ピチットシートの再利用に関して 備忘録

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ピチットシートが食品の脱水にかなり有効であるのが広く知られるようになり、それを利用した刺し身類の脱水、魚の干物を作るための脱水、冷凍食品の解凍、肉加工品の脱水・乾燥に使われている。

ただ問題点が一つ。それは価格の高さ。

再利用できれば問題は解決するが、販売元は再利用を推奨していない。また我々利用者も刺し身や生肉の脱水に使用したものを、また他の用途に使うには抵抗がある。それはまさにドリップや血、そして細菌が移って繁殖してしまうのではないか。あるいは匂いの問題があるように「想像」するから。利用後、ピチットシートを洗い、乾燥させて使っているユーザーも出てきているが一般的ではない。

しかし、ピチットシートの製造元の研究発表の資料によると、ピチットシートの再利用は可能であり、それを想定した実験も行われているのがわかった。

食品素材の新脱水法と調理 =ピチットシートの調理への応用=   ← クリック

再利用に関係ある部分を抜粋する。

合成有機高分子吸水剤の発達は近年になってめざましく農業用保水剤,衛生用品などを中心にその応用分野を広げている。食品関連に応用した例はあっても本格的に実用化したものはなかった。ピチットシートにおいては当社が独自に開発したポリアクリル酸系の高性能でかつ不純物及び溶解分の少ないものを使用している。一般的に高分子吸水剤は紫外線により分解したり,金属イオソ(Ca++,Mg++,Na+,K+)との共存で吸水能が低下したりするので,ピチットシートを直射日光に当てるのは好ましくない。当社の実験によれば,モデル液(KCIO.4%,CaC120.03%,MgClaO.05%)では繰返しによる使用能力は(0。95)?,但しn=使用回数,であり半透膜を通って食品中の成分がシート側に浸入してくる量は非常に少ないので繰り返し使用には十分耐えられることが基本的にも証明されている

セロファソシート(C)及びピチットシート本体の半透膜(A)は破れや傷などがない限りにおいては細菌などを通過させることはなく,万が一一にも一般雑菌が侵入したとしても本体の乾燥を確実に実施し低温(冷蔵庫で可)で保存しておけば繁殖の危険性はない。一例として当社では実際繰り返し使用したものについても内容物を検討した結果,一般生菌類の浸入は認められなかった。

ピチヅトシートは再使用に備えて,液汁などで汚れた場合には軽く水洗いして乾燥する,夏期には風通しの良い日陰で2~3時間,冬期や梅雨期には暖房した部屋に下げておきもとの重量を目安として乾燥する。乾燥が終ったらポリ袋に入れて冷蔵庫内に保管しておく。室温に長期放置しておけば薄い茶カッ色になるが実用上は差し支えない。

ピチットシートの作用は

○ 半透膜のシートを使い、水分(分子の小さいもの)だけを通す。塩や砂糖、あるいは細菌バクテリア等、分子量が大きい物は透過できない。
○ 水分を高分子吸水材海藻由来の成分によって、内部に貯める。

これだけのことなのは多くの利用者はわかっていて、再利用には問題がないであろうことは想像できても確信は持てないケースが多いのではなかろうか。しかし、製造元の研究発表において上記のことが公にされているのだから、我々利用者は何も心配せずに再利用しても良いはず。

ただし、再利用に関しては

○ 洗浄を行う
○ 日陰に干す
○ 保存は冷蔵庫

に留意する。

この製造元である昭和電工㈱の研究発表は非常に有り難いと思いました。ネットを見ると多くのピチットシートのユーザーがいるのがわかりますが、ほとんどの方が再利用できたらなぁ・・と思いつつ一度きりの使用で廃棄している様子が見えます。再利用しているユーザーはほんの一部。またピチットシートは高い(と言っても一枚100円以下)ので、ピチットシートを使えば良いのをわかりつつ、生肉を脱水するには何枚も使わなくてはならず、セロファンで「代用」する人も多い。

もしこの私のブログを検索で見つけた方は、安心して再利用しましょう。(笑)

蛇足ですが、今まで知り得たことを書いておきます。

○ セロファンならなんでも良いわけではない。
  オーストラリアという日本みたいになんでもある国ではない苦労があるのですが、文房具店で買ってきたセロファンは半透膜のセロファンではありませんでした。こういうこともあるんですね。調べてみるとセロファンにもいろいろあるようで、用途によって機能も様々。また分子の小さな水は通しても、分子の大きな砂糖や塩(あるいは細菌など)を通さないということですが、そのミクロの世界の「隙間」の大きさもいろいろあるようで、隙間が大きいセロファンは「旨味成分」であるアミノ酸を通してしまう。これでは意味が無いわけで、専用のセロファンを探す必要があるということ。また着色されたセロファンは着色料が脱水する対象に移ってしまうこともあり、食品用ではないセロファンを使う場合には注意が必要。上の研究論文にもありましたが、食品の包装材料規格にあったものを使うべきでしょう。

○ 脱水は浸透圧を利用するわけだけれど、それに使えるのは塩だけか。
  塩が一番効率が良いとのことですが、砂糖でもOK。ただ砂糖は塩の10分の1の力しか無いらしい。また大事なことは何を使うかではなくて、濃度が大事(モル濃度)。また塩と砂糖と両方使うケースも有る。例えばスモークサーモンの脱水には砂糖を多く使う。もし対象食品に糖分を浸透させたい場合、砂糖を先に使い、あとから塩を使う。逆だと砂糖は浸透しづらいとのこと。また穏やかな脱水には砂糖が適している。

○ 冷風で乾かすなら冷蔵庫を使えば良い。
  乾燥させるのには屋外に出さないとならないと考えているケースが多いようですが、冷蔵庫は湿度が低いので冷蔵庫に放置すれば乾燥はどんどん進む。この方法を取る人も多いのがネットの中を見ると多くいるのがわかりますが、実は冷蔵庫は雑菌の宝庫だとのこと。つまり、対象の食品をそのまま裸で放置、あるいはキッチンペーパーでくるんだままの放置は良くない。でもセロファンでぴっちり包めば水分は蒸発し雑菌は入り込めないのでOK。これは屋外で干すのも同じで、自然乾燥でもセロファンを使うことが大事だと思います。セロファンで包めばハエがたかっても心配ない。(笑)

○ 超高吸水性高分子ポリマーの利用
  最近は超高吸水性の高分子ポリマーそのものが非常に安く手に入ります。粉みたいな状態ですが、小さじ一杯分で300cc程度の水分は吸収してしまう。これはこれで非常に利用価値があって、水分が多く出るものには非常に便利。私は大量の塩にこれの高分子ポリマーを少量混ぜて、セロファンで包んだものに塗りたくります。水分でベチョベチョになることもなく良いと思っています。ただ、高分子ポリマーそのものの扱いは注意が必要で、吸い込んだり目に入ったりするとうまくない。また食べてしまったらどうなるのかという心配もあり、本当は脱水時、及び、塩漬け時に対象の食品に直接、高分子ポリマー(あるいは塩や砂糖と混ぜたもの)を使ってみたいのですが、まだそこまでの勇気はありません(笑)。でもそれが出来れば、形がいびつでセロファンやピチットシートで包めないようなものでも全く問題なく脱水、塩漬けが出来ますね。それこそ、鶏一匹まるごとでも乾燥・脱水OKってことですから、いつかその内、試してみようと思います。

○ ハムやパンチェッタなどを作る場合には、添加物を使うべき
  ここは異論が多く出てくる点だと思いますが、私が調べた限りでは「使うべき」だと思いました。このことに関しては別の日記に書きましたが、日本では趣味人がハムやベーコン、あるいは燻製を作るときに添加物を使用すると書いている人は皆無。しかし肉加工の本場である欧米のそれを見ると、使う人がほとんど。その添加物とは硝酸塩であり亜硝酸塩ですが、これは日本では多くの人が「綺麗な発色」の為に使われていると勘違いしている様子。元々は海に囲まれている日本と違って岩塩を使うことが多かったヨーロッパでは岩塩に硝酸塩が含まれており、その効果が発見されたらしいです。一番は殺菌作用。世界一怖いと言われるボツリヌス菌対策。そして発色が良いのも酸化を抑える作用があるとのことで、色が良くなるだけではなくて味も良くなるとのこと。つまり硝酸塩を添加物と考えるより、ハムやソーセージを作る時に必要不可欠なものであったと考えるべきで、化学薬品だ、添加物だと考えるべきではないと思っています。ソーセージの本場のドイツでは法律で硝酸塩の使用が義務付けられているそうですし、ボツリヌス菌のボツリヌスという言葉自体がラテン語でソーセージを意味するとのこと。かつては肉の加工はボツリヌス菌との戦いだったんでしょうね。では現在は大丈夫かというとそういうこともないわけで、きっちり衛生管理がなされている専門工場で素性がわかっている肉を使うプロならいざしらず、我々素人が肉屋に頼んで買うにしろ、安全だとは言えないと思います。また衛生面ではなくて硝酸塩を使う理由がちゃんとあって、使うべきだというプロもいる。無添加を唄う製品も、実は岩塩を使っていたり(硝酸塩が含まれているもの)、自然食品信仰は利用されているだけかもしれません。

  欧米では(オーストラリアでも)この硝酸塩、亜硝酸塩は普通に売られていて、肉の加工では素人でも当たり前に使っているのがわかります。Cure1とかCure2とか(製品名はいろいろ)1と2があって、1は亜硝酸塩のみ、2は効果が長く続く硝酸塩+亜硝酸塩が少量混ぜてある塩。塩が含まれているからそれだけつかうということではなくて、必要な硝酸塩、亜硝酸塩は微量で扱いが難しいので(亜硝酸塩そのものを小さじ一杯摂取すると大人も死ぬ)、塩に混ぜて使いやすくしてあるという理屈(普通の塩と間違えないようにピンクの色をつけてあったり)。その塩を、2キロの肉に対して小さじ1杯とか半分とかの使い方をする。これは何をどう作るのかで1を使うべきか2を使うべきか決定し(加熱せずに数ヶ月にわたって脱水するようなものは2を使う)、なおかつ使う分量は趣味人はかなり厳密に計算するようです。足りなければ殺菌効果はなく、多ければ害があるとされる(亜硝酸塩焼けもあるとのこと。肉が緑になる)わけで、アメリカのFDAはどの程度のPPM(食品中の濃度)にするべきかの指針も出しています。この点に関しては、日本国内の素人内で流れている「自宅でも簡単に作れます」的な情報を過信するべきではないと思います。

(追記)

この日記では、セロファンは塩を通さないと書いていますが、私が使っている燻製用セロファンは塩を通すのがわかりました。塩の浸透圧を使って鮭の水分を抜いてた時に、鮭に塩が移っているのが確認できました。ただ、全部のセロファンがそうなのかというと、セロファンのミクロの世界の穴というか隙間は製造時に決定するようで、大きな穴、小さな穴のセロファンが存在するのだろうと思います。

今後は脱水のためにセロファンを使う時には砂糖とあわせることにします。砂糖の分子は塩より大きいですから、セロファンを通ることが出来ないはず。

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