鮭?もう鮭なんか見たくもない

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ゴールドコーストはオーストラリアのクイーンズランド州。ここの名産ってなんだか知ってます?まぁ、牛は別にしても海産物なんですよ。っていうか、オーストラリアの海産物ってかなり漁獲高もあるのね。

じゃぁ、どうして我々日本人が嬉しいような魚が手にはいらないのか?

不思議ですよね。でもそれって牛も同じで、同じものが大量にあるってことだけなんでしょう。多品種じゃないのね。またエビもすぐ目の前の海岸からちょっと沖に出た辺りで毎日漁船がエビ漁をしていますが、生で食べるという習慣がない国ですから、獲った獲物の処理が駄目なのね。これは魚も同じ。でも最近の漁師は多少は日本流の仕事も覚えたらしくて「活き締め」なんてこともするようにはなったと聞いています。

でもそんなことはどうでもよくて、私達日系住民の欲しい魚が手に入るかどうかが問題。

大体、寿司屋に行ってもマグロが無いなんて信じられます?日本に行くとオーストラリア産インドマグロなんて多くの寿司屋が使っているのに。

あったとしても見た目がマグロっていうだけの水っぽいキハダマグロぐらいなもんで、メバチじゃ本マグロ(こっちでいうインドマグロ)なんて本当に貴重な魚。他の魚も似たようなもので、寿司屋に行くことほど悲しいことって無いんですね。あああ、ここは外国だと痛感します。なんでもあるクアラルンプールとは大違い。

でもねぇ、鮭だけはあるんですよ。どこに行っても必ずある。これがマグロの代用品みたいなもので、「おお、食いねぇ食いねぇ、寿司食いねぇ、鮭ならあるぞ」ってなもんで、寿司と言ったら鮭。刺身と言ったら鮭。何が無くても鮭。どこを向いても鮭。

こんな生活を20年以上続けていますと、うんざりなんてもんじゃなくて、鮭は大好きな魚でしたが、今では見るのも嫌です。

でもねぇ、塩シャケは好きなんですよ。

ところがだ!塩シャケもちゃんとしたのがないのね。当然普通の魚屋に置いてあるわけもなくて日本食料品店の冷凍モノを買うわけですが、これは塩シャケじゃないのね。塩を振った鮭。あるいは溶液に浸した鮭でしか無くて、いわゆる昔から日本の伝統食品である塩シャケじゃないんですよ。新巻き鮭とかあの鮭じゃない。(近年の新巻き鮭そのものが昔と違うとのこと。近年は生鮭に塩をしてそのまま冷凍。これを新巻き鮭としている。もちろん熟成されていない。)

だからこちら在住の日本人は言いますよ。自分で普通に売っている鮭を買ってきて自分で塩して作れば良いって。

おいおい、それって塩シャケじゃないぞ。なーーんてことを言うと、なんだ、このキチガイジジーと言われそうですが、最近ちょっと調べてびっくりしたのが、この現象って日本でも同じなんですってね。昔ながらの塩シャケって売っていないこともあるらしい。そして当然手がかかっているから高いし、また塩辛いからと敬遠する消費者が多いというのを知りました。

塩シャケってのはね~~、塩辛いけれど味の深みがまるで違うんですよ~~。

豚も同じで、塩を振っただけの豚と、塩漬けにした塩豚とまるで味が違うでしょ~と言いたい。塩に漬けて熟成させることで(酵素の働きで)タンパク質がアミノ酸の旨味成分に変わるんですとさ。だから世の中には塩漬けの食品がいろいろあるわけで、単に保存を良くする為だけじゃない。魚の干物(日本の!)がまさにそれですよね。

ってなことを言っても誰にも相手にされないわけですが、フト帰ってきた長男のことを考えた時に、きっと彼は本当の塩シャケって食べたことがないはずだと思ったんです。3歳からこちらで育ちましたし。

ということで、鮭なんか見たくもないと思う私ですが、日本のあの昔の塩シャケなら是非食べたいと思いますので、よし、この際、作ってやろうと思いました。新たな実験の始まり。

塩シャケなんて作ったこともないし、作っているところを見たこともないし、ただネットで日本伝統の塩シャケの作り方はとりあえず研究してみました。ただ古来から塩につけるにしても丸ごと漬けるわけで、切り身でやったらなにか違うかもわかりませんが、こんな実験のためにまるまる一匹使えませんし、そもそも冷蔵庫に入らないじゃん。ということで切り身で実験開始。

まずはニュージーランド産のアトランティックサーモンの切り身を買ってきました。これで20ドルちょっと。それにちょっとだけ塩を振って臭み取りとでも言いましょうか。決して捕れたばかりの新鮮な鮭ってわけでもないし、そのまま塩に漬け込む前に、一度シャワーを浴びましょうね、的な作業をしました。軽く洗ってから少量の塩を振ってそれをキッチンペーパーでしっかり巻いて、一晩冷蔵庫でお休み。

それだけでも結構水が出ますね。でも色も臭みもなく、身もきっちり締まっていて、このままでも塩シャケで通用するかもしれません。でも、ここからが本番。

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これに美味しい岩塩、じゃなくて普通のテーブルソフト(しかないしぃ)をしっかりまぶして塗ったくりまして、再びキッチンペイパーにしっかり包んで、それをラップでキツく巻きました。これって私にしてみると秋鮭に塩をごっそりまぶして上から重りを載せるという日本古来の方法を真似たつもり。(笑)

これを冷蔵庫に入れて、一週間そのままお休みいただいて、しっかりタンパク質をアミノ酸に替えてもらおうと思っています。塩漬けの豚とか牛タンとか、それと考え方は同じですね。生ハムも同じ。

どうなりますかねーー。

実はその後がまた大変なんですよね。その鮭は塩辛いなんてもんじゃないわけで、そのままじゃ食べられない。予定としては一週間後に、その鮭を薄い塩水に漬けて5~12時間程度で塩抜きをします。どうもこの工程が難しいらしい。塩の効き具合がこれで決まるんですね。

ところが今の塩シャケの製法では、最初から塩水に漬け込んじゃうそうで、その時の塩水濃度をちゃんと管理することによって、鮭全体の塩気を均一化できるとのこと(でも熟成が行われていない。ただの塩が染み込んだ鮭)。言われてみればなるほどで、昔の塩シャケって腹の部分だけ異常なほど塩辛かったですよね。あれって脂身で足が早いからわざとそうしたのか、身が薄いから塩が効きすぎているのかわかりませんが、漬けておく塩水濃度の管理で、全体の塩加減を均一にできるそうです。私もそれを真似る予定。(笑)

問題はその後なんですね。これを日本では秋冬の寒空で干したわけです。つまり、塩漬けで水分が抜けた鮭の次の工程で、その塩抜きすることによって今度は逆に水分を吸うわけで、それのまた水分抜きをするという面倒なことをする。だから塩シャケってのは東北地方でも冬場しか作れなかったとのこと。最後の乾燥が出来なかったんだそうです。暑かったら腐っちゃいますから。

では、常に熱いゴールドコーストでどうやって干す?

ここなんですねぇ、面白い方法がある。

塩分が高いと水分が抜けるとか、塩分を抜くと水分を吸い込んじゃうとか、これって要は浸透圧の働きですよね。人間の体も全く同じだそうですが、塩の濃度が高い方へ水分が移動して、均一にしようとする自然界のお決まりがある。

じゃぁ、それを今の科学でやってやろうじゃないかって発想です。つまり、塩に漬けて水分を抜かれ、次に塩を抜かれて水分を吸収した鮭に、塩、あるいは砂糖を使って、この浸透圧を利用して水分を抜いてやろうという計画。塩も砂糖も浸透圧の動きは同じらしいのでどちらを使ってもOK。でも塩や砂糖で包めばまたその塩分がまた鮭に入ってしまったら意味が無い。つまり、塩(あるいは砂糖)は移動させずに水分だけ移動させるという科学の実験です。

それに何を使うか?

セロファンを使います。セロファンって昔、粉薬を飲むのに使ったやつで、今では花屋さんが使っていたり。あのセロファンってとんでもなく凄いやつで、水分は通すけれど、塩分、糖分など分子が大きい物は通さないんですね。だから海水を真水にするのにセロファンが使われていたりするらしい。当然、バクテリア、細菌類もそれを通ることが出来ない。

要は、浸透圧による水分や塩分糖分の移動が起きる2つの物体の真ん中にセロファンを挟めば、水分だけが移動するって理屈です。具体的にどうやるかですが、水分を抜きたい物質をまずセロファンでぴっちり包む。そしてそれを塩なり砂糖なりでまた包むわけです。すると塩は向こうへ行けないけれど、向こうから水分は塩へ向かって出てくるということ。こういう実験は中学でやるはず。小学校?(笑)

セロファンには小さな穴が開いているからそういう不思議なことが起きるわけですが、どうもセロファンにはそのミクロの世界の話ですが、穴の大きさにも色いろあるらしい。何が問題かというと、塩分、糖分、あるいはバクテリヤや細菌は大きいからその穴を抜けられないわけですが、どうもアミノ酸は抜けてしまう大きさらしんです。つまり、水が抜けるのと同時に旨味成分も抜けてしまう。自然の力で干すと美味しさが違うってのはこういうことでしょう。また陽の光に当たるだけで旨味が増えるんだそうですね。酵素の働きが活発になるんでしょうが、これは機械で作った干し魚も陽に当てるだけで味が変わると聞いたことがあります。

ところがやっぱり技術の世界って凄いですよね。そのミクロの世界の穴を調節して、アミノ酸が通り抜けられないセロファンを作ってしまった。これは料理用のセロファンとして販売されているらしいですが、オーストラリアでの入手はきっと無理でしょう。

どうにかしたいですが、どうなりますでしょうか。

なんでこんなことに拘っているかというと、この実験が成功したら面白いことが出来るんですね。つまり、一夜干しの魚なんて干さなくても作れますし、時間を掛けると生ハムやパンチェッタとか作れるってことですから。でもこの浸透圧を利用して水分を抜く方法を習得しない限り、常夏の場所で魚や肉を干すなんて恐ろしいことをしないとならないわけですから。

でもその方法が習得できれば、塩とセロファンと冷蔵庫さえあれば、世界のどこへ行こうが、湿度100%だろうが、きっちり干し物を作れるってこと。キッチンペーパーでぐるぐる巻にして冷蔵庫で乾燥させるなんてこともしないで済む。夜の涼しい時間にハエやゴキブリの心配をし、腐らないか悩みながら干し袋で干す必要もなくなる。(笑)

面倒なことをしないで買ってこい?

あはは、それもそうですよね。でも売っていないとか、非常に高いとか、そういうケースは多いわけで、でも自宅で作れば自由自在にそして安く作れる。そしてもちろん、薬品も添加物も何も入っていない安全なものを食べることが出来るわけですから。

しかし、料理実験だのカイワレだの、塩シャケだか浸透圧だかわけわからないけれど、こんなことをしていていいのだろうか・・・・・。

(追記)

この日記では、セロファンは塩を通さないと書いていますが、私が使っている燻製用セロファンは塩を通すのがわかりました。塩の浸透圧を使って鮭の水分を抜いてた時に、鮭に塩が移っているのが確認できました。ただ、全部のセロファンがそうなのかというと、セロファンのミクロの世界の穴というか隙間は製造時に決定するようで、大きな穴、小さな穴のセロファンが存在するのだろうと思います。

今後は脱水のためにセロファンを使う時には砂糖とあわせることにします。砂糖の分子は塩より大きいですから、セロファンを通ることが出来ないはず。

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