前の日記で私がホテルの中の日本料理屋で爆発したと書きましたところ、それに興味がある読者が若干名いるようなので、いまさらとは思いながら書くことにします。(笑)
まぁ、爆発とか切れたというのは私のいつもの大げさに書くキャッチでしかないのを最初に書いておきます。m(_ _)m
この日本料理屋には今までに何度も行ったことがありまして、それなりに気に入っている店です。決してハイクラスではないものの、いわゆる「なーんちゃって和食」の店ではないというのが私の認識でした。
またこの和食店を知っている人は、かつてはちゃんとした日本人の板前さんがいてそこそこの繁盛店だったのはご存知のはず。でもその板さんは新しく出来た「稔」という店に移り、そしてまたスバンジャヤのSS15にある寿楽に移り今にいたっている。
今回行った時にも、大トロはもちろん殻付きの生きている赤貝、キンキなどを置いていたし、日本酒の品揃えも良いですし、そこそこの店。
ですから今回も夕食のハシゴの最後の店として一杯飲んで酔っ払って寝ようと思っていたわけです。
寿司カウンターに座り、大好きな上善如水を頼み、幾つかのツマミ、そして刺し身は何かあるかなぁと目の前のガラスケースを見た時に、ヒジョーーに大きな違和感を感じたのです。ガラスケースが異常に汚いのです。曇っているしよく見ると水滴の「痕」があちこちにたくさん付いている。
なんじゃこりゃと思ってガラスケースを触ってみたんですよ。そうしたら「ザラザラ」するんですわ。嘘だろーと思いつつ、おしぼりでガラスケースをゴシゴシやってみるとちゃんとツルツルになる。あのガラスケースがこの状態って、多分、数ヶ月は放置し、中はホースで水を流しているだけのはず。水滴の跡があちこちにあるのはその証拠。磨きもしない、拭くこともしていないはず。
要は「生ものを入れるケース汚いまま放置している」ってこと。それこそ2,3ヶ月放置した自動車、あるいは何週間も放置したお風呂場の鏡みたいなもんでしょうか。
「キタネェ~~~」と思ったら背筋がゾクゾクしたわけです。その中に入っている刺身類は大丈夫かと・・・・。
刺し身をよくよく見てみますと、ずべて皿の上に乗せてあって「汁」が溜まっている。これってきっと店を閉めるときにはそのまま皿に載せて冷蔵庫に入れている雰囲気。どんな匂いがするんだろうと気になるような刺し身の扱い方。
となりのガラスケースを見てみると、そこには大量の鮭。柵で言えば20本以上あるんじゃないですかね。それこそ100人ぐらいの団体さんのために用意してあるような感じで、ガラスケースの中に押し込んである。まるで在庫の豊富さを誇示しているような・・・。
寿司屋のガラスケースってなんのためにあるのかさっぱりわかっていないと思いました。
そんなことを思いつつ、刺し身は全く食べる気がしないのでおつまみ類だけを頼んで日本酒を飲んでいたのですが、目の前にあるその汚いガラスケースが常時、視界の中に入ってるわけですよ。だから目の前のツマミにしても「これは大丈夫か?」なんて気になりだすし、またいろいろと頭のなかでぐるぐる考えが巡るんですよ。
で、とうとう一言。
ダ (周りに客がいないのを確かめて)「ちょっと悪いけれど、このガラスケースを最後に洗ったのはいつ?」
板 「毎日洗っています」
ダ 「そうとは思えないけれどね。私の生涯でこれほど汚いガラスケースを見たことはない。」(これは本当のこと)
ダ 「日本人のシェフはいるの?」
板 「いません」
ダ 「そっかぁ・・」(これ以上話しても無駄だと思った)
するとその板さんは奥に入って別の板さんを連れて来ました。この二人の板さんは前からこの店にいる板さんで私も顔は知っている。奥から出てきた板さんは前はカンターの中にいた人。きっとこの人が今では板長なんでしょう。
だからまた私は同じことを聞いたんですよ。
ダ 「最後にこのガラスケースを洗ったのはいつ?」
板 「毎日洗っています」
ダ 「じゃぁちょっとこれを見て。このガラスはザラザラしているけれど、オシボリで拭いたら綺麗になるから」(と私はそれをやってみせた)
板 (ガラスケースを触ってチェックすること無く)「毎日洗っているから綺麗です」
ダ 「綺麗じゃないじゃないか。こんな汚いガラスケースに刺し身を入れて、どうやったら客はこの刺し身を信頼できるんだ?」(皿に溜まっている汁のことは言わず)
板 「・・・・無言・・・・」
ダ 「もっと衛生管理に気をつけないと客を殺すことになるぞ」(と大げさに言った 笑)
板 「・・・・無言・・・・」
ダ 「・・・・無言・・・・」
これだけのことです。
日本人シェフがいないというのを聞いて、奥から出てきたチャイニーズの彼が板長なんでしょうが、きっと自信満々で働いていることだろうし、何を言っても無駄だろうと思ったんですよ。
ところがですね、この時、寿司カウンターには3人の板さんがいたんですが(客はいない)、その中に15,6歳の少年がいたんです。彼は見習いのはずですが、キョロキョロしながら仕事をしていました。でも彼が私のことをチラッチラッと見ながら仕事をするし、他の板前は客の方なんか見もしないで自分のやることに一生懸命(暇なのに)で、その少年がちょっと浮いているというか気になったんですよ。
きっと彼はここでいつか一人前の和食の職人になろうと頑張っているはず。
その彼を見て、私はやっぱり一言言おうと思ったんです。「ここは君が修行する場所じゃない」「和食の真似事を真似ることしか出来ない」と伝わったらいいな、と。
きっと「日本人には五月蝿くて偉そうで変な奴がいるんだなぁ」と思っただけかもしれない。でも彼の修行の中でこういう客がいるのを知るのも一つの経験だと思ったんです。いつか彼が本物の和食の職人の下で働いた時に「何やってるんだ、ばかやろう!」と言われたとき、「ああ、こういうことか、日本人は店も客もこういうことを大事にしているんだ」とわかるはず。
だからその青年がいなければ私も何をいうこともなかったと思います。勝手に「和食の真似事」をやっていればいいし、おかしいと気がついた客は行かなくなるだけですから。
でも正直腹がたちましたね。最初に書いたようにこの店にちゃんとした板前さんがいた時にはそんなことはなかったし、また去年行った時には裏に日本人の板前がいましたし、でも彼はその店の専属ではなくて、他の系列店も含めて何店舗か見ているようなことを言っていたかな。忘れました。
今もそういう立場の日本人がいるとしたら、一体何を教えているのかと思いますし、その彼があの異常なガラスケースを放置しているとしたら、全く役に立たないスーパーバイザーだし、またそれを放置している親会社もなんなのかと疑うしか無いと思いました。
でもその日本人もやめたらしいことを聞きました。
私は「なんちゃって和食」に文句を言ってるんじゃないんですよ。ここは勘違いしないでいただきたい。
そもそもこういう商売は
○ どういう場所で
○ どんな商品、サービスを
○ どんな客をターゲットに
○ どんな値で出すか
それは店が勝手に決めることで、料理が中途半端だの高いだの不味いだのいうのは客の我儘なんですね。よくあるなんちゃって和食店は、そういう商品を喜んで買ってくれる客をターゲットにしているだけのことで、そもそも海外では「五月蝿いだけでケチな日本人」を相手にしていたら簡単に潰れちゃうんですね。だからよっぽどの大都市で、良い物に高いお金を出してくれる客がいるような場所じゃないとまともな店は成り立たない。
そんなことはわかりきっていますので、そういうことに私は腹がたったんじゃないですよ。
何をどんなふうに、どんな価格でだそうで私は文句は言いません。それは自分の趣向と店の方向性が違うだけですから。
でもね、「衛生」に関しては全く別なんですね。これは高級店だろうと、一杯飲み屋だろうと関係なくて、「衛生には気をつける」のは基本中の基本で、「これがこの店のやり方だ」なんてのは通用しない。汚くて不衛生で良い訳がない。
私が生まれ育った家も飲食店でしたが、最高の商品を安い価格で「多くの客に喜んでもらう」なんて理想を追っていたわけじゃないんですよ。必ずどこかで妥協して、特定のレベルの客層にターゲットを絞って、その中で頑張るだけであって、あれもこれも最高な状態で提供するなんて不可能。
でも衛生面だけは妥協できない、絶対にしてはならない分野。
素材の匂いを嗅ぎながら「まだ使える」なんていう中華料理は別にしても、生もの、刺し身を扱う店の衛生面がアウトだったらどうなるんですか。
そんなことは当たり前の話で、生ものを扱う店は、木箱を使ったり、布巾で包んだり、あるいはザルや木の葉を使ったりするわけだし、それを入れる容器はもちろんのこと、客の前に並べるガラスケースは素材がそこでアピールする「大舞台」じゃないですか。そこを汚いままにするなんて話の外なんですね。
日本の文化、伝統を、そしてそれを築き上げた先人たちを馬鹿にしていると感じたわけです。
当然、衛生管理も考えていない、客のことも考えていない、要は「真似事」をしているだけ。
あああ、これがマレーシアなんだ・・・とは思ったものの、私はあの輝く目をした若者には何かを感じて欲しかった。
それだけの話です。