3年ぶりの焼き鳥店【酉玉@パブリカ】に行って来た 

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我が家は外食が非常に少ない家ですが、それに拍車をかけたのが「コロナ」でした。2年以上も「籠城生活」をしていると、本当に外へ出なくなっちゃうし、それが平気になってしまう。

焼き鳥の「酉玉」にも、もう3年間も行っていないのかと気がついて驚いたほどです。息子は友人と何度か行っていたみたいですが、我が家として酉玉に行くのはまさに3年ぶり。

でも酉玉に行かなかったのはコロナのせいだけではなくて、酉玉の焼き鳥以上に好きだった「焼き手の力(リキ)ちゃん」が突然、日本に帰ることになったから。

私は日本の【焼き鳥の技術レベル】がどれほど凄いのかは知りませんが、少なくとも「力ちゃんは凄い」と思っていたわけです。おしゃべりも面白くて、力ちゃんに会いに行くのが楽しみでした。

力ちゃんが個人的な理由で日本に突然帰ることになって、では誰がその後をやるのか。焼き鳥って切った鶏を焼けば良いなんてもんじゃなくて、鰻と同じ様に「串打ち三年、焼き一生」と言われる職人技。ま、どんな業種でも同じだとは思うものの、焼き鳥って「素人にもできそうな気がする」のね。「切って串に挿して焼けば良いんでしょ?」みたいな。

でも自分でやってみるととんでもなく難しいのはすぐに分かるし、特に「焼き」なんて到底素人にできるものじゃないのはすぐに分かる。

それを考えると、酉玉では力ちゃん以外の「ちゃんとした焼き手」がいたとは思えないし、ヘルパーがいたのは間違いがないにしろ【力ちゃんがいない酉玉がまともな焼き鳥を出せるわけがない】と思っていたわけです。

ですから今回も、ちょっと食べてアウトだったらすぐに店を出て、並びの「シャカリキ432」にでも行こうと話をしていました。

ところが~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

結構、美味しいと思ったんですよ。

結局、食べたのは昔からの我が家の定番で、一般的な焼き鳥である「ねぎま、正肉、手羽」などは一切頼まず、「心残り、提灯、せせり、まるはつ、モミジ、ボンジリ、アブラツボ」みたいなものばかり。でもレバーとかつくねも頼みました。

そして焼き場に立っている焼き手とも結構話をしたのですが、驚いたことに「彼は力ちゃんがいなくなってから初めて調理をした」というど素人中のど素人。でも酉玉のオーナーの一人なのね。

「オーナーが焼いている」というのを聞いていましたが、ああ、それはこの人のことかと思ったわけ。

当然、大事な人がいなくなってオーナーたちが慌てるのはわかりますが、「じゃ、俺がやるわ」なんて簡単にできるわけがないじゃないですか。だから私は今の今まで酉玉には行く気がしなかったわけです。日本の酉玉は?と思いますが、マレーシアにある多くの店と同じ様に、日本のお店は「こちらのオーナーではないケース」の店ね。いわゆる、名前と技術を出して、売上の数%をもらう存在なわけで、日本の酉玉がこちらの酉玉の責任をもつわけじゃない。

そのオーナーの一人でもある(全部で4人のオーナーがいる)、焼き手の人は「Kokさん」というマレーシアンチャイニーズ。聞いてみると【飲食店の経営は初めて】で、自らも料理人としての経験はゼロ。前職はなんとエンジニアですと。

あじゃ~~、これじゃダメだと、誰しもが思うはず。

ところが美味しいんですよ。

当然、酉玉のやり方を踏襲しているわけですが、決して力ちゃんみたいな日本の職人が付きっきりで教えたわけでもない。

でも美味しい。

これは謎と言っても良いと思ったのですが、彼と話をすればするほど、この人はとんでもなく出来る人だと思った。ある意味、エンジニアとしてもちゃんと実績を作った人で、【基本を大事にする】のと同時に【改善、改良を常に論理的に考える人】だったのね。そして彼はエンジニアで「消費者の顔を見ることはなかった」という。でもこういう飲食店、しかも厨房は真ん中になって客と常に面している中で、【客の反応がすぐにわかった】というんですよ。で、それを見ながら改良もしたと。そしてそれを楽しんでいる様子。

これって日本人に言わせれば当たり前のことですが、「基本を大事にする」「常に改良改善を行う」「客の反応を常に見る」なんてのは、【それがあればマレーシアはもっと良くなる】し、これこそが多くのマレーシアの人達に足りない部分だと私は日頃思っているわけです。

ですから、そのKokさんの話を聞いて、とんでもなく驚いたし、実際に美味しいし、この人はとんでもなくマレーシアでは珍しい人じゃないかと思ったわけです。付き合う範囲が極端に狭い私が知っているマレーシア人に、こういうタイプの人はたとえ銀行でもいませんから。

ただし、そのKokさんという焼き手が焼いたものと、かつての焼き手の力ちゃんのとは違うものもいくつかありました。

当然、力ちゃんが焼いたもののほうが美味しかったと思うのが当たり前だと思うじゃないですか。

ところがですね、一番焼くのが難しい(と私が思う)レバーの焼き加減の絶妙さは力ちゃんより上手いかもしれないと思ったし、明らかに違うのが【鶏皮】で、うまい具合に水分を飛ばしてカリッと焼き上げていた。

うそだろ?って私自身が思ったほどなんですが、興味があるからいろいろ聞いてみると、彼は彼流の試行錯誤の末に、この方が良いと行き着いたというのね。ではどこがどう違うのかと粘着質の私は聞き続けたのですが、細かい説明はここでは省略しますが、【低温調理に目覚めた】感じですかね。試行錯誤の中で、低めの温度でじっくり焼くと良いのに気がついたと。(ただ、全般的に焼き目が少ない感じはある)

彼は常に試行錯誤をしているようで、自分で毎日同じ様に焼いていても「これはうまく行った!」と思う瞬間があるそうで、それを客が食べる様子はオープンキッチンだから見えるのね。だからそういう時のお客の反応を常に見てきたとのこと。

きっと彼のベロの性能がかなり良いのかもしれない。エンジニアをやっているころから食通だったんでしょう。

そういう意味では焼き鳥職人としてすでに極めている力ちゃんと、教えてくれるうるさい職人もいない中で自分でより良い高みを目指している今のKokさんとでは、Kokさんのほうが凄いかもしれないと思う部分があるんですよ。自分の腕、技術に自信を持つことは大事だけれど、「常にじっと客の反応を見ながら改善する」のと比べた場合、私はKokさんに一票を投じたいのね。私も若い頃から中小企業のオヤジをしてきましたが、私の師匠は「お客様」だったんですよ。だから今の酉玉の焼き手であるKokさんの考え方、やりかたが半端じゃなく理解できるし、将来性もあると思ったのね。

彼はきっと「日本の酉玉の支店」ではなくて、実際に支店では無いわけだけれど、【マレーシアの酉玉としての道を拓く人】だろうと思ったわけです。またいつか酉玉という名も捨てて、制約のないもっと良い店を作るかもしれない。

本当にびっくりしましたが、この3年間、酉玉には行っていないのも良かったかもしれない。

私も腹を割って彼と話をして、力ちゃんがいなくなってど素人がその後をすることに関して、常連客がどう思うかとか、どういう行動を取るのが普通なのかとかそんな話もしたんですよ。当然、彼もそんな事は聞かなくてもわかるわけで、彼は「常連は二度まではチャンスをくれる」という言い方をしていました。でも【三度目で結論を出す】と。当然、「私は素人ですから・・」なんて言い訳が通るわけもなく、彼は「客を逃さない方法を考え抜いて、頑張ってきた」のね。

そして力ちゃんがいなくなって離れた常連も、段々と戻ってきた。素人だったKokさんを誰しもが認めるようになった。

私たちはそうなってから酉玉に行ったわけで、ラッキーだったかもですね。もしもっと早くに行っていて「やっぱり力ちゃんに比べたら全然ダメで、お話しにならないわ」と思ったら、「二度と行くまい」と決めたかもしれない。

そんな話もKokさんとは出来て、私が「日本人は、この店はだめだと思った時は【何も言わず、もう行かないだけ】だ」と言ったら、彼は日本人のその特性を知らなかったようで、【中国人はその時その時、ヅケヅケ言います】と笑っていましたっけ。それでKokさんは育てられたのかもね。

彼はオーナーの一人なわけですが、「投資対象としてどんな感じですか?」と聞いたら親指を立てていました。実際に7時ぐらいになると続々とお客が入ってきて、多くはチャイニーズで「焼き鳥屋には合わない服装」、つまりちゃんとした格好の人たちが多く、見るからに金持ち~~みたいな。(笑)

客層としては、日本人は全体の3割ほどで、日本人の売上としてはミドルクラスかな?と言っていました。やっぱりマレーシアって金持ちはたくさんいますし、使う人はハンパじゃないから、その手の客を掴めば飲食業も安泰ですね。でも最近、おまかせ系の和食店や和牛を扱う高級店があちこちに続々と出店しているようで、皆さん、大丈夫なのかと思ったり。金持ちマレーシア人がスポンサーになって店を出してくれるのならまだしも、自己資本で勝負をしたらけっこう大変だろうと思ったり。

そうそう、もう一つ驚いたことがありました。

私たちは3年ぶりに酉玉に行ったのですが、スタッフの女性の一人が「私たちの名前」を覚えていたんです。3年ぶりですよ。ましてや当時は入り浸るほど酉玉に行っていたわけでもないのに。

でも私たちはいつも「開店と同時に入る」のがパターンだし(今回は5時半)、今回もそうで、「私達以外に客はいない」のが普通で、それでも必ず予約を入れますから、そのスタッフは私達の名前を覚えていたのかもしれない。マレーシア人の女性ですが、やっぱり名前を覚えていてくれるのは嬉しくて、ヨメさんが感激していました。(笑)

いつもお店に行くときには一番乗り。(笑)

ああ、それと「鶏スープ」を頼みました。普段は頼みませんが、これって和食店で言う「茶碗蒸し」と同じで、このスープでその店の多くがわかると思います。

美味しかったです。かつて力ちゃんがいた当時の鳥スープとどちらが美味しかったかは良く覚えていませんが、決して負けていないどころか、良くなっている可能性すらあると思いました。

味付けはいたってシンプルで、鶏ガラで取ったかな~~り濃い目のスープ。臭みは一切なくて、野菜は判別がつかないほどに煮込まれていますが、「ネギ、人参、大根」のみで、【野菜の味が主張していない】のね。

我が家でも結構、鶏スキを作りますが、博多の鶏スキと同じでまずはスープだけを楽しむ。それに野菜類を入れて食べ始めるわけですが、「キャベツを少量」入れただけで、味はガラッと変わるのね。でも「ネギと大根」は旨味が出るけれど主張はしない。人参も甘みを出してはいるけれど主張はしていない。我が家で作る時には「人参を入れたら味が変わってしまう」と思っていて、使うことはないのですが、今回、自然な甘みは人参のおかげだと気がついて、かなり勉強になりました。

そもそも自宅で作ると、「この色」を出すのも難しいぐらいで、「圧力鍋を使うとダメ」だし、白濁させるにはボコボコ煮込みますが、下手をすると色も悪い、雑味も酷いことになる。もし私が家でこれと同等のスープを作れたら「完璧」と思うし、自信過剰になって自慢しまくると思う。(笑)

このお店の裏方にかなりまともな料理人がいるのか、そんなことが気になりました。やっぱりプロって凄い。

【酉玉@パブリカ】は良いのかどうか。力ちゃんがいた頃の昔と比べてどうなのか。

私としては、【過去を引きずらない、新たな歴史を作り始めている】みたいな感じがして、好印象です。

今回は本当に食べるもの全てが美味しくて(過去においても当たり外れがあるのは普通だった)、好きな部位を何度もリピートしたり、サラダもご飯物も食べず、もちろんデザートも食べず【焼き鳥のみ】を延々と食べ続けました。ビールは3人で6杯。焼酎も我が家で一番評判が良い「神の河(かんのこ)」がありましたので、ボトルで注文。その量でちょうど良くて、足りなくもないし、余ることもなく、幸せなひとときを過ごせました。それでお会計は3人で1000リンギちょっと。これって我が家にしては高いのだけれど、大満足です。

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