかと思って、こんなのを手に入れてみたり。
でもこれじゃ断面がぐじゃぐじゃになって、冷凍の大きな肉を切り分けるときぐらいにしか使えない。でもま、我が家は冷凍の肉や魚類は結構使うから出番はある。パンを切るのにも使える。
ではハムやサーモンを切るスライサーはどうかと思ってそれも試しました。
でもこれってペラペラの包丁で、サーモンやハムみたいに柔らかいものなら切れるけれど、肉の塊の場合だと力が入らないのね。刺し身を切るのには使えるけれど、軽すぎて柔らかすぎて違和感があります。正直なところ、このスライサーは全く出番がない。(┰_┰)
いろいろ調べてみるとやっぱり「柳刃」が良さそうだし、我が家には良い柳刃も無いので、しかし取り扱いも楽なステンレスの30センチの柳刃を手に入れてみました。
これを手に入れたこと自体は大正解で、刺し身を切るのに重宝しています。でもやっぱり肉を薄く切るのは難しいのね。
だからそこそこ良さげなミートスライサーも手に入れましたが、やっぱりプロの肉屋が切るようなきれいな薄切りはできないのね。ちょっと厚みのあるすき焼き用ならどうにかなる程度で、これもまた「タンスの肥やし」になってしまった。(┰_┰)
薄切りする時には、肉の塊を【半冷凍の状態にする】と良いのだけれど、やっぱり私は不器用なんでしょう。うまくいかない。
壁にぶち当たっていたところ、肉関係の料理人、肉職人のユーチューブ動画を見ていてわかったのは、「筋引包丁」を使うプロが多いということ。これって見た目は柳刃に似ているけれど「身幅(刃の幅)が細く、厚さは薄い」のね。で、これは両刃だから、真っ直ぐ切るのは簡単。
となるとそれを手に入れるしか無いと思うわけで・・・。
私が一目置いている焼肉屋のオーナー&ユーチューバーが使っているのと同じ包丁を買うことにしました。肉に関して、そしてそれの切り分けとか、肉のウンチクに関しては彼から多くを学んでいるので、この際、包丁も同じにしようかと。
この「杉本 全鋼 筋引 24㎝」は肉関係のプロが多く使っている包丁なのがわかって、厚さも薄く身幅も狭く(細い)、これなら抵抗も少なく肉を切れるような気がしました。もしこれでダメなら、もう完全に諦めようと思っていたんですよ。だから後悔をしないように、砥石も5000番まで使って、これ以上切れるようにはできないぐらいしっかり切れるように研ぎました。
ドキドキしながら使ってみましたが、今まで試行錯誤をしたのが嘘みたいで、どうにか問題は解決しました。うまくきれいに切れるわけじゃないけれど、使いやすいので、練習すれば不器用な私でもどうにかなるような気がしてきました。
そしてこれって「両刃」ですが、「片刃寄り(7:3程度?裏スキは無し)」に刃が付けられていて、その中途半端さも良いのかもしれない(片刃に慣れた和職人には使いづらいらしい)。そしてやっぱり多くのプロは「ステンレス鋼ではなくて鋼(ハガネ)を薦める」のね。ま、それはわかりますが、手入れがかなり面倒なのですぐ錆びさせてしまいそうで怖いのですが、そのくらいの気はつかおうと。
京都で肉屋を経営する彼は鋼(ハガネ)で24センチ(八寸)、片刃を薦めています。
やっぱりど素人が片刃の包丁を使うのは難しいと感じます。刃渡りの短い「骨スキ」とかは片刃で、良く切れるし全く問題がありませんが、刺し身や薄切り肉の様に素材を大事にして気を使って切るには「切れる片刃の包丁が重要」なのはわかるものの、私には立ち入ることさえ無謀な職人の世界に思えてきます。
諸刃=両刃。グレーの部分は「よく切れる固い鋼材」。これを柔らかい鋼材で挟むことによって使いやすさ、もちの良さが生まれる。
片刃と両刃と使う時にどういう違いがあるのか。
03;17頃から、その説明が始まります。
また、なんとなくですが、刺し身も今回手に入れた包丁の方が柳刃包丁より切りやすいような気がするんですよ。だからこれを手に入れたのは大正解かもしれない。また24センチ(八寸)の刃渡りも良い感じ。我が家にあったのは「長いか短いか」でその中間が今回の24センチみたいな。
「切れる包丁で、組織を壊さないように、切断面をツルツルに切る」ことの重要性はわかってきました。まさか切断面の違いで味に大きな影響が出るようには思わないけれど、私達の「ベロ」ってそのちょっとの違いに気がついて美味しさを感じるんですね。それをわかった上で、料理を作るプロって本当に凄いと思います。
肉に関してもこんな動画がありました。肉の切り方一つで味が全く変わると。確かに薄切りの肉の場合、切断面が荒いとモソモソした感じになるかもね。
若い頃に、和食店のアルバイトでも良いから経験して、多少のことを覚えたら「一生の財産になる」のが今になるとわかるし、悔やまれます。あと、焼肉屋でもバイトして彼らのノウハウを吸収したかったと、本当に今になって思います。(笑)
その点、シドニーに住む次男坊は学生時代にゴールドコーストの老舗の和食店でそこそこ長い間アルバイトをして、オーナーや職人さんにも可愛がれて、魚のおろし方まで教えてもらっていました。
だから今では普通にシドニー魚市場(市場規模は世界二位の大きさ)に行って、気に入った魚を買ってきては、自宅でパーティーをやっている。大したもんだと思いますし、羨ましいとさえ思います。
シドニーでマレーシア在住の私達より豊かな食生活をしている次男坊。(笑)
そのうち次男坊に、一生使えるレベルの柳刃包丁を名入れして買ってやろうと計画中。有次がいいな。有次の包丁ってdabo家が古くから家業の飲食店で使っていた思い入れのあるブランド。50年近く前に、私が母の飲食店でアルバイトして居た頃に使っていた有次の包丁と全く同じものを数年前に見つけて手に入れて、思い出に浸っています。この包丁を握っていると、10代の頃を思い出します。(笑)
これって「有次の骨スキ」ですが、私が一番使う包丁がこれです。私にとっての「万能包丁」。刃渡りは15センチぐらいの小型ですが、ちょっと厚めの片刃でメチャ切れます。そして鶏の骨ぐらいは叩き割れる。
次男坊にも「有次」というブランド名から、私のこと、祖父母のこと、そしてdabo家の歴史を思い出してくれるようになったら嬉しい。
しかし包丁ってロマンがありますよね。
大昔は「切れれば良い」という時代もあったんでしょう。でもある時、「切れる包丁で切ると美味しい」ことに気がついた料理人がいたんでしょうね。そして「切れる」とはどういうことなのかの探究を鍛冶屋ともに初めて、途中で満足すること無く、極限まで「切ること」を追求。そしていつか【ハガネ】もできて【片刃】もできた。包丁は「武士が持つ刀」と同じ様に進化したのだろうけれど、包丁のことを知れば知るほど、いかに昔の料理人や職人が良いものを作ろうと努力してきたのかがわかる。
「切れる」ということは「脆い」のと同じ意味と言って良くて、それを解決しないと道具としての刃物は成立しないわけで、特殊鋼材の探究とともに、「固いハガネと柔らかい軟鉄とを合わせる」なんてことも始めた。時代とともにステンレス鋼もできて、「切れて、しかも錆びない。そして丈夫」の時代にもなった。
こういう刃物に使われる鋼材は全て特殊鋼と言って良くて、刀から包丁、カンナ、ハサミに至るまで、拘る利用者とそれに応えようとする製造者の努力の結晶なのがわかる。そしてそれを作るには多くの手間が必要で、分業が進み、「刃物の街」が生まれた。
カンナやノミにも大きな変化があったはずで、それなくして日本の「木工技術」の進展ってなかったのかもしれない。
面白いですよね。それぞれの熟練工が集まらないと作ることが出来ない「刃物」の世界。だからこればかりは、円高になったからとか、固定費が高くなったからという理由で、東南アジアに生産拠点を移して作ろうなんてことも出来ない。この刃物の世界って、少数の天才がいてもダメで、日本らしい「集団の努力の結集」によってのみ作ることが出来るもの。
何百年も前から、料理人や鍛冶職人達がどれほど悩み、どれほど努力をしたのかに思いを寄せると、【日本人に生まれた良かった】みたいな気までしてきます。
そして自分が持つ一本の包丁を見つめるだけで、その大勢の先人の思いが伝わってくるのね。昔から作業場には「神棚があった」ことからも、彼らがどれだけ真剣に自分の仕事に打ち込んでいたのかもわかる。
私は刃物ほど「全員参加」で、それも何百年も努力と試行錯誤の連続で作り上げられた「製品」というのを他に知らない。そして日本の刃物は世界の頂点に君臨して、独走を続けている。
「もの作りの原点」がこの刃物の世界に見ることが出来る。
今の日本って「落ち目のチンタ」みたいになってしまったけれど、自分が持つ包丁を見つめているだけで、【日本はいつか再び、世界の先端を走る事ができる】と信じてやまないわけです。
堺市は「刃物の産地」として有名ですが、堺市にある【堺刃物ミュージアム】の説明が面白いし、日本の刃物の歴史が見えてくる。
包丁の種類
このユーチューバーのチャンネルを見ると、包丁に関するありとあらゆる情報があって【包丁オタク】には面白いと思います。
皆さんは包丁に関して「思い入れ」はありますか?
包丁も凝りだすとキリがないようですが、もし何か思い入れがありましたらそんな話も聞かせてください。m(_ _)m