鮮家ってあちこちにありますが、一度も入ったことがありませんでした。
でも非常に興味を持っていました。なぜって鮮家はスシトレイングループの店だから。このスシトレインって会社は20数年前にゴールドコーストに生まれ(私も当時の小さな店から知っている)、オーストラリアで大きくなり、オーストラリアの回転寿司業界を引っ張ってきた会社なんです。社長のY氏はかなりのやり手。
そのスシトレインがマレーシアに店を出したと聞いたのが数年前。ゴールドコーストにある日本料理屋「天」がKLに進出したと。へ~~と思っているうちに数年経ち、我々がマレーシアに上陸した去年の9月にはすでに何店舗も展開していると聞き、さすが・・と思ったもんです。
今では「天」「一郎」「華家」「鮨家」「麺屋武蔵」「麺屋神風」等を経営している。
きっとマレーシアでも成功するはずだと私は思っていて、それは社長の商売の上手さと、彼らの強みは「ベースがゴールドコーストで海外での和食商売を熟知している」ってところなんです。系列のあちこちの店に行ってわかることは、オーストラリアで働いていた人が結構こちらに来ているのね。モントキアラの「鮨家」の元店長もゴールドコーストにいた人。
これってとんでもないアドバンテージで、彼らは当然英語もわかるし、英語でスタッフを使えるし、渉外も問題ない。そして「海外での和食はどうあるべきか」ってのを熟知していて、「日本の良いものを持ってくれば売れるだろう」なんて馬鹿なことは考えていないのね。
日本の良いものを持ってきて喜ぶのはそこに住む日本人ぐらいなもんで、でも海外の商売は日本人を相手にしていたら成り立たないんですね。どうしたって現地の人に受け入れてもらわなくてはならない。でも日本から離れすぎてもいけない。この辺はまさに社長の執念みたいなものがあるはずで、日本の名店、繁盛店が海外進出しても私はスシトレイングループの競合にもならないだろうぐらいに思っています。今でもそう思っています。
そんなこともあって「鮮家」も楽しみにしていました。
ところが・・・、これがスシトレイングループか?と思うぐらいびっくり。
店の感じは非常に良いと思いました。昭和がそこにありました。これってデサスリハタマスの「浜笑」とコンセプトは一緒かな、なんて思ったり。
ノスタルジーにどっぷり浸かるのが大好きな私としてはこういう店は嬉しくて大好きで、若い頃に飲み歩いた居酒屋を思い出します。
メニューを見て半端じゃない種類にびっくり。ありとあらゆるものがあって、日本の居酒屋が凝縮されたようだと思いました。
そしてそのメニューは当然、古くから馴染みのものばかりでワクワクするぐらい。
こんなものを頼みました。
蛍イカの沖漬け。
長芋。
イカ納豆。
タコ焼き。
鶏の唐揚げ。
ありゃ、写真がない。
鮭の皮を揚げたもの。
レバニラ。
カモとほうれん草。
エビチリ。
いい感じでしょ?日本の居酒屋と全く同じ感じです。
ところが、箸を持ったところから異変が・・。
3人の割り箸がみんなこんな感じでちゃんと割れない。
こんなのはよくあることだなんて思う人もいるかもしれませんが、それってとんでもなくて、こういうドジなことをやらかすスシトレインじゃないんですよ。他のなんちゃって和食店ならいざしらず。
そして写真の順番の様に食べだしたのですが、「ホタルイカの沖漬け」とか「長芋」「イカ納豆」なんてのは、まぁ、どこでも一緒。そして「タコ焼き」ですがこれもいわゆる居酒屋のタコ焼きで、タコなんか入っているんだかいないんだかわからないぐらいで、さほど美味しくない。家で作ったほうが間違いなく美味しいレベル。
鶏の唐揚げも、「マレーシアの美味しい鶏」なんていうのはまるで関係ない平均以下のもの。シャケの皮を揚げたものはパリッとしているものと「これはゴムか?」みたいなのが混在。
そして楽しみにしていたレバニラなんですが、甘くてびっくり。でもま、これはマレーシアに合わせたんでしょう。でも「スターチ(片栗粉とか)」を効かせすぎてヌルっ、ボテっとする。
「この店もマレーシアに味付けを合わせているんだろうね。でもましょうがないね」、なんて話していて出てきた「鴨肉とほうれん草炒め」はなぜか塩っぱい。嘘だろ~~~~。
そして「エビチリ」。まずはソースの味見をしたらまさに「日本のエビチリの味」。これを海外にいると食べたくなるんですよね。ニヤニヤしながら海老を口に入れてびっくり。もちろん冷凍エビでしょうが、「これほど安っぽい海老って売ってるのか?」と思うほど、パサパサと言うか萎れている感じの海老。こういうのってここ数十年、食べた記憶がありません。
どうなっちゃってるんだ?と3人で顔を見合わせちゃいました。3人共ゴールドコーストのスシトレインはよく知っていますし、社長がどういう商売をする人か、どういうこだわりを持っている人かってのも結構わかっているつもり。だから、「こんなはずはない」って3人が3人共思ったわけです。
でもま、「天」を頂点として「華家」「鮨家」「一郎」とちゃんと中身を変えて広い層に受け入れられるようにしているわけで、「鮮家」の位置づけとしては「大衆居酒屋」だからこれで良いのかもしれない。
ダボ 「居酒屋って飲みに行く場所だから、料理が美味しいの美味しくないのって言うべきじゃないんだろうね」
長男 「そんなことないよ。やっぱり美味しいところに行くに決まっているじゃん」
ダボ 「でも結構客が入っているってどういうことだ?」
長男 「うーーむ」
ダボ 「(ヨメに)この中でどれか家で食べるより美味しいものってあった?」
ヨメ 「ない。全部、家で作るほうが美味しい。」
ダボ 「家にはイカ刺しもホタルイカもねーーしーーー (笑)」
ヨメ 「あんた馬鹿じゃないの。ったく・・」
てな話を小声で話していました。
こういう料理のレベルの店って結構あるんだろうと思いますが、これがスシトレインの店か?ってのが信じられないんですよ。スシトレインって私が思うに「常に戦略的」で「手抜きはしない」会社だと思っていますから。それともこの店がこういうレベルだってのを社長は知らないのかもしれない。
スタッフに愛想の良い日本人女性もいるし、他のスタッフもまぁまぁ。決して悪くない(良くもないけど)。
残念だ~~~~~~~~~~~~~~~~~~。
実は最後に何を食べようか楽しみにしていたんですよ。居酒屋風の「カツカレー」も良いなとか、系列店は鮮魚を扱っているからこの店も良い魚があるかもしれず、鮨を食べてみようかとか。
でも大食いの私なのに食欲が一気に失せました。
食べるものを残すのが嫌いな我が家ですから、綺麗に食べるか残り物はテイクアウトを必ずするんですが、今回は食べ残しすることになりました。こういうことってマレーシアに来てから初めてかもしれない。いつもはほんの二口、三口残っても持って帰りますから。
みんなお腹が空いていたのにここで箸はストップ。終わり。
この鮮家はパブリカの中にあるお店で「居酒屋風」です。他の鮮家には行ったことがありませんし、他の店はわからず。
本当に残念です。
でも私はスシトレイングループには一目も二目も置いていて、このグループがマレーシアの日系和食部門で一位になる日が来るだろうと本当に思っているんですよ。それと「楽膳」「寿司三昧」「蔵」「北海道市場」(や正直屋、パスタ三昧)を展開するゼンショーグループ。このグループは前は店舗に日本人を置いている店は何件かあったけれど、今ではほとんどいないのね。これも私にはとても不思議で、楽膳はどの店に行ってもレベルはそこそこだし、和食も結構ちゃんとしてて決して「なんちゃって和食」じゃないと思うんですよ。ワンワールドホテルの中にある「蔵」も同じく。でも現地スタッフだけでやっているのね。
これって不思議なくらいで、日本から進出してくる店なんか、日本人板前がいる間だけは良い、なんてのがいくらでもあるのに。
鮮家も頑張ってくれ~~~~~~~。