私はオーストラリアの「鮭しか無い状態」にはいささかウンザリで見るのもイヤになっていますが、塩鮭は別。ただ、今の塩鮭って「塩をした鮭」であって、昔食べていた「熟成した塩鮭」じゃないんですね。だったらこの際、自作しようと挑戦したわけですが、
○ 5日間塩漬け
○ 二日間塩抜き
○ 7日間乾燥・熟成
したものを本日焼いてみました。
ちょっと焼きすぎましたが、ひとくち食べた途端、
「しょっぱーーーーーーーーい」
塩抜きしてから脱水する前に、ただ塩を振って二日間置いといた鮭と食べ比べして見た時のレポートはかきましたが、その時はさほどしょっぱさを感じなかったのが不思議です。
問題は味ですが、これも微妙でした。干す前にもそう感じましたが、ただ塩を振っておいた鮭より、昔懐かしい日本の塩シャケの味はするのですが、「美味しい~~~」ってほどじゃない。これは熟成の「程度」問題かと思っていましたが、そうでもなさそうです。思ったほど味に深みがありません。でもここでちゃんと書いておきたいことは、ただ塩を振って二日間おいた鮭よりは美味しいということ。でも絶対こちらのほうが良いと言える程でもない。
長男が味見をしたら、こんな塩っ辛いものは食べられないと簡単に却下。
彼は日本の昔の塩鮭を食べたことがないんですね。昔の塩辛いのはこんなもんじゃなかったってことも知らない。でも確かに今回のは今風の基準で言えばとんでもなく塩っぱい。
ただ、塩が問題ならたいしたことないんですね。最初の塩漬けの時点で塩を減らすか、塩抜きをしっかりすればよいだけのことですから。問題なのは味。塩との関係もあるでしょうから難しいです。
塩抜きをした時に真水で塩抜きをしました。プロは迎え塩と言って、塩水で塩抜きするそうですが、実際にやってみますと真水を使ってもすぐに真水が塩辛くなってきますから大した違いはないような気がします。ただ、もしかしたらその時点で塩と旨味も逃げているのかもしれず、プロが塩水で塩抜きをするということは、時間を掛けてゆっくり塩抜きをするという意味だと思うのですが、それは旨味を逃さないノウハウでもあるんでしょうね。
それとですね。鮭そのものにも問題があるかと思ったり。こちらでは鮭を3種類売っていますが、色も良くて分厚くて脂も乗っているキングサーモンみたいなのは値段的には2番めに高いのね。一番高いのは(多分)ニュージーランド産のオーシャントラウトだと思うのだけれど、見た目では負けています。もしかしたら、塩シャケがどうこう拘るより、買う鮭に拘ったほうがはるかに美味しいと思うのかもしれない。
いつかもう一度チャレンジしてみようと思います。その時には塩をそれなりの量にして、また塩抜きもしっかりやってみたいです。
ちなみに、パンチェッタとカラスミは今乾燥段階です。
カラスミはピチットシートを使っていますが、パンチェッタはな、な、なんとシリカゲルを使っています。
ピチットシート、あるいはセロファンではなくて意外や意外、面白いのはシリカゲルかもしれないと考えるようになりました。ピチットシートは凄いと大評判ですが、意外に乾燥(脱水)することそのものって簡単なのかもしれないと思っています。風に当てても良いし、日光に当てても、冷蔵庫でもOK。何もピチットシートやセロファンを使う必要もない。そして、急速に脱水するならシリカゲルが一番強力なのがわかりました。でも、脱水力が強いということは、表面、あるいは表面に近いところだけ早く乾燥するのもわかりましたが、実はそれでは駄目で、大事なことは、乾燥もじっくり時間を掛けてやるべきなのかもしれないということ。
つまり、強力だと言われているピチットシートも、実は浸透圧を使う媒体として水飴、つまり砂糖をつかっているようですが、砂糖は媒体としてはやんわり効くみたいなんですね。脱水だけが目的なら、それこそシリカゲルの中に放り込めば1時間で魚は干し魚になるくらい強力。でも時間を掛けてゆっくり抜くことが大事なんでしょう。だからこそピチットシートは水飴を使っているのだろうと思いました。
ではシリカゲルは強力すぎるのかと言えば、そりゃ食品をセロファンで包み、シリカゲルの中に埋めてしまえば凄いことになりますが、シリカゲルは普通小袋に入っているように、袋詰にして、脱水する対象の近くに置き、密閉するという方法を取れば、脱水はじんわりと効いてくるはず。そういう使い方一つで脱水力のコントロールも出来るのがシリカゲルで、もしかしたらシリカゲルこそ本命たる脱水剤かもしれないと思っています。
シリカゲルは電子レンジを使うなり、フライパンを使えば水分を飛ばして元の状態にできますし、なんと言っても安い。そしてシリカゲルは単なるケイ素、つまりガラスと同じですから毒物でも化学薬品でもなんでもない。木炭が消臭や除湿に使えるのと同じ理屈で、小さな穴、隙間が多くあり表面積が広くそこに水分を取り込むだけのこと。食べても大丈夫。以前、ドライフラワーを作ろうと思ったのですが、シリカゲルに埋めて脱水すると形もそのまま保てるのね。逆さに吊るして乾燥したのとはまるで違うドライフラワーになる。
でもシリカゲルで魚や肉を乾燥(脱水)させるかぁ?って思うじゃないですか。そんなことをしている人はネットの中でも見たことがありません。でも「シリカゲル」「干物」で検索すると出てきました。な、なんとプロがシリカゲルを使っていることもあるとのこと。
日本の魚の干物の作り方で「灰干し」というのがありますね。塩水に漬けた開いた魚を干す時に、灰の中に入れて水分を飛ばす製法がある。ところがその時にシリカゲルを使う業者もいるとのこと。これは違反でも何でも無く、添加物を入れているわけでもなく、水分を強力に抜いているだけ。
こういう風に考えると、乾燥(脱水)には色々なものが使われているのもわかってきましたし、フト思ったのは、白身魚の「昆布締め」。昆布ってカラッカラに乾いていて、必ず除湿剤が入っていますよね。実は私はガゴメ昆布にも凝っているのですが、そのカラッカラのガゴメ昆布をブレンダー(ミキサー)で粉砕して粉状にして、ガゴメ昆布水を作ったり、料理に入れたりしています。
私は蕎麦に納豆とこのガゴメ昆布粉を入れることがあるんですが、ちょっと時間が経つと、この昆布粉が水分を吸って、ガゴメ昆布らしい恐ろしいほどのネバネバが出てくるんです(ツユが殆どなくなってしまうくらい)。つまり、周りの水分をどんどん吸収してそういう風になるわけですが、これって脱水剤としての機能もあるってことですね。つまり昆布締めは、魚の余分な水分も抜き身を引き締め、そして昆布の旨味は魚に移るという「浸透圧」を利用した料理であるということに気が付きます。単に昆布をくっつけて旨味を付けているってことじゃないんですね。キーワードは浸透圧であるのがわかります。
放っておくと湿気てしまうような物質を使えば、乾燥(脱水)が出来るのと同時に、それらは水分を抜くのと同時に自分の持つ塩分や旨味を相手に移すってことなんですね。だからすぐ湿気てしまうようなお煎餅で魚を挟めば、適当にドリップは抜けて身は締り、お煎餅の味を移すことが出来るってこと。(笑)
アルコールもそうなんですね。浸透圧で水分が移動する。だからアルコール漬けも美味しくなるんでしょう。梅酒作りがまさにそれ。アルコールにつけてある梅は水分が抜けていくし、美味しくなるし、またアルコールには梅の味が出る。
そういう風に考えると、もっと何か使える面白いものがあるかもしれませんよね。今、私のボケ始めた頭には何も浮かんできませんが、昆布、あるいは昆布粉を使って何か面白いことが出来ないか考えています。あああ、椎茸もそうですね。干し椎茸。これも乾燥剤が入っているくらいですから、湿気を吸いやすい。つまり干し椎茸の粉を魚にまぶせば、適当に水分は抜け、魚には干し椎茸の味が移る。
乾燥(脱水)目的で使う素材もいろいろあるし(主に塩、砂糖、シリカゲル)、旨味を凝縮することもできるし、乾燥剤が持つ旨味を素材に移すことも出来る。
豆腐作りにもこれが応用できると思いました。豆腐の味を凝縮するには木綿豆腐でしっかり重石をかけて水分を抜けば良いですが、私は絹ごし豆腐が好き。でも絹ごし豆腐ってプリンや茶碗蒸しと同じで、全体を固めてしまう製法ですから、濃い豆乳を作らないとなりません。でも濃い豆乳を作るって結構難しいんですね。
でも絹ごし豆腐を脱水してしまえば良いということに気が付きませんでした。とりあえず普通の濃度の豆乳で絹ごし豆腐を作り、それを脱水して80%あるいは60%の重さまで持っていけば、とんでもなく濃い味の豆腐になるってこと。
アイデアひとつで似たような方法が何にでも使えそうですね。
でれーーっとしたどこにでもあるブロイラーの鶏をちょっと脱水するだけで、噛みごたえのある地鶏風に化ける可能性もある。
いろいろ楽しみが増えましたが、何かおもしろいアイデアはありませんでしょうか?
シリカゲル50g入の袋を6つ使って脱水中(理論的には120gまでの水分は吸う)のパンチェッタ。
ちなみに、かなり強力であるシリカゲルより凄いのも作られていて、シリカゲルの6倍の吸水力があるとのこと。ただ、シリカゲルを元に戻すには100-105度で水分を飛ばせば良いけれど、その製品は300度以上の温度が必要。
また、シリカゲルにはAとBがあり、Aは普通のシリカゲル。Bは高湿度だと湿気を吸い、低湿度だと湿気を出すそうです。これを使うと湿度を安定させることが出来る。
雑学ですが、塩蔵、つまり塩を使って保存食を作りますが、塩そのものには殺菌、抗菌の成分は何もない。Na-Clが殺菌剤の役目をすわけではなく、あくまで浸透圧によって雑菌の水分を吸い取ってしまうから雑菌が死ぬということ。
また雑菌、カビ等が繁殖するには水分が必要で、食物には二種類の水が存在する。一つは食品のタンパク質や炭水化物と固く結合した水分で、これを「結合水」と呼び、雑菌はこの水分を利用できない。ただ、自由に移動したり蒸発する水分があって、これを「自由水」と呼びそこで雑菌は繁殖する。だから、まず脱水の目的はこの自由水を抜くこと。ドリップもそれ。ただし、それをゼロにすることは不可能で、しかしそれには程度があって、自由水の存在割合を「水分活性」と呼ぶ。つまり科学的には、雑菌が生息できる水分活性値より下げてしまえば良いとされていて、細菌の種類、食品の種類によってその値は違い、その関係は明らかになっているのでそれを参考に生産者は食品を加工、維持するとのこと。
塩はこの自由水を取っちゃいますので、水分活性も下がって雑菌が繁殖する場そのものもなくなるんでしょう。だから保存が効く。これは砂糖漬け、アルコール漬け、あるいは水分を飛ばしてからの油漬けも同じことだと思います。
また、タンパク質は時間とともに酵素によってアミノ酸に分解し、旨味が出る。だから急速に塩分を与え、塩を抜き、乾燥させても意味がないんですね。調度良い「時間」管理が大切なんだろうと思います。塩入れはその旨味を創りだす時間を稼ぐためであると考えるべきかもしれませんね。でもプロはその分解酵素を添加したりいろいろやるんでしょうね~。
脱水に使うシートですが、浸透圧によって移動するのは水だけにする場合、2つの液体(物質)の間に半透膜を使う。その代表は我々が知っているセロファンであるわけですが、工業製品でいろいろある様子(セロファンにもいろいろあって、我々が期待する役目をしないものもある。防水、防湿性のもあるってこと。また色付きセロファンは色が食品に移ることもあるので注意。食品等包装規格にあったものを使う)。ピチットシートに使われているのもそれで、中には片方からの水分移動しかさせない製品もある。凄いですねぇ。一度出た水分が元に戻ることはないんですから(セロファンは両方通行)。でも使うときに裏表を間違えたら悲惨なことになる 笑)。これらは主にチーズや加工肉の製造に用いられている。私も是非欲しいけれど、30X40を20枚だけくださいってわけにはいかないのね。楽天でも売っていますが、1000枚単位 (笑)。でも一枚あたり10円台。
鮭が塩辛い理由がわかりました。脱水時にセロファンと塩を使ったのですが、その塩がセロファンを通して鮭に入ってしまったってこと。
これは、私が使ったセロファンがたまたまそうだったのかしれませんが、私はセロファンは塩の分子を通さないと思っていたのです。そういう風に説明しているサイトは多くあります。でも塩は通すと書いているところも発見しました。どちらが正しいのかというより、セロファンの小さな小さな隙間は製品によって変えることが出来ると聞いていますし、塩を通すセロファンと通さないセロファンがあると私は解釈することにします。また最初に買ったセロファンはたまたま水を通さないセロファンでした。調べてみると防水防湿用のセロファンなど色いろあるようです。
私が使っているセロファンは「燻製用」として売っているセロファンですが、そういう隙間の大きさのセロファンなのかもしれませんね。
塩が鮭に移ったのは間違いがないと思います。なぜなら鮭を脱水前に試食した時にはこれほど塩っぱくはなかったから。そして鮭の身の厚い部分は塩が薄かったから。大量の塩を使ったのにそういうことになっているということは、セロファンを塩が通ると言っても、すんなり通るほどでもないのかもしれません。
この辺の確認のための実験は多分やらないと思います。砂糖を使えば良いだけのことですから。
もしかしたらピチットシートが水飴を使っているのも同じ理由かもしれない。
塩を使った浸透圧の実験レポートを見ましたが、対象が塩辛くなることもあると書いてありました。また温度を上げると分子の動きが活性化するのと、セロファンの穴が広がるので、対象は間違いなく塩辛くなるそうです。つまり塩の大きさってちょうどギリギリぐらいなんでしょうね。
ちなみに砂糖の分子は6倍の大きさがあるようで、浸透圧は6分の1の様です。だから砂糖を使う場合には量を増やす(濃度を高くする)。また塩は不思議な物質で、1分子が2分子のような動きをするので、結果的に砂糖の12倍の力を発揮するそうです。
海水を真水にするのにセロファンも使えるようなので、塩は通さないと思っていたのですが、若干は通すということなのでしょう。今回の水抜きした塩鮭ですが、5日もセロファン+塩で脱水しました。それほど長い間やったのに、塩っぱい程度で、鮭の内部は塩辛くなっていませんでした。もしセロファンが塩を普通に通すようであれば、鮭はとんでもなく塩辛く食べることは不可能になっていたはず。
ピチットのような脱水シートを使って魚の干物や肉の脱水を行っても美味しくないはずだと思いたい傾向があると思います。私だって、子供のオムツと同じような原理で水分を抜いたアジの開きが美味しいとは思えませんもの。(笑)
でも天日干しとピチットのような脱水シートを使ったものとどういう違いがあるかの研究レポートを発見しました。結論から言うと脱水シートの勝ちみたいな感じです。空気に触れずに脱水することが出来るのが一番のメリットではないかと思うのですが、そのリポートには「脱水シート法による干物のほうが、脂質やタンパク質の変化が天日干しより少なかった」また、旨味成分の違いなどは大差がないようです。
天日干しにおよび浸透圧脱水法によるアジ干物調整における成分の変化 ← クリック
でも天日干しにしたほうが美味しいと聞いていましたし、働く酵素が違うというような覚えが・・・。また天日干しではない干物でも一度太陽に当てるだけで美味しくなるとも聞いてました。でもそれに関してあらためて調べてみると、天日干しのほうが美味しい科学的根拠は無いようです。気分の問題でしょうか。自然、無添加が絶対に良いと考える信仰と似たようなものかもしれません。
ただし、天日干しにしますと、表面が早く乾きますので、内部の水分含有が高くしっとり感があるとのこと。でもこれも眉唾のような気がします。表面が乾けば内部から水分は表面に移動して来ますから。水分の内部での移動がなければそもそも干物は作れないことになるはず。でも干してすぐ食べれば美味しいんでしょうね。でも数時間もしない内に水分分布は平均化してしまうんじゃないでしょうか。
うーーむ、それでもやっぱり天日干しが美味しいと思う私。(笑)
天日干しって表面が早く乾くというより、外側だけちょっと焼いたのと同じ状態になっていませんか?薄皮が張ったようになってますよね。あの薄皮が美味しいんですよね。あれは乾いている言うというより、タンパク質が(温度によって?)変性しているのだと思います。うーむ、あの薄皮が着くのは天日干しだからってこともないか・・・。
もし早く乾かしたほうが良いとするなら、シリカゲルを使ったら天日よりもっと早い。
でも調度良いのが天日干しってことなのかもね。でもそれを言うなら、陽の照り方で出来具合が大きく変わるはず。うーーむ、そういう難しさがあるのが干し物なのかも。
何でも奥が深いわ。(笑)