ヨメサンが日本に行って一週間以上経つけれど、私としては全く寂しいなんて思わないし、家事も全く苦にならない。一番手が掛かるのが料理だけれど、実験好きな私としてはいちいち文句をいう人がいない方が色々出来て嬉しい。冷蔵庫、冷凍庫にはストックがいっぱいあるし、早く食べないと悪くなる。
てなもんで、さて今日はどうしようか悩んだ時、フト頭に浮かんだのが「納豆スパゲティ」。納豆は大好物だし、スパゲティも大好き。おーーし、今日は納豆スパゲティに決定。
どう作るかなんてまるで迷わず。私が高校生の頃、当時かなり有名だった渋谷は宇田川町にある「壁の穴」というスパゲティ専門店でバイトをしていた。小さな小さな店で、確かスタッフ3人で回していたはず。私は当然使いっ走りで洗い物専門。でも紅茶やコーヒーを入れたり簡単な料理、つまり「納豆スパゲティ」や「タラコスパゲティ」は私が作っていた(混ぜるだけ)。
だから納豆スパゲティなんてお手のもんで楽勝~~~~。
と、思ったのだけれど、どうやって作ったのかまるで思い出せず。45年前のあの日は遠い昔。
冷凍の納豆を解凍し、スパゲティは細いフェデリーニを茹でながら記憶の底に沈んでしまった納豆スパゲティを思い出そうとしたのだけれど、全く駄目。完璧に忘れている。
じゃぁ、どうやったら美味しいのが作れるのかいろいろ想像したのだけれど、思考停止状態で何も浮かばず。ただ、卵の黄身は上に乗せるのではなくて納豆と混ぜたような気がするので混ぜた。でもその他に何を入れるのかまるで思い出せない。しょうがないので味付けはそばツユのみ。
普通に茹でたフェデリーニの上にその納豆を乗せ、我家で一番美味しい海苔を刻んで乗せた。
うーーむ、絶対違う。こんな単純なわけがない。
これじゃただの納豆ぶっかけスパゲティでしかない。見た目も悪いし、まずそう。量も3人分。(笑)
でも食べてみたらそこそこ行ける。でも大好きな納豆とスパゲティが合体しただけ。
食べながら段々頭に浮かんできたことがある。確かボールにバターを入れて、そこに茹でたスパゲティを入れてバターを馴染ませたような気がする。ということで後からバターを投入。うんうん、こんな感じだったはず。
それと・・・・、大葉を刻んで入れていたような気もする。でも大葉なんか無い。もしかしたらバジルでもあれば良いのかも。でもそれだけじゃなかったなぁ。なんだろう。それと味付けがそばツユなんてことは絶対になくて、洋食っぽい味付けだったような気がする。
なんだっけ、なんだっけと考えながら食べている内に食べ終わった。
大失敗の納豆スパゲティ。
壁の穴って凄い店だったなぁ。ほんとうに美味しかったし、こんなのを食べたいと言えば何でも作ってくれた。アルバイトをするようになってからも週一で好きなものを(たとえステーキでも)食べさせてくれたっけ。ここの親父さんには本当に可愛がってもらった。その後も10年以上通ったかな。壁の穴はどんどん有名になって三越の中に店舗を出したり、あちこちに支店が出来始めていたっけ。でも大きくなるに連れて味も落ちていったのね。私の大好物だったサーモンのホワイトソースと、エビのホワイトソースがあったのだけれど、昔は別々に作っていたんですよ。それが忙しくなるようになってから、注文が入ってからホワイトソースにサーモンかエビを合わせるようになった。これじゃ出来上がりの味がまるで違うのね。そして親父さんが亡くなってからは、なんだか名前だけ有名なスパゲティ屋になった気がして行かなくなった。
ちなみにこの店でバイトをするようになったのは借金があったから。高校生のくせにこの店に出入りしていていつもツケで食べていた。で、支払いはなんと年に一回、大晦日。めちゃくちゃ安くしてくれたけれど、それでもウン万円にはなるわけで、アルバイトをせざるを得なかったって話。
実はもう一つ理由があって、私が学生服を来てガキのくせに常連ヅラしているのを見染めた人がいるんですよ。宇田川町にはNHKがあって、職員の客も多かった。で、その人が、プロデューサーらしいのだけれど、客として行っていた私を見て、興味を持ったらしく使ってみたい、紹介してくれと壁の穴の親父さんに言ったらしい。その話を聞いて、私は天にも登るような気分。で、店でバイトしていればすぐにその人に会えるだろうという話になった。
今思い出せば、その人に直接会いに行けば良いのだろうけれど、まぁ、それほどの話でもなかったんでしょう。興味がある程度らしいから、偶然会えるような状態を作ったほうが好ましいってことかも。いやいや、確かその人の名前とか部署がわからなかったんじゃなかったけか。
で、ある日、私がバイトしている時に、そのNHKのプロデューサーが店に来たんですよ。で、ドラマで使える新人を探していると私に言うわけね。心のなかでどれほど盛り上がったかわかります?
ところが~~
その私の期待を裏切って、そのプロデューサーが言った一言。
「君、そんなに太っていたんだ?」
この言葉で会話は終わり。その後、全くその話は出ず。(笑)
遠い昔の思い出。