食べ物のことしか頭にないのかと問われれば、はい、その通りと答えるしかないのですが、ちょっと気になっていたのがKLの牛肉です。
伊勢丹やジャスコ、あるいはどこだったか忘れましたがスーパーの食肉売り場の牛肉はちょっとがっかりしたのを覚えています。こんなのしかないの?って女房と話しましたっけ。
で、オージービーフと表示してあった肉も結構あったようですが、オーストラリアでもちょっと見ないくらい悲しい肉でした。
そもそもオージービーフってのはオーストラリア産の牛肉ということですが、じゃぁ、オージービーフは皆同じかというと全く違うんです。まず日本で言うオージービーフはオーストラリアでは売っていません。
ええ?って思います?
肉に限らずなんでもそうですが、輸出する場合にはその相手国のニーズに合わせた物を輸出するのが当たり前ですよね。そこらにあるものを輸出するんじゃないわけで、肉も同じ。日本の市場に合わせた牛を育てて輸出しているわけで、オーストラリア国内に流通しているものとは全く違います。
ではどう違うのか?
やっぱり餌です。牛は本来牧草地帯に放牧されて、それが食肉となるのが多いのですが、日本は違いますよね?穀類を食べさすでしょ?オーストラリアではそんなことは普通しないわけです。牧草を食べているだけ。穀物を食べさせるとどこが違うのかと言えば、一番には肉の味と脂の乗りだと私は思うのですが、日本で言う牛肉のサシ。つまり脂ですが、こちらでは脂が無ければ無いほど好まれるという傾向があります。健康志向ということですね。Lean Beef と呼ばれます。脂のない締まった身体を Lean Body とかいうでしょ?あれです。でもそれじゃ日本では見向きもされませんので、輸出用は穀物を食べさせてわざわざメタボにして、筋肉の中に脂を入れるわけです。
ただこの数年、牧草を食べさせた牛だけではなくて穀物を食べさせた牛肉も肉屋に出回るようになりました。ただ、これらが日本に輸出されているものと同じかどうかは私は知りません。
穀物を食べさせると言っても、どのくらい食べさせたかで肉の値段も変わってきます。餌代って高いんでしょうね。で、60day Fed とか90day Fedとか言われます。FedというのはFeedの過去形。Feedとは餌を与えるという意味ですね。その日数だけ穀物を食べさせた牛だという意味です。で、もちろん90day Fedの方が高いし、脂の乗りも良く、味も良いということになります。
多分、日本の方は牧草だけ食べている牛の肉を食べたことがないかもしれません。どういう味がするかというと、必ずというわけではないのですが、牧草臭いです。牧草の匂いってわかります?では、牛の糞の匂いはわかります?そうそう、まさにあの匂いです。(爆)
ステーキを食べるとほんのり牛の糞の香り・・・・ そんなステーキも無くはないのです。そしてやっぱり固い。^^;
でも最近はそういう肉はなくなってきました。まずスーパーで買う肉でそういうのは無いし、田舎のわけわからないレストランでステーキを食べない限り大丈夫なはず。スーパーで普通に売っている肉は穀物を食べさせていない肉ですが、それでも結構美味しいと思います。で、面白いのは、牛肉と言っても個体によって違うわけでしょ?穀物を食べていなくても脂の乗りがいいメタボの牛だっているわけです。私が好んで食べる部位は Ribeye なのですが、大体1キロ30ドルぐらいでしょうか。2400円。グラム240円程度。これ以上高い肉はまず無いと思っても良いくらい。で、個体によって違いますから、たまに日本の牛肉の様にサシが入っている肉があるわけです。でも普通のオージーはこれは買いません。健康的ではないから。でもこれを見付けるとすぐに買うのが日本人であり、アジア人。
ただ高級肉屋に行きますと、アメリカ経由で入ってきた牛だと思うのですが、Angus Beef というちょっと高めの肉もあります。そして和牛(オーストラリア産)もある。和牛は Wagyu と呼びます。これは1キロ60ドルぐらいで普通の肉の倍です。グラム480円ぐらい。これはやっぱりまるで味が違います。美味しいなんてもんじゃない。で、繊維が口に残るような感じは皆無だし、脂のサシも入っている。サシが入っている状態を Marble と呼びます。大理石ですね。あの模様の様に脂が入っているからそう呼ぶのだと思います。
オーストラリアに住んでいるとやはりこちらの肉に慣れるのだろうと思うのですが、それとも歳なのかもしれませんが、日本の肉のように脂がこってり乗っているのは食べられなくなります(マグロも大トロが駄目になり中トロが好きになりました)。日本でいう最高級のA5という等級の肉なんか気持ち悪くなるだけ。また焼肉屋に行っても特上カルビは気持ち悪くて食べられません。脂身が多すぎる。でも確かに肉の旨さは脂にあると私は思うのですが、いかんせんあれでは気持ち悪くて、私としては日本の焼肉は並が一番良い感じがします。
とは言っても、こちらの焼肉屋で普通の肉を食べたらまずくて食べられません。固いし脂がないし、味もイマイチ。焼肉屋でも和牛を出す店があって、値段は倍以上しますが、やっぱりこれが最高だし、こちらでは特上があればそれを選ばないとがっかりします。並の焼肉だと食べなければ良かったと後で思うほどです。でもこちらで特上や和牛を食べても日本よりは安い・・・・と思う。
で、話はマレーシアなのですが、我々が見た限りではいろいろ選べるほど牛肉はないという感じがしました。ただステーキや焼き肉に関しては和牛を出す店があるのは確認しましたので、どうしても食べたくなればそこに行けば良し。ただ値段はスカイロケットかもしれませんが、牛の匠、韓日館とかで食べられるそうですね。
では普通に家で食べるにはどうするのか。伊勢丹で売っている肉でも悲しいと思っていたところで見付けたのがこの店。
Las Vacas ←クリック
この店の事を書いている日本人のブログはほとんど無く、ある方はたいして美味しくないと書いていました。ただ、マレーシア人達の間では評判が良さそうです。ここはオーストラリアから牛を生きているまま輸入しているようです。その後、穀物でも食べさせれば良いのでしょうがそこまでやっているかどうかは不明。またオーストラリア産の和牛を入れているかどうかも不明。
この生きている牛を輸入しているというのは良いと思いました。普通肉はなんというのでしょうか、解体した肉の状態で輸入されるケースが多いと聞きました。またアメリカ産は部位毎に買えるけれど、オーストラリア産は丸のままだとかそんな話も聞きました。
どちらにしてもこの店では生きている牛を輸入しているわけですから、ありとあらゆる部位があるということですね。私はホルモンは興味がないのですが、オックステイル、タンは絶対に欲しいし、場合によっては頬肉、モモ肉やスネ肉も欲しいので、そういうのが安く手に入るなら大歓迎。
値段もHPに書いてありました。
(ステーキ用 値段は1キロあたり)
Tenderloin/Fillet RM80
Netted Ribeye RM65
Ribeye/Cube Roll RM50
Striploin/Sirloin RM43
Netted Top Sirloin RM35
Top Sirloin RM26
Oxtail RM30
Tongue RM30
値段はオーストラリアの肉屋とどっこいかなぁ。高い物も安い物もあっていい勝負。
この店は当然卸商なわけで、Top Market のホテルやレストランに卸しているとのこと。また小売店もあり、レストランもやっていて、美味しい肉が安く食べられるというマレーシア人のブログを何度か読んでいます。
Sukiyaki Beef なんて写真にでているのが見えましたが、ではShabushabu Beefは売っているのかなんて気になったり。これって肉を凍らせないと切れないわけで、自宅ではちょっと難しいんですよね。店が対応してくれれば大助かりですが、どうでしょうか。
この店の評判とかご存じの方がいらっしゃったら、教えてくださいませんか?また牛肉ならTTDIに行けば問題なく買えますか?あるいはみなさんがいつも牛肉を買われている店はどこでしょう。
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おおおーーー、ここでは輸入してから120日間穀物を食べさせていると書いてありました。オーストラリアでは120日も穀物を食べさせた肉なんて売っているのを見たこともありませんから、もしかしたらオーストラリアより美味しいかもだ~~~~~。まして、穀物を食べさせた牛肉は上の値段ではこちらでは買えない。マレーシアの方が安い!!
Our quality meats come from Australian bred cattle, which are 120-day grain fed in Kluang, Johor. だそうです。
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その後また調べていますが、和牛を食べさせるレストランは結構あるようですね。ただその和牛はオーストラリア産だと書いてあるところがチラホラ。
この畜産の世界って私にはよくわからんのですが、少なくともオーストラリアの和牛は100%和牛ではないというのを聞いています。種牛はどういうわけかアメリカから入ってきた牛らしく、それと現地の牛と掛け合わせて産まれた牛も和牛になるそうです。ではその子どもの4分の1の牛はどうなるのかも知りませんし、アメリカから入ってきた種牛が100%和牛なのかもわからず。和牛って要は、日本の牛っていう意味じゃなくて但馬牛のことだと思うのですが、よくわからん世界です。
そういうことでオーストラリア産、アメリカ産の和牛も存在するわけですが、これらが日本国内で和牛として売られることはないそうです。農水省のガイドラインで海外育ちは和牛と表示してはいけないとのこと。
それともう一つ。実はオーストラリアで Kobe Wagyu という表示で売っているものがあります。これって大嘘でしょう。神戸牛は兵庫県で育てられ、A4の肉質をクリヤーした兵庫県産但馬牛を言うわけで、海外育ちの神戸牛はあり得ない。でもその規格は日本の規格であるわけで、海外では関係なし。
ということで、KLの高級レストランで神戸牛として売られている物が本物かどうかは疑問。美味しくて妥当な値段ならインチキでも良いけれど、本物の神戸牛と信じて期待するべきではないだろうし、高い値段を払うのもバカらしい。
私としてはもし日本料理屋がこの手の海外育ち和牛を神戸牛として売っているとしたら、そういうインチキな店はボイコットしたいくらいです。
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オーストラリア産 Kobe Wagyu Beef というのはもうすでに一つの地位を作ってしまったようです。これがオーストラリアであるいは海外で登録商標なりなんなり守られているならいいのだけれど誰でも自由に使えるとなるとうまくないですよね。
寿司にしてもわけわからないのが寿司として出回っているけれど、寿司というのは固有名詞じゃないからどういじくり回しても良いけれど、神戸牛という日本の芸術は守りたいなぁ。
って、神戸牛なんか食べたこと無いけどさ~~~~~。
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まだしつこくフォローが続きます。
オーストラリア産Kobe Wagyuの事はstar紙で見付けました。メリディアンホテルのPrimeという店で扱ってると。
The Star紙 ←クリック
そのPrimeという店では、そのオーストラリア産の和牛を Master Kobe Beef という呼び方をしてる。そして本来神戸牛はビールや酒を飲ますけれど、この牛はアルコールを飲ませていないからハラルであると。つまり、酒はどうでもいいにして、オーストラリア産だということをはっきり書いている。
このオーストリア産偽物神戸牛を本物だと信じて高いお金を出して、そしてやっぱり美味しいと絶賛している人もいるのがわかりました。うまくこの店の商売に乗せられちゃってると思うのは私だけ?その方はなんも悪くは無いし、本当に美味しかったんだろうと思いますが、本物の神戸牛だと錯覚させる商売って私は好きじゃないなぁ。ましてやオーストラリア産 Kobe Wagyu ってそんなに怖ろしい値段じゃないし。
ちょっと後ほど買ってきて食べてみますね。
ということでこのレポートは続きます。
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買ってきました。オージー Kobe Wagyu。
キロ単価は65ドルだから5200円。グラム520円。重さは366グラムで23ドル79。1900円かぁ。やっぱり結構高いわ。普通の肉ならこの半分以下。ちと色が悪いけど、この店の和牛はいつもこんなもん。
肉屋にKobeという名の付く肉は他にあるかと聞いたのだけれど、オーストラリアにはこれだけだとのこと。KOBEブランドなんですね。いかさまだ~。
KOBEブランドじゃない和牛もあるけれど、値段はちょっと安い程度。実際には変わりはないかも。
Kobe wagyuをそのまま英語なら良いけど、日本語にするとやっぱり神戸牛ってことなんでしょうか。ちなみにこの肉を扱っているレストランがこっちにあったとしても絶対に神戸牛とは言わないはず。日本人なら神戸牛は日本産であるのは誰でも知ってるし、オーストラリアは牛の輸入は一切認めてないのも知ってるから神戸牛が存在するわけがない。
メリディアンのPrimeという店で扱っているのがこのKOBEブランドの肉かどうかはわかりません。ただ、Primeは上にあげたThe Star紙上でオーストラリア産だというのは書いているわけだから、それは神戸牛でないのは間違いがないですね。
ちなみにKLの友人がさっそくLas Vacasに行って肉を買ってきたとのこと。これです。Grass fedだそうです。いわゆる牧草だけの牛ね。それと電話での確認では今は120日穀物を食べさせた肉はないとのこと。
こっちの普通のリブアイも似たようなものです。でも探すともうちょっとサシが入ってるのはすぐに見つかるって感じかな。
これは306グラムだからこっちだと9ドル18セントで733円か。KLで27.55RMってことは700円以下?KLの方が安い!! グラム単価は9RMかぁ。良いかも。こういう店とうまく話してしゃぶしゃぶ用の良い肉を確保してもらったり、極薄で切ったりしてもらえたらいいなぁ。
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オーストラリアのThe AAco Westholmeという会社がMaster Kobe beefって名前を付けて各国で販促キャンペーンをやっているのがわかりました。韓国、香港、マレーシア、シンガポール等でやってるとのこと。私が買ってきたのはこの業者とは違う業者のKOBE BEEF。
マレーシアではメリディアンのPRIME以外のレストラン(メキシカン)でもマスターコーベビーフフェアみたいなことをやっていたのもわかった。
オーストラリアでは最近和牛を扱う業者が増えて、各社KOBEという言葉を使って展開している様子。日本に持ち込まない限り問題なくKOBEの名前を使って儲けられるのがわかったのね。
ひょんなことが切っ掛けでオーストラリアの畜産業界の動き、それに乗った各国のレストラン、そして神戸牛の名前に惹かれて彼らを儲けさせている消費者の絵図が見えてきた。ブランドを利用する連中、それに踊らされる消費者。まぁ、良くある話だけれど、商売人の手の内が見えて来て面白いと思いました。
神戸牛という名称は日本国内では勝手に使えないけれど、海外では関係なし。あくまでKOBE BEEFでしかない。でもそれを言われれば誰しも日本の神戸牛だと思いますよね。これが偽物だなんて気がついて食べてる人はどのくらいいるんでしょうか。
ほんとにいい加減な世の中だ。
報告終わり!