脱水シートに関して

NO IMAGE
古いエントリーが表示されているかもしれないので、是非、「投稿日」を確認してください

最近、このブログに脱水シート関連で飛んでくる方が増えていますので、それに関して書きます。

巷にはピチットシートなる面白い製品があって、これで食材をラップのように巻いておくと浸透圧の作用で食材の水分が吸収されますね。どういう構造になっているかというと、

○ セロファンの様な微細な穴の空いている半透膜シートを使い、水分の様な小さな分子だけ通す。
○ そのシートが二枚重ねになっていて真ん中に水飴を入れ、砂糖の浸透圧で食材の水分を吸う。
○ 水分はその水飴(と海藻由来の成分)が保持する。

これが何に良いかというと、

○ 肉でも魚でもニオイのもとになるドリップを除去できる。
○ 水分が抜けるので身がしっかりし、旨味が凝縮する

一般的には「塩をまぶす」ことによって同じことが出来る(塩の浸透圧を利用する。砂糖でも同じことが出来る)(刺し身の昆布締めも同じ)わけですが、塩をまぶせば塩辛くなる。ところがピチットシートを使えば食材そのものに塩分、糖分を移すこと無く水分を抜くことが出来る。

そしてこれは自然ににじみ出る水分を吸うのではなくて、浸透圧で強制的に水分を抜く(?)から

○ 早い
○ 多くの水分を抜ける

ということになり、干し物を作ることが可能になります。多くの人はそれで干し魚を作ったり、あるいはドライタイプのソーセージやハムを簡単に作れることになる。私もピチットシートを手に入れたのはそれが理由。

ピチットシート ← クリック

ただピチットシートは単価が高いので、おいそれと使えないんですね。ですから再利用を考えるわけですが、販売元は再利用はしないで欲しいと書いています。とは言うものの、再利用は十分可能であるという研究レポートも出しています。

それに関して書いた日記  ← クリック

そもそもピチットシートを使わずに同じことが出来ないのか考えるわけですが、その方法としては

○ ピチットシートのような半透膜シートであるセロファン等を使えば良い
○ シリカゲルを使えば良い

ということになるはず。ただセロファンは水分は通しますが、それで包むだけでは水分を吸い出すことがないので自然乾燥に任せるしか無い。ではどうするかというと、まさにピチットシートの様に、セロファンで包んだものを砂糖で覆えば良いということになります。

この時に、塩を使いますとセロファンは塩を通すのがわかりました。でも若干という感じで、塩を直接まぶしたほどのことは無いにしても、食材はしょっぱくなるのを確認しています。また温度が高いと水や塩のイオンが活発に動くこと、またセロファンの微細な穴が大きくなるらしく、塩分は簡単に通してしまうそうです。ですから、浸透圧を使って水分を強制的に抜くのであれば、砂糖がベストかもしれませんね。ただ、砂糖の分子は塩に比べてかなり大きいので、その分、多くの量を使わないと浸透圧に必要な「濃度」を作れない。また塩は不思議な物体だそうで、1分子で2分子の働きをするとのこと。ですから砂糖を使う場合にはそれなりの量が必要でしょう。

セロファンで巻いたものを砂糖で覆い、それをラップでさらに巻けば、ピチットシートと全く同じことが出来ますし、水分が抜けだすと砂糖が水分でびちゃびちゃになりますので、その砂糖だけ取り替えれば良く、セロファンを巻き直す必要はないわけです。

ただセロファンにも色々種類があり、全てが半透膜ではなく、水分を通さないセロファンもありますし、また染色されたものは色落ちしてそれが食材に付きますので、食品の包装用セロファンを使うことが必要でしょう。私はアマゾンで「燻製用セロファン」なるものを入手しました。また、オーストラリアの雑貨店で買ったものは水分を通さないセロファンでした。その辺を売り場の人に聞いても「?????」ですので自己責任において探すしかないと思います。

ですからセロファンと砂糖を使えばかなりのことができるわけですが、問題はセロファンはシート状だということ。つまり食材を完璧に包むことが出来ないんですね。グルグル巻いた状態ですと、水分を吸った砂糖が隙間から入り込んでしまいます。一番良いのはセロファンで「真空パック」できれば何の問題もないのですが、セロファンそのものはプラスチックではなくて自然の植物繊維から出来ているものですから、熱で圧着することができません。せめてセロファンの袋があれば良いのですが・・・・。

ここで考えられることは、まだ実験していませんが、ピチットシートの再利用という点で、ピチットシートをバラして二枚のシートにし中の水飴は捨て、これを熱で圧着して袋にしてしまうのが良いと思っています。これは家庭用の真空パック機で簡単にできるはず。

その袋に食材を入れ、それを砂糖で包み、そしてラップで包めば完璧じゃないでしょうか。また吸う水分量は砂糖の量(濃度)に関係していますから、ピチットシート以上の仕事をさせることも可能でしょう。

またセロファンで食材を包み、それをシリカゲルの中に入れるという方法もかなり有効だと思います。私はこの方法でボラのカラスミを作りました。ただシリカゲルはそこに存在する水分を吸うだけで浸透圧を利用して強制的に水分を抜くことは出来ませんが、かなり強力で、魚の一夜干しは数時間で出来てしまいます。(シリカゲルは無害で電子レンジやフライパンで水分を飛ばせば再利用が可能

ただし、強力であることが良いことではないのもわかってきました。つまり表面に近い部分だけ水分が抜けてしまって、全体的に乾かすには時間が掛かるということ。また浸透圧で強制的に水分を抜くわけではありませんから、表面が十分乾いてしまうとそれから先はシリカゲルには何も出来ないってことなんですね。ですから、水分を抜く初期は抜群ですが、かなり抜けてからは水分の染み出しを待つしか無く、時間が掛かるということ。

いろいろ実験したり、雑学を学んでいる内に気がついたことですが、水分を抜くとなるとそればかりが気になってしまい、早く抜ければ嬉しい訳ですが、本来それでは駄目なんじゃないかということ。なぜ水分を抜くかという原点に帰ってみると、それは保存性を高めて「熟成させる」ことにあるわけですよね。ですからもしピチットシートなりシリカゲルなり使って、本来1ヶ月干すべきものを1週間で出来たからといって、そこには何の意味もないんですね。本来は1ヶ月間熟成させることが目的で、その為には食材に含まれる「自由水」(ここで雑菌が繁殖する)を抜く必要があるはずで、早く水分を抜いたからといってそれで熟成が進むわけじゃない。ここは非常に大事な点だと思います。

たとえば最近流行りだした牛肉のドライエージングですが、これもそれなりの「期間」寝かすのが大事であって、水分を抜けば良いわけじゃない。これはサラミなどのドライソーセージや生ハムも同じで、乾燥度合いは丁度良くても「熟成されていない」ことになってしまう。実は最近あちこちでパンチェッタを買って食べてみてわかることはやっぱり味にかなりの違いがあるってこと。つまり、商売優先で考えた場合、乾燥を早くさせて「熟成したパンチェッタに見せる」物も多いんじゃないかと思うんです。乾燥が半分の時間で済むだけでかなりのコストダウンになるはずですから。あるいは生産量を2倍に出来る。つまり、我々が乾燥を急ぐということはその手の「見た目重視」の食品を作っていることになりかねないんですね。

その辺を調べていくと、牛肉のドライエージングにしてもサラミにしても、カラカラに乾燥したところで乾かすのではないことがわかってきます。つまり、「適度な乾燥」が大事で、乾燥させすぎないことも大事なんでしょう。

そこで考えることは、普通に風乾するのとピチットシートなどを使って強制的に抜くことの違いであって、もしかしたら冷蔵庫の中で放置して乾かすのが風乾に近いのではないかということ。ただし、冷蔵庫は雑菌が非常に多いということ、そして冷蔵庫特有の匂いがあることから、キッチンペーパーで包んで放置、あるいは「そのまま放置」するのは非常に宜しくないのがわかります。

ではどうするか。もしかすると強制的に水分を抜くことが無い、しかし雑菌などの大きな分子を通すことがないセロファンで食材を包み、それを冷蔵庫に放置するのが従来の製法に一番近いような気がしてきます。

あるいは、ピチットシートの再利用で、ピチットシートを分解し、中の水飴は捨て、シートだけで食材を包んで冷蔵庫で放置するか。

ですから、初期の水分抜きはピチットシートでもシリカゲルでも強力ですからそれで適当に抜き、後は時間を掛けてじっくり抜くのが良いと思っています。つまり、ピチットシートはシートだけ分解して再利用すれば良いし、セロファンでも問題がないということになるはず。

私が今一番欲しいと思うものは、ピチットシートで使われているシートのみです。これはいろいろ調べましたが、バルクで売っているのを見つけることは出来ませんでした。もしこれが大量にそして安価に手に入れば私はピチットシートは不要だと思います。砂糖で包めば良いんですから。またそのシートで食材を「真空パック器」でシールドできたら完璧でしょう。

ここで面白い製品を紹介します。

アメリカの企業ですが、家庭で肉のドライエージングやパンチェッタ、サラミ、プロシュートなどのドライ物を作る「袋」を売っています。

Umai dry ← クリック

これはまさにピチットシートで使われている様な半透膜シートで作った袋。それだけです。これに食材を入れて真空パックし、そして冷蔵庫に放置するというだけのもの。塩や砂糖を使った浸透圧を利用することはありません。ですから乾燥という点ではスピードが遅いでしょうが、目的は「熟成」ですから全く問題が無いんじゃないでしょうか。

ドライエージングビーフの作り方。

生ハムの作り方。

この会社のサイト、あるいはユーチューブにこのUmaiという会社の袋を使った例がたくさん出ているので是非見てみてください。

またオーストラリアの企業がこの会社の代理店をやっていたのですが、大元の製造会社(デンマークのTUB-EXという会社)と直接取引を始め、オーストラリアで「Banquet Bag」という名で売り出しています。

MISTY GULLY ← クリック

ただやっぱり価格がそれなりなんですね。高いと思います。ただ、欧米人の様な大型のものは我々日本人が作ることはありませんし、小さな袋で十分だし、その価格はまぁまぁかと思ったり。(セロファンできっちり密着して食材を包めるのなら、こういう袋も必要がないってことになります)

この動画では、真空パックする時に袋に長方形の「何か」を挟んでいますが、これは袋自体はツルツルでそのままではバキュームが効かず、空気の通り道を作るために凸凹したプラスッチク素材を挟んでいるのです。また生ハムでは塩や調味料の説明のところに「Instacure2」というのがあります。これはピンクソルトと一般的に呼ばれる「亜硝酸塩、硝酸塩」を含んだCure2とも呼ばれる物。Cure1は亜硝酸塩だけで長期間熟成させないものに使います。これを染色の為と見るのは間違いで、ドライハムの風味を出す為と何よりも怖いボツリヌス菌に依る事故を防ぐため。

できることならこのシートだけバルクで欲しいと思います。22-25センチ幅のロールとか。それで好きな大きさに切って袋を作り、真空パックすれば良いわけですから。もちろんそれに砂糖をまぶして大きな袋にでも入れればピチットシート以上の事ができるってこと。

この手のシート(半透膜性ポリビニルアルコールフイルム)に関して情報をお持ちの方は是非教えてください。日本にはメーカーが数社あるようですが、一般に小売されていないようです。

ちなみにピチットシートの製造販売をしているオカモト㈱という会社の前身はあのコンドームで有名なオカモト理研ゴム㈱です。(笑)

「にほんブログ村」のランキングに参加しております。是非、応援のクリックをお願いします。

にほんブログ村 海外生活ブログ マレーシア情報へにほんブログ村 海外生活ブログへにほんブログ村 海外生活ブログ ゴールドコースト情報へ