ある出会い

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こちらの小さなカウンター式の日本小料理屋でほとんど毎日飲むような生活をしていた頃ですが、ある晩そこに一人の20代の青年が客として来ました。何となく一緒に話をするようになったのですが、彼が突然、自分を雇ってくれと言うのです。

彼は旅行者です。初めてそこで会ったんですよ。ウソだろ?って思いましたが、まぁ、いろいろ彼の話を聞いていますと、行動力はありそうだし、やる気で目が輝いているんです。なんだか私自身の若い頃を思い出してしまいました。お金も何も無いけれど、やる気だけはあるというその青年に段々惹かれて行きました。私がそうであったように、誰かに引き揚げてもらわないと若者にチャンスはないし、またそうするのがそういう立場にある人間の仕事だとも考えていましたので、よーし、じゃぁうちにおいで、と初めて会った旅行者にその場でOKを出しちゃいました。

ただし、ビザが取れないとどうにもならないので、それが条件でしたが、オーストラリア人の友人のコンサルタントを通して申請したところ、すぐに4年の就労ビザがおりました。

ビザも無い旅行者で、実際に何が出来るかわからない、口だけの男かもしれないその20代の青年をスタッフに迎え入れましたが、私の見る目は間違っていませんでした。その頃、立ち上げようと思っていた日本からの中古車輸入ビジネスを彼に任せましたが、20代のその青年はブルドーザーみたいに仕事をしましたっけ。

やる気はあるし、また実際にやるし、彼はいつまでも人の下で働くタイプではないと読んでいましたが、ちょうど私が彼に投資した分がチャラになったころでしょうか。やっぱり彼も計算していたんでしょう。独立したいと言い出しました。私はそのうち言い出すだろうと思っていましたし、独立が彼のためになるとも思っていましたので、快諾しました。

彼が取った就労ビザですが、このビザもおかしなもんで、当然勤め先の変更は出来ないわけですね。その会社がスポンサーになるからビザがおりるわけです。ところがですね、その連れ合い、つまり奥さんなんですが、働いて良いことになっています。どんな仕事でもOKなんですよ。これって変ですよね。ビザを持っている本人には制約があるのに、奥さんには制約が無いんですから。

それを利用して、彼は奥さんの名前でビジネスを立ち上げて、彼自身は私の会社に籍を置いておきました。そして、頃合いを見計らって、奥さんの名前で自営のビザを申請するという形を取ったのです。そして私とは全く関係ない形で、彼は自分の足で歩き出しました。小料理屋で知り合ってから、2年ぐらいだったかなぁ。

彼とは20歳以上歳が違いますが、主従関係もなく、同等の立場で付き合いが続き、良く一緒に飲みに行ったものです。ある日、彼が私に感謝をしていると言いだし、照れくさい思いをしたことがあります。どうやって恩を返したらいいのか、なんて言い出すので、私は格好付けて言いました。

私が君にしたのと同じ事を誰かにしてやってくれ

彼はウンウンとうなずいていましたっけ。かつて昔、私が若い頃にその時と全く同じ状況で、私が言われた言葉をそのまま目の前の彼に言ったわけです。出会いとは面白いし、大事だと思いましたわ。損得勘定だけじゃなくて、助け合って生きていく、そして若い人が伸びていくのを見るのは本当に楽しいと思った。正直なところ、私が仕事で儲けたお金の価値より、彼が私を通して育って行った喜びの方が私には大きいです。生きていて良かった。私もこれでいっぱしの男になった。彼のおかげで私も育ったと思ったもんです。

その後数年間、持ち前のやる気と行動力で彼はそれなりにやっていましたが、やっぱりゴールドコーストでは難しかったのでしょう。ケアンズの方に本拠地を移していきました。そして結果的にはオーストラリアを去り日本に戻りましたが、最近、ある日本企業の支店をアメリカに作るのをまかされて単身アメリカに飛ぶという連絡がありました。彼らしいなぁ、と思ったもんです。まだ30代前半ですが、紆余曲折はあろうと、彼はいつか成功するだろうと信じています。頑張って欲しいなぁ~。

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