タックスヘイブンって面白いですよね。税金が安い、あるいはゼロなんですから。ちなみにタックスヘイブンを「税金天国」という人がたまにいますが、タックスヘイブンは「tax haven」であってタックスヘブン「tax heaven」ではないんですね。havenは「避難所」の意味。
私がこれに興味をもったのは1980年代だったでしょうか。ある新聞に「大手企業は利益が出ても税金を払っていない」という大きな見出しでタックスヘイブンに関して書かれていました。当時はタックスヘイブン対策税制がなく、大手の金融関係(銀行、証券、生命保険等)のほぼ全て、あるいは名だたる大企業の多くがタックスヘイブンと呼ばれる地域に支店(多くはペーパーカンパニー)を持っていたんですね。
三国間貿易ってのがありますよね。日本からアメリカに商品を輸出するとして、その営業をしている会社は第三国にあるケース。書類は日本→第三国→アメリカのように第三国を通す。当然、売主は第三国にある企業でそこで売上が上がる。あるいは紹介料とかコンサルタントフィーとか名目はいろいろでもちろん利益も出す。
この場合、第三国にある企業はその国の税制にしたがって納税するわけで、基本的には日本にもアメリカも関係ない。ではその第三国の税率がゼロとか非常に低かったらどうか。
当然、普通の商取引でも中間に他の業者が入っている形を取りたくなるはずで、実態は直接取引なのに、あえて間接取引の形を取って、支店をその第三国に置いてそこからの受注として利益を出せば、日本国内での利益を圧縮できる。もちろん納税額は下がる。ただ会計上の手法としてはその海外の支店も計算に入れて、おかしなことをやっているのは外からは見えない。でも税金は極端に低く抑えられる。税務会計は別。
単純な例ですが、こんなバカなことが許されていた時代があるんですね。でもタックスヘイブン対策税制なるものが出来て、それは簡単にはできなくなった。でも抜け道は「現在でも」いろいろあるようで、大手の会社はあの手この手で利用していると聞きます。
またグローバル化の時代になって、そしてITの時代ですから、商品が「データ」であった場合、世界のどこでもネットさえちゃんと繋がっていれば会社の場所がどこでも良いという業種も出てきた。これで近年やり玉に上がったのがあのAppleですよね。詳しいことは知りませんが、iTuneで音楽を売っていますが、あの子会社を「税率の低い国」に置いたんですね。世界的に恐ろしい額の売上を上げていますが、本来ならアメリカにその拠点があってアメリカで納税されるべきものだと誰しもが考える。(今でもそうなのかは知りません)
これって厳密な線引きは出来ないと思うんですよ。グローバルで活動している企業が税率の低い国に拠点を移せば利益が増えるのは当たり前の話で、海外進出をするときにそれを考えない企業はないですよね。でも悪意がある会社は、例えば日本国内の事業で日本国内の取引なのに、その中間に一社紛れ込ませて、それをタックスヘイブンに置く。当然それはペイパーカンパニーで、事業の実態は日本にあるとか。でもかつてはこれさえも止めることが出来なかった。
でも取引が複雑で、中間に入る企業の資本関係が親会社=子会社の関係ではない場合、意図的な「租税回避」かどうかってのはわからない。業務の指令を出しているヘッドクォーター、実務をしている「場所」も大事で、それが日本の本社内にあれば、その一部とするという考えもありますが、その辺もやろうと思えばいろいろできちゃうケースがあるのだろうと思います。
また大企業には関連会社が世界中にごっそりあって、そのうちの一つが法人税の安いところにあって、その会社が大きな儲けを出したら、わざとそこに移転させたのだろうなんて言われても困りますよねぇ。でも日本の場合はそういう支店も合算して日本で申告する。(いろいろ基準があるけど)(当然、現地での納税も行われ、その分は税額控除となるはず)
この辺を当局がきつく締め付けますと、あるいは税金が高ければ、「じゃぁ、本社もろとも海外に出ますわ」という企業が出て来る。これの代表として私の記憶に残っているのは「ヤオハン」です。中国に力を入れるということもあって、香港に移っちゃった。びっくりしましたね~、あの時は。法人税の違いが大きければそれだけで税引後利益が大きく伸びるわけで、移転経費、構造改革に伴う諸経費を差し引いても大きな利益が出るんでしょう。当時の香港は確か法人税が17%。どの企業も利益を出すのに必死で、スーパーみたいな形態の会社で、たとえば最終利益を10%伸ばすというのはとんでもない難しさがありますよね。店舗を10%増やせば良いなんて簡単にはいきませんから。でも海外に本社を移すだけでもっと利益が出るのかもしれない。海外での利益は課税しないなんて税制なら尚更で、日本での利益は丸儲け。
またいつの頃か忘れましたが、ホンダの本田宗一郎氏が「これ以上法人税を上げるなら、ホンダは海外に出る」と政府を脅かしたことがあったんですね。これもニュースで出ました。でも世界を舞台に活躍する企業がそれを言い出しても、倫理的には「え?」と思いますが、今、多くの会社が中国に工場を持っているのと同じで、ホンダが日本の工場はそのまま稼働させて、でも本社は香港、シンガポールでも全くおかしくないんですね。
今の日本政府も、増税しないとならない(だから消費税を上げた)のに、法人税は下げざるを得ないというのはこういうことだと思っています。また海外企業から見ても、法人税が高い国に進出しても意味がないわけですから。
私は最近の法律関係がどうなっているのか、また実情が全くわからないのですが、かつては「持株会社」は日本では認められなかったんですね。でも今では「XXXホールディングス」みたいな会社がいっぱいあって、その会社が「企業を持つ」みたいな形。これって同族会社みたいな大手には好都合で、その企業の大株主は「XXXホールディングス」であって、ではそれを上場しなければ「XXXホールディングス」は誰の持ち物かというのが表に出てこない。また誰にもガタガタ言われることもない。そしてM&Aをするにも簡素化するんだろうと思います。「XXXホールディングス」だけをきっちり掌握していれば良いんですから。
で、この「XXXホールディングス」を海外のタックスヘイブンに置いたらどうなる?
今日はなんでこんなことを書いているかというと、友人でもあるMM2Hの代行業者のリカさんが、マレーシアのオフショア会社、「ラブアン法人」に関して書いていたから。
ラブアン法人設立の条件変更: ロングステイ & MM2H イン トロピカルマレーシア
つまり、今までですとタックスヘイブンといえば代表格はケイマンですが、それと同じようなことが出来るオフショアがマレーシアにあるんですね。私はその存在は知っていましたが、一切詳しく調べることはしていません。
またここが大事だと思うのですが、そのラブアン法人は、かつては「資本金の条件」がない、あるいはかなり低かった様子。そして、取締役も現地に居住する必要もなくペーパーカンパニーでもOK。そしてこの法人を作るとマレーシアの滞在ビザが降りる。もちろん就労ビザで数年ごとの更新となるし、その条件等はリカさんに聞いていただくとして、そのビザがあればマレーシアのどこでも住めるんですね。
で、リカさんのブログを読んだところ、一切の諸経費込でUS$5200ドルで過去においては出来たそうです(このページ)。安いですね~~。
これでビザを取得したとしてもその更新が簡単なのかどうかわかりませんが、MM2Hよりお金が掛かりませんし、申請から許可がでるまでの時間も早いとのこと。この会社はマレーシア国内での事業、取引はできない(あるいは何らかの規制がある)みたいですが、相手が海外というのが前提の様子。ですから金融資産を動かして投資をするとか、あるいは東南アジア一帯に投資、事業展開する会社が、それらの持ち株会社としてこの法人を作ればメリットは「かなり」あるはずなんですね。
ところが、今回のリカさんのブログでは、資本金が25万リンギット以上必要なように変更になったとのこと。
きっと本来あるべきオフショア法人の設立というのではなくて、「お金をかけないように滞在ビザを取る」手法として使う人が多かったんでしょうね。だからお金が掛かるようにしてしまった。でも資本金は資本金で、実際の資産はまた別ですから、あの手この手が残っているのかもしれず。例えば、その資本を使って、「日本円に投資する」という行為があってもおかしくないはずで、そこから生まれる利益は皆さんご存知の低利回り。また投資方法はいろいろあるわけで、それが株式、債券、不動産、あるいは個人・法人に対する貸付でもいいはずで、見せ金だけ用意すればインチキはできそうですね。
一般的には「そこまでして・・」と思いますが、そこに興味を持つ人はきっといるんじゃないですかね。
ま、ビザ目的は別にしても、タックスヘイブンを利用して「裏金」を作ったり、相続や贈与で「非合法の租税回避」を狙う人はいつの時代もいなくならないはずで、そういう分野では注目されているのかもしれませんね。
興味がある人は「ラブアン法人」で検索してみると、かなり出てきますし、そのサービスをしている日系企業も多くある様子。
中にはこういうストレートなことを書いているコンサルタントもありました。この会社はあちこちで名前を目にする会社です。
この中では、「マレーシアに居住する」前提ではないことが書かれています。それを引用しますと
たとえばある日本の会社が海外に対して商品の販売ややサービスの提供をし、多くの利益を得ているなら、その事業を形式的にオフショアの会社に移し、オフショアの会社から請求書を海外の顧客に対して発行し、支払いをオフショアの会社にしてもらうことで、年間の法人税をラブアンの場合はRM20,000(約60万円)を支払うだけ、ブルネイは完全無税で、利益を会社の非課税所得として、配当や取締役報酬に回すことができます。
インターネットバンキングができ、オフショア会社のオーナーが世界のどこでも財布代わりに使えるデビットカードやATMカードのサービスのついたオフショア口座を提供する銀行もあります。そのようなサービスを使えば、日本のように税の取り立ての厳しい国への高額の送金を行わない限り、つまりデビットカードやATMカードで使用する範囲であるなら、オフショア会社に1度入ったお金は課税されずにどこでも使えるということになります。
凄いですねぇ。これじゃ誰でも作らなければ損だと思いますよね。でも、日本の居住者(納税義務者)がこれをやったら「脱税」になることはここには書かれていない。
この手のコンサルタントは「(日本の法律が適用されない)海外に拠点」を置いてるケースがほとんどだと思います。これを日本国内でやるとかなり問題が大きくなりますから。では日本で有名な企業(例えば大手銀行のある部門とか)はこういうことは言わないのか?というとそうでもなくて、このように活字にしなくても似たようなことを言うのを私は経験しています。でもそういう企業は「(表向きには)日本では活動しない」んですね。拠点(担当部署)を香港に置いていたり、日本には担当も置いていないとか。
でもプライベートバンキングで超有名な海外の銀行の日本支店ではちゃんと担当者がいたり。かつて、20数年前ですが、シティバンクが大手町だったか事務所を構えて、プライベートバンキングと称して、公認会計士、弁護士など専門家を抱えていろいろやっていました。実は私がオーストラリアへ渡ろうと思った時に、最初に行ったのがそこでした。理由は簡単で、オーストラリアだから銀行は日本の銀行では駄目で、オーストラリアの銀行かシティバンクのような世界にネットワークがある銀行を使わないと駄目だろうと思っていたから。
でもそこで、実はオーストラリアへ移住しようと思って・・と話をしだしたら、いろいろ提示されたということ。これにはびっくりしましたよ。かなり大っぴらにやっていました。でも後に、この部門が問題になって閉鎖(日本撤退)したと聞きました。私が使ったオーストラリアの永住権申請代行業者は、実はそこで紹介された業者だったりします。(笑)
ここでいろいろ知識をつけた私は、日本のそれまで付き合いがあった大手銀行にちょっと話したんですよ。シティバンクはこういうサービスをしているけれど、この銀行ではそういうサービスをしていないのか?って。その時には、「そういうのは聞いたことがありません」という返事。
ところがですね、どのくらい経ったでしょうか。その銀行の違う部署から電話がかかってきました。一度お会いしたいと。
会ってから名刺を見ますと、銀行名が横文字(その銀行名は入っていましたが)。事務所は香港にあって部署は「国際金融部」でした。その部門は、航空会社に飛行機をリースするとかそういうことをやっていたらしいのですが、その中に小さなプロジェクトチームがあるんですね。顧客は主に中国人だそうです。
会った時ですが、私がオーストラリアへ移住するのが本気かどうか、かなりしつこく聞くんですよ。で、それを確認したあとに、いろいろ話が出てきました。びっくりしたのはですね、日本の大手銀行ですから、ありとあらゆるサービスが出来るんですね。箇条書きにしますと
◯ ビザの申請代行もする
◯ 日本に残す家や資産の保守管理、各種支払も代行する
◯ 行き先がアメリカの場合、当時は「ビジネスを始める」のが永住権の条件だったのですが、既存のビジネスの「買収」、その「維持・運営」も代行する。
◯ 資産をタックスヘイブンに移すなら、その法人の設立、運営を全て代行し、その法人には一切、貴方の名前も住所も出ないようにする。(法人はケイマンで、社長はその銀行のアメリカ子会社の人間)
つまりですね、ハワイでもどこでも好きなところで好きなことをして下さい。面倒なことは当銀行グループで全てやりますから、って話ですよ。(笑)
何度か会って話を聞きましたが、この話は絶対に口外しないで欲しいと何度も何度も釘を刺されました。これが当局に知れると「脱税教唆の疑い」を掛けられるそうで、「倍返しの半沢直樹」じゃないですが、支店に突然査察が入って業務ができないようになったり、いろいろやられるようなことを言っていました。だからその業務のヘッドクォーターは海外におくし、担当者も日本にはおかないんですね。もちろん、そういうことをやっているという広告宣伝も出さず、支店からの情報によって動くのでしょう。
お互い気心がしれてくると彼らの言うことはエスカレートしてきまして、こういうことも言い出しました。
◯ 裏金だろうとなんだろうと任せて下さい。
◯ お金持ちで相続税対策とかで困っている人がいたら紹介して下さい。
この銀行を知らない人はいない関西系の銀行でしたが、私はこのサービスは使わず情報を引き出しただけ。(笑)
あれから随分月日が経ち、その後の合併につぐ合併で今ではその銀行名も消えてしまいましたし、そのサービスをやっているかどうかは知りません。またこの話は20数年前の話で、その銀行もすでに存在しませんし、担当者ももう退職しているでしょうし、今なら書いても良いだろうと思って書いています。
ただ、香港の「国際金融部」では債券や日本株式を扱っていて(その銀行グループの中の該当部署がやる)利用したことはあります。もうかなり昔になりますが。日本の株式を国外に持ちだした時とか(株券を日本で彼らに渡した)、各国の債券もそこを通して買いますと「為替交換手数料がゼロ」だったので何度か利用したことがあります。
この「為替交換手数料がゼロ」というのは、その部署がそれで利益を出さなければならない部署じゃないからなんですね。また考えてみれば簡単にわかることですが、例えばトヨタの株を買いませんか?GMにしましょう。あるいはアメリカの国債は売ってオーストラリアの社債にしましょうと、海外投資では為替交換が頻繁に行われますが、そこで手数料を取られたらそれだけでどんどん目減りしますよね。定期預金も同じです。
ここが一般向けの海外投資と違うところで、多くの銀行がやっている「外貨預金」なんてのは高利回りをエサにした「為替交換手数料を稼ぐビジネスモデル」なんですね。支店での海外送金もそうで、それで利益を出すのが彼らの仕事。ところが「国際金融部」を通すと一切手数料がかかりませんでした。いわゆる今で言うFXのBit & Askと同じで、非常に小さいスプレッドでキャッシュの為替交換ができました。ま、今ではFX業者を使えば「現引き」という形でキャッシュを出すところがありますが、かつては我々一般にはそういうことは不可能でした。
私はたまたまひょんなキッカケでそういう世界があるのを知りましたが、これって素人ではない、企業や機関投資家、あるいは金持ちの間ではきっと当時でも常識なんだろうと思いました。
本当に我々一般市民というのは「カモ」なんでしょうし、何もわからない我々が彼らに頼ることで彼らは利益を出す構造になっているんですね。世の中はピラミッド型になっていて、我々がその底辺の末端にいるからこそそのピラミッドが成り立って、皆が食えているということなんでしょうが、なんだか面白く無いと思いませんか?
最近、このブログには書かなくなりましたが、私が長年考えていることは「平民の逆襲」です。うまいことを言われ、貴方の為ですと言われその気になるから、それで世の中が回っているんでしょうが、私はそれに反抗したいと常日頃思っています。
でも、その戦いはルールに則っていなければヤクザと同じになりますから、今日の話題であるタックスヘイブンを使うにしても「節税」は良いけれど「脱税」なんてとんでもないと思います。この「払うべきものを払わない」というのは「他人の物を盗む」のと全く同じだと思うから。
そんなやり方では「平民の逆襲」にはならないんですね。またそれは社会的にも許されないし、認められることは絶対にないんですから、逆襲が成功しても全く価値がないことになります。
私がいつもここに書いていることですが、我々一般が節税する方法はいくらでもあるわけで、税金を払いたくなければタックスヘイブンへ渡って居住すれば良いだけなんですね。またオーストラリアをタックスヘイブンと呼ぶ人はいませんが、相続税・贈与税はありませんから、そこが気になる人にとってはタックスヘイブンなんですね。これはマレーシアも同じで、相続税・贈与税もなければ海外からの収入、(基本的に)金融から出た利益に課税しないのですから、タックスヘイブンと言って間違いがない。
でも日本に居住しながら海外に資産を逃して、隠して、なおかつ利益はクレジットカードで引き落とせば問題ないぜ、なんてのは私は認めたくありません。それは「見つからなければ大丈夫」という意味であって、金儲けの方法じゃないんですね。泥棒が手口の情報交換をしているだけじゃないですか。(私もそうですが)裏ワザ好きな人は気をつけないと、黒と白、グレーな部分がある世界はやっぱり危険で、いつの間にかズルズル入っていく世界でもあるような気がしています。
上に紹介したコンサルタントがそういう意味で書いているとは思いませんが、書いてあることをそのまま読めば、「怪しいことも可能なんだ」と考える人が間違いなく出て来るはずで、でも私達はそういうことはせずにまっとうな方法でどうにかやろうぜと言いたいし、そのノウハウの交換こそが大事で、このブログをやっています。
ただ、個人の感覚ではなかなかわかりずらいですが、ビジネスも国境を超えて、広い世界を庭と考えた場合、ヘッドクォーターをラブアン法人として設立するとか、それは時代の流れだと思うし、オフショア法人はハードルが高いものの、それがマレーシアのラブアン法人なら弱小企業でもやれるというのは良いことだと思います。
ただし、居住国(納税義務がある国)がそれを認めるかどうかは別の話で、日本の居住者の場合は、日本国内の収入と合算しなければならないんですね。オーストラリアも同じ。アメリカも同じ。ただイギリスの場合はちょっと違う基準があるよう(マン島やケイマンを抱えているせい?)ですが、ま、世界はタックスヘイブンの利用を好ましく思わないのは当たり前。でも合法的に節税できる部分があるのも間違いがなく、グローバル展開をする企業、個人であるのなら、上に出したアップルの例じゃありませんが、何らかの行動を起こすことは良いと思うし、メリットもあるんじゃないでしょうか。
ちなみに、上に書いた「ある日本の大手銀行」のサービスですが、これは「海外に出る人を対象」としていたはずです。だから日本の納税義務者ではありませんから、日本の当局に色々言われる筋合いはないのだろうと思います。ただし、出てからが問題で、普通はどこの国にも「海外の収入も合算して課税する」のが常識で、マレーシア、香港、シンガポールみたいな国は稀なんですね。ですから、タックスヘイブンのケイマンにトラストを作ったにしても、それからの収入は「普通の国」では非課税とはなりませんから、「申告しない」という犯罪をその銀行が教唆しているとも考えらます。
ただあれから20年以上経ち、世界的にマネーロンダリング防止に大きく舵が切られましたし、タックスヘイブンも決して「治外法権」みたいな感じではなくて、「絶対流出しないはずの個人情報」を開示したある有名な銀行があって、ヨーロッパでは大騒ぎになりましたよね。あれでドイツの高官が辞職するまでになった。先進国はタックスヘイブン、各国の銀行にはかなり強い圧力を掛けるようになってきて、今のマレーシアもそうですが「非居住者の口座開設」そのものが難しくなってきています。そしてブログにも書きましたが、各国で「非居住者の金融口座内容の情報交換」をする約束事が去年決まりましたし、それを実行に移すべく着々と進んでいるのが見えてきたのもこのブログに書いています。
ただオフショアの存在はまたちょっと違っていて、ここにはまだ自由度がある。でもそれも締め付けが厳しくなってきていて、タックスヘイブンの中には「協力的」「非協力的」の区分けがあるのですが、非協力的なタックスヘイブンでも先進国に睨まれると存在も危ういわけで、サービス内容がどんどん変化してきている。
つまりですね、「非合法」なやり方はどの国も認めないというコンセンサスがもうできているんですね。だからやっぱり合法的にやるしか無いわけで、その中で「申告をしない」という古典的な方法をとってもそれでどうにかなるほど簡単な世の中ではなくなったと私は考えています。
でもこの手の話で私が一つだけ、どうもよくわからないことがあるんですよ。
収入があれば申告しなければならない。当たり前ですよね。
ではタックスヘイブンに作った会社がどんどん儲けて大きくなって、でもそこから一切の報酬や配当も受け取らなかったらどうなるのか?ってこと。それが個人なら間違いなく収入になりますが、法人だとして自分は株主で一切報酬も配当も取らなかったら?当然、企業価値はあがるわけですから株主としてのキャピタルゲインはあるはず。でも不動産でも株式でもその価値が大きくなることそのものに課税されることはないわけで、それを転売、現金化して初めてキャピタルゲインが確定する。そして申告、納税。
でも報酬はゼロ。法人の転売も現金化もしないとなれば?
使えない金は意味が無いじゃないか、なんて考えるのは多分貧乏人の考え方で(笑)、たとえば資産の半分をタックスヘイブンに移す。そしてそこからの利益は一切タッチせずに、手持ちの半分の資産をその分、食いつぶしていくという方法も考えられますよね。でもそれは長く続けることはできず、ある時期にタックスヘイブンの方をいじらなければならなくなる。
本来、その時に納税義務が出て来るわけですが、では、その時に「税金のかからない国へ居住」していたらどうなるのか?
結局、ここなんですね。日本で今年の7月から施行された、出国税みたいな、(1億以上の)株式や債券を海外に持ち出すときに、キャピタルゲインのみなし税が掛けられるのは。でもそもそも株式も債券も持っていないことになっていたら、つまり最初から海外に隠していたらそれも無いことになる。
だから「海外での5千万以上の資産は届けなければならない」という法律ができたんでしょう。
こういう法律で慌てている人もいるようですが、普通に考えてみればアタリマエのことじゃ無いんですかね。逆に、ここに脱税をする抜け穴があったことが問題のはず。
ま、頭の体操としていろいろ考えるのは面白いですが、実行に移すのはどんなもんでしょうかね。ま、勝手にやれば良いってことでしかないのでしょうが、私としては面倒なことをやるくらいなら、タックスヘイブンに住んでしまうほうが良いと思います。
でも海外に住むなんて普通では簡単にできることじゃないですよね。自分の仕事の中枢が日本にあったら出るに出られない。
でも昔のように、横浜から船に乗って海外に出て、「これが今生の別れ」ってわけでもないのですから。そういう意味でのグローバル化の良さを享受出来る方向で、生活設計、ビジネス構築をするのは良いと思ってます。
でも海外で居住し続けるのは簡単ではなくて、永住権も必要だし、老後の蓄え、社会保障、子どもの教育も考えなくてはならないわけで、楽なことはこの世には存在しないってことなんでしょうね。(笑)
でも「いつか日本に帰る」「帰ってもどうにかなる」腹づもりとその状態を保てれば、あるいは「外国の地で最後を迎える」、「国籍をも変える覚悟」を持って外に出れば、金銭的なもの、仕事上のこと、あるいは生活の上でも世界の制度の差を利用していろいろできるってことですよね。
海外在住者、海外を目指す人達の間の情報交換はそこに面白さがあるわけで、国家を騙して儲けようとか、そういうことじゃないはず。
前の日記に書きましたが、ある国の非オーストラリア系の銀行から、オーストラリアのタックスファイルナンバー(納税者番号)を知らせてくれと連絡が入りました。また、オーストラリアでは2013年に、オーストラリア居住者が海外でオーストラリアドル建て債を購入する場合、同じくタックスファイルナンバーを提示しなければならないという法律を作った。これは「各国の非居住者の口座情報交換」と対になっているってことですね。
日本も背番号が付くようになれば、そして国内で「海外での口座開設にはそれの提示が必要」とか、アメリカみたいな厳しい法律を成立させることもあるんじゃないでしょうか。それに反するような海外銀行(証券会社も)、国はもちろん日本国家として制裁を加えることになりますし、世界は間違いなくそういう方向へ動いていると思います。
グローバル化を真剣に推進するようになればなるほど、国家の財源としての税収をしっかり確保しなければならないのは当たり前の話で、IT技術の進化でそれが簡単になりますし、近い将来、ガラス張りの世界になるんでしょう。
私はそれは非常に大事なことだと思っていて、公正で厳格なルールがあるから競争って成り立つわけで、ずるい奴が勝つような世界ではまともに仕事をする奴はバカってことになります。
それだからこそ、誤魔化すのではなくて、国の制度の違いをはっきり把握して、臨機応変にビジネスの形態を変えられるようにするべきでしょうし、当然、住むところもそれに合わせて流動的になっていくんじゃないですかね。もちろん税金だけの問題じゃなくて、様々な規制や優遇措置、社会保障も含めての話ですが。でもいつかそういう現役時代も終わる時が来る。あるいは大病もするかもしれないし、事故や持病の悪化もあるでしょう。ではその時にどうするのか、頭がボケてからリタイアしてからの収入の確保も同様で、寿命が伸びている今、無収入、あるいは低収入で20年、30年と生きながらえることが出来るのか。日本に帰って持ち家さえなくてもほんとうに大丈夫なのか。その時にはどういう生活になるのか。それを考えない海外進出は「子供が虫取り網を持ってチョウチョを追いかけるがごとく海外に飛び出てしまう」のと同じレベルだと思います。きっと楽しくてワクワクするでしょうが、そのツケはいつか必ず払わされる。私がその状態。(笑)
そういう意味でもやっぱり凄いと思うのはジジババのロングステイですよね。今のジジババはこのまま逃げ切ることが出来そうですし。(笑)
ううう、今日も凄く長い文章だ。書いている時にはそういう気はしないんだけど。読んでる人なんかいないんだろうなぁ。私だって他人様のこの量を見たら読む気がしませんもの。(笑)