「天」日本食レストラン

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ゴールドコーストで一番の日本食レストランと言えばやっぱり「天」だろうと思います。内容が良いし、でも値段も眩暈がするくらい。

この店が出来たのはいつ頃でしたでしょうか。初めて行った時にはかなりぶったまげました。こんな店そのものに金をかけてどうするんだと思ったし、食事の内容、料金にしても、これがゴールドコーストで受け入れられるとは全く思いませんでしたから。

どこかの金持ちがゴールドコーストの事情も知らずにオープンしたんだろうと思いました。そういうのって結構あるんですね。海外に行って日本食の不味さに、良い店を出せば客も多く来て儲かるんじゃないかと思う人は多くいるみたい。ところがどっこい、不味いとか、美味しくても高いにはそれなりの理由があるわけだけど、それがわからない人は少なくない。

ところがこのとんでもない店を出したのは、ゴールドコースト在住で回転寿司チェーンで成功した商売人。ゴールドコーストどころかオーストラリアの食事情、その中で日本料理屋がどういう立場であるのかなんてことは熟知している人。でもどうしてこんな金をかけた店、内容的にも高級店を出したのか、私には理解の外でした。

店に何度か足を運ぶうちに私が感じたのは、これは客の為に出した店じゃないということ。オーナーが自分のために出した店だと思うようになりました。自己満足以外、私には何も感じませんでした。当然、店もいつ行っても暇。店だけじゃなくてスタッフや材料にも半端じゃない金をかけているのはすぐわかる店で、この赤字って凄いんじゃないかと他人事ながら気になっていました。

あれから何年経ったでしょう。料理の鉄人を呼んでみたり、マレーシアにも支店を出したなんて聞きましたが、経営として成り立っているとは見えず、でも食に携わる者としてのプライドだけでやっていたのかもしれないといつも思っていました。

こういう店って、勝手にやってくれって思うだけで、客としてもそんなに良い気持ちじゃないし、後押ししようという気にもならないのね。だって客が主役じゃないんですもの。この辺りは私も商人の出ですからすぐにピンと来るわけで、客の立場としてはどうってことのない、金持ちの道楽にしか見えませんでした。

でも数年たって、段々と良くなっていく感じがしました。というか、やっぱりその店で働く、スタッフや職人のやる気や技術が良く見えるんです。毎日毎日、彼らが一生懸命ノウハウを溜め込んできたのがわかるような感じ。まぁ、それはまさにオーナーあってのことで、オーナーの思いが隅々に行き渡ってきたのかもしれず、店としてはかなり良くなっているように感じました。

決して高いだけじゃない、と思います。

また、どんなに頑張っても材料の仕入れが難しいわけですよ。どこでも似たようなものを仕入れ、それにどんなに手を掛けたとしても、材料の良さを超えるものは出来ないと私は感じていました。でも、そこにも最近違いが見えるんです。材料も良いものが集まるようになってきた様子。それに職人が手を掛けたら、他店は競争になりません。そんな様子がこの1,2年見えてきたような気がします。

店の作りに半端じゃない金が掛かっているのは誰が見てもすぐにわかりますが、その良さを常にキープして、サービス向上に努めている姿がよく見える店になっています。席に座ったときからストーリーが始まっている感じ。

最初に出てきたのがこの小さな巻き寿司ですが、コールドアペタイザーってことなんでしょう。手前に見えるものがワサビだったら普通ですが、これがアボカドとキュウリを摩り下ろして合えた物。想像を裏切られたし、美味しかったので、これからが楽しみと思う、最初の出し物として完璧。

とまぁ、いちいち出てくるものを説明してもしょうがないのですが、どれもかなり美味しかったです。以前は、限りある材料に日本食らしい手を加えたものが多かったのだけれど、無い食材には似たものを使うわけですよ。でも似ているけれど違うものだから、完成品もただの真似物になっちゃうのね。ところがそういう意味で一皮剥けたというか、真似物を作るんじゃなくて、今ある食材で何ができるのかを追求したであろう事が客にも伝わってくるのね。

これはカマンベールチーズを軽く揚げたもので、私はカマンベールが好きなので注文してみましたが、これじゃ和食でもなければ洋食でもない、でも美味しかった。私はそれで十分だと思うんです。以前は和食にこだわり過ぎていたような感じがしますが、そこから脱皮できたのかもしれず。

板さんが非常に良い色のマグロを切っていたので、「そのマグロはメバチ?」と聞いたところ、「いえいえ、色だけは抜群のキハダです」って。(笑)

こうはっきり言ってくれるのも嬉しくて、色ほど味は良くないというけれど、お刺身でお願いしました。確かに色は良いけれど、味は普通のキハダ。なんてことありませんでした。左に見えるのはヒラマサですが、上に掛かっているのはトリュフとなんとかを混ぜたもの、忘れました。(笑)

兎に角、この店は今までとは違って、普通の和食ではもうなくなっているのがすぐにわかりました。

また今日、絶品だと思ったのが牛肉のタタキ。和牛だそうですが、こんな美味しい牛のタタキを食べたのは生まれて初めて。また量そのものは少なくて、5つの山になっていますが、付け合せやソースを見ればわかるようにその5口が同じじゃないんですね。微妙に違う5つの味を楽しめる。

そういうきめの細かい配慮が全ての料理になされていて、同じ料理でも楽しみ方がいろいろという点で、本格的な和食、しかし海外では無理がある和食からの脱皮が完成したように思えました。

その他、美味しいと思ったのがこれ。海老しんじょう揚げ。でも食べてみると海老の味より蟹の味。聞いてみると、海老9割、ホタテ0.5割、蟹0.5割だとのこと。で、使っているかにはスパナクラブ。日本で言うアサヒ蟹。この蟹はかなり淡白な蟹ですが、こういう料理にするとかなり良い味を主張していて、こういう使い方もあるのかとびっくり。つまり地元にどこにでもある食材をもうまくつかう店になっているということ。これってどこでもやっていそうでやっていないのね。

そしてこれはなんとエビチリ。(笑)

これもなんとも言えない美味しさがあったのですが、いわゆるもう和食は通り越したんですね。創作料理で、フレンチの考え方が随分持ち込まれているような感じがします。和食では裏方のソースが存在感を出している。

そうかと思えば、ソッと出してくれたこの一品。ワサビのしょうゆ漬けなのですが、タスマニアで獲れたワサビだとのこと。どうもこれを摩り下ろしても日本のワサビのような風味がでないらしいのですが、料理に使うと違うよさが出るのかも。この単なるしょうゆ漬けですが、ワサビが主張しすぎることなく、箸休め、日本酒の肴として、最高でした。

料理そのものが和食から飛び出てしまっているからこそ、こういうのが嬉しいと思いました。まさしく日本の味。

結局、和食と言いつつ、本格和食をやっても外人にはわからない。ましてや材料が手に入らないから素材重視の料理はできない。となると日本でも材料費を落として、そしてそういう和食を創作和食と称して、わけのわからん和食が氾濫する時代もありましたが、海外の場合は、客が日本人ではないということを考え合わせれば、やっぱりそっちの方向へ行くしかないのだろうと思いました。

アメリカでもニューヨークなどで高級和食が流行っていると聞きますが、一体どういう和食なんでしょう。ただ私が想像するに、決して純日本風和食ではなく、外人客を意識したないようであるような気がします。これが本物だ、お前たちにわかるか?みたいな和食が流行る時代じゃないのでしょう。

やっぱり客のニーズが第一で、それを本物の和食か偽者か、なーんちゃって和食だというのは簡単だけれど、やってるほうはどう生き延びるか真剣なのが垣間見れたような気がします。

私は料理のウンチクを言うのはあまり好きではないのですが、今回は今までとは全く違う和食の姿に変貌して成功した例としてこの「天」を紹介したいと思います。これって私としては罪滅ぼしの面もあるんです。前は結構こき下ろしていましたから。(笑)

今までは暇な店だと思うことが多かった「天」ですが、今では結構繁盛しています。そして客の殆んどがオーストラリア人であること。これって素晴らしいことだと思います。日本人だけがチョロチョロ来ているような店ってすぐ潰れるのね。文句は言うけれど金は出さない、しょっちゅう来るわけでもない日本人客のことは忘れてしまうのが海外では成功の秘訣ではないでしょうか。

最後のデザートも美味しかったです。私はスイーツを食べることがほとんどないので、こういう食べ物の説明さえも出来ません。一番上に柚子のシャーベットが乗っていて、3層になっているデザートでした。

でもこの店の欠点は高いということ。しかし今のこの店ならリーズナブルと言えるかもしれません。他店で、昔から同じようなものを出しつつ、今の時代の流れに乗った料金体系にして、ちょっと調子に乗って飲み食いすると凄い値段になる「あの」私の好きだった店より「天」のほうがコストパフォーマンスは高いと思うようになりました。高いのは高いけれど、倍以上するわけでもないし、5割増しにも満たないかもしれない。でも店の作り、職人の腕、材料、味、サービスなど総合すると、コストパフォーマンスではこの店が勝つかも知れない。いわゆる、普通の店の妥協が無いんですね。ウチは高級店じゃないんだから、みたいな感じで手を抜き、でも料金はしっかり高い店ってあるでしょ。この店、「天」は高級店だという自負があって、それなりのことをやっている。

こういう店で、それなりに食べ方をうまく工夫するば、美味しくそしてそれなりの料金で飲み食いできそうです。

でもその元気は私には無し。酒がもう駄目なんですよ。今日も、さほど飲んでいないのに頭は痛くなるわ、眠くなるわ、最悪。

でも本音としては、板さんも10年以上前から知っている人で、腕はかなりの腕を持っているし、この店の吟醸酒も美味しいし、あと10年若かったら・・・と思います。

私としてはこういう店で、ランチでもやっていれば、ビール一本飲みながらランチで十分かもだわ。

ジジーはジジーなりの楽しみ方を覚えないとどんどん面白くない人生になりそ。

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