オーストラリアの日本男児

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最近、歳を取ったのか、また子供達が家を出てしまって寂しくなってきたからか、昔のことを良く思い出すようになってきた。そこで、思い出話を一つ。

もう10年以上前のことだけれど、長男が小学校3年の頃の話。兄弟共々ゴールドコーストの私立学校に通っていたのだけれど、その学校では音楽とスポーツとそれぞれ課外活動を取らなければならないのが決まりとなっていた。

長男が取ったのはオーケストラへの参加であり、パートはバイオリン。年に3回ぐらい必ず発表会があったのだけれど、その時のこと。学校のホールでオーケストラとしての演奏の他に、先生達のアンサンブル、そして子供一人一人が前に出て好きな曲を弾くというのがいつものパターンだった。

まぁ、こういうのは良くある話で、小さな子供達の演奏なんて聴けたもんじゃないけれど、父兄も教師も割れんばかりの拍手を送って、子供達をその気にさせる、一つの行事。

息子の番が来た。まだ小学校3年で、ホールの遠くから見ていると本当に小さく見える。バイオリンは3/4だけれど、それでもバイオリンがイヤに大きく見えたっけ。

何を弾いたのかはもう憶えていないが、ホール一杯の大喝采。これは誰の子供だとしてもそうするのが父兄としてのお約束なのだけれど、一曲弾き終わったのに長男は舞台から降りずに、横にいた先生と何か話している。そして先生がマイクを持って話し出した。

「この子が、出来たらもう一曲弾きたいというのですが、皆さん、よろしいでしょうか?」

ホールにいた観客は皆、承諾の拍手をしたけれど、私は一体どうして息子がそんなことを言い出したのか不思議でしょうがなかった。そして先生が続けてしゃべった。

「日本の国歌である君が代を弾くそうです。歌える方は一緒にお歌いください。」

君が代~~?なんだなんだ。うちの息子が君が代をバイオリンで弾く?まさか~~、大体君が代自体知らないだろうし、それを家で練習したのも聞いたことがなかった。

そして、彼は弾きだした。それは間違いなく君が代。

歌をどうぞと先生に言われたものの誰ももちろん歌わない。その場にいた日本人は多分我々夫婦だけだったと思うが、ホールはしーんとして君が代に聴き入っていた。

私も目を閉じて、息子の弾く君が代を聴いた。

じーんとしてきたっけ。オーストラリアへ来てからまだ4,5年の頃だろう。もうすでに慣れてるとは言いながらも、これまで日本人だの猿だの、ジャングルボーイだのとイジメられたことは何度もあった。泣きながら帰ってきたことも一度や二度じゃなかった。自分が日本人であることが恥ずかしいと言っていたこともあったっけ。戦争の話も学校で習ってきたらしく、日本人ってそんなに最低な民族なの?と聞かれて困ったこともあった。

細かい説明をしてもわかる年齢ではないけれど、私は出来る限り日本人であることの素晴らしさを息子に誇張も交えて伝えたっけ。日本語そのものも、使わないとすぐに忘れるのが普通で、学校では苦労するだろうとは思いながらも、家の中では絶対に英語は使わせずに、日本語中心の生活を保った。

しかし、どうして今、君が代なのかはまるでわからなかった。いつどこで学んだのかも私は知らない。多分バイオリンの先生が教えたのだろうとは思ったけれど、息子以外の外国人が自国の国歌を弾くこともなく、どの子供も一曲弾いてぺこりと頭を下げて壇上を降りるのに、なぜ息子だけが二曲、それも君が代を弾くのか私にはわからなかった。

でも、きっと彼の中に、大和魂が育っているのだろうと思った。そしてどうにかそれを皆に見せたかったのだろう。日頃受けているイジメに対する彼の抵抗だったのかもしれない。

「パパ。僕はここにいるよ。僕は日本人だよ。負けないよ。」

そんな声が聞こえてくるような気がした。そして涙が一筋私の頬を伝わるのを感じた。親の気まぐれでオーストラリアへ連れてこられて、イジメられながらも一生懸命生きている小さな息子がいじらしかった。

そして君が代は終わった。

スタンディングオベーションこそなかったけれど、拍手がホールで鳴りやまなかったのを憶えている。

(でもねぇ、世の中って美談じゃ終わらないんですね。長男の中学校の終業式のことですが、結構大きなイベントなんですよ。もちろん親たちも着飾って来るわけですが、その日の帰りに涙を流しながら「死にたい・・・・・」と言った長男。教会でのイベントの最中にも意地悪をされていたらしい。こんな言葉を聞いたのは後にも先にもこれ一度ですが、親としてどれほどびっくりするか想像できます?)

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